昨年、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSを結成。今年の年始からツアーを始め、会場限定でファーストアルバム『METEO』を販売。新しい音楽の冒険を始めた浅井健一さん。3月にあらためて『METEO』が一般発売されることが決定したと聞き、話を聞いてみたいと思った。取材場所は、ツアーファイナルの会場である恵比寿のリキッドルーム。ライヴ直前といえば、少し緊張した雰囲気を想像していたけど、「なにから話そうかな。面白いこと言わないとね」と、こちらの緊張の糸を解いてくれつつ、我々を楽屋へ迎え入れてくれる浅井さん。まずは、伝説のBLANKEY JET CITYからSHERBETS、これまでのバンド活動について、丁寧に言葉を選びながら振り返ってくれた。
「26歳くらいでデビューして、今52歳だから、もう26年やっているのか。最初のバンドは、激しい世界観の音楽をやっていたんだけど。36歳くらいの時に解散して、それから深い感じの音楽。激しさだけではなく、もうちょっと違う、壮大な音楽をやろうと思ったんだ。それで今も続いているSHERBETS、AJICOやJUDEとかいろいろなバンドを組んだんだよね。中には短命なものもあったけどさ」
SHERBETSの叙情性、AJICOの穏やかさ。確かに、どのバンドも音楽の個性は異なる。しかし、新しく結成した THE INTERCHANGE KILLSは〝ザ・ロックンロール・バンド〟と呼んでも差し支えない、荒々しくてタフなサウンドになっている。バンド結成のいきさつについて聞いた。
「昨年、SHERBETSのアルバム(『CRASHED SEDAN DRIVE』)を出した後に、浅井健一名義のソロアルバムを出そうと思っていたんだ。メンバーを探している時、ドラムの(小林)瞳ちゃんと出会って。試しにスタジオへ入り、セッションしてみたんだけど、驚きのグルーヴがあってね。これまでいろいろなドラマーとやらせてもらってきたけど、なんか初めての感覚。その後、ベースの(中尾)憲太郎に会ったら、これが凄く激しい世界観があって。これは3人でやったら〝スゴい〟と思って、バンドにしたんだよね」
確かに『METEO』は、痛快極まりないロックンロールアルバムになっている。その音楽は、3人で演奏する中から生まれてきたものだという。どうやって作っていったのだろうか。
「この2人となら、これまで自分がやろうとして、なかなかできなかった方向性の音楽がやれる気がしてさ。実はずっと眠らせておいた速くてヤングな曲があって。きっと3人でやったらカッコいいと思って、曲を蘇らせたんだ」
ドラマーの小林瞳は、これまでカナダやアメリカで活動。ベーシストの中尾憲太郎は、NUMBER GIRL解散後、自身のバンドCrypt Cityを中心に、さまざまなバンドにサポートメンバーとして参加している。さまざまな活動をしてきた2人だが、そこまで浅井さんを奮い立たせる魅力は、どんなところなんだろうか。
「どんな仕事でも同じだと思うけど、ミュージシャンにも、みんな得意なところ、不得意なところがある。まず、瞳ちゃんは8ビートがもの凄いんだわ。基本的にリズムの取り方がカッコいい。もうそれだけで十分最高。逆に、瞳ちゃんには作り込むような、壮大でゆったりとした曲は似合わないかもしれない。それから憲太郎は、とにかく激しい。瞳ちゃんのドラムと相性がいいんだよね。2人のリズムを例えるなら、そうだな、波だね。かっこいい波を作ってくれるから、サーフィンをしているみたいに、気持ちよく乗れる。まずは、昨年3月から1カ月間集中して曲を作って。それを3人でスタジオに入りながらアレンジして、アッという間にできたんだよね」
とにかく今は3人でのライヴが楽しいという浅井さん。確かに、少し覗くことができたリハーサルから、すでに本気モードだった。そんな勢いのまま、6月にはすでに次のツアーが決まっている。そんなスケジュールから、今の高いテンションが直接伝わってくる。
「いろいろなシチュエーションでライヴができると思う。うーん…まずはフジロックに出たいかな。今のところ予定はないけど。だから頑張っていいライヴをやれば、つながっていくと思うんで一生懸命やるだけだよ。今の勢いを作品に残したいから、次のツアーへ出掛ける前に、なんとかシングルを作りたいと思ってるんだ」
ツアーに続いて、早くもレコーディングとは。今はとにかく創造する欲求が止まらないようだ。2人のメンバーから刺激を受けたというが、ほかの音楽から影響を受けることはないんだろうか。
「あんまり音楽は聴かないんだよね。昔ならラジオから流れてくる音楽とかあったけど。たまにYou Tubeとか見るけど、ブリトニー(・スピアーズ)は好きかな」
意外な答えだったが、浅井さんにとって〝自分らしくある人〟が輝いてみえるのかもしれない。それはファッションに関しても同じ。革のジャンパーとパンツ、そしてノースリーブのランニングというスタイルがとても印象に残っているが、浅井さん自身はどんな服が好きなんだろう。
「好きなのは自分に似合っている服。流行りは関係ない。着てみてかっこいいかどうかだけ。気に入ったら、同じものばかり着る。そんな性格だから、あんまり気にしないけど、ファッションは重要だと思う。意外と内面が見えたりするからね」
細身のシルエットは、全然変わらない浅井さんだけど、少しだけ日焼けしてるのは、数年前に始めたサーフィンの影響だろうか。
「冬の間は行ってないけど、春になったらまた始めるよ。44歳の時、8年前に始めたんだけど、いつまでもやりたいと思うぐらい好きだな。サーフィンと出会えてよかったよ」