25 Jan 2017
2017年はどんな年?「ジョニーとポロンと、担当編集Sのゆく星くる星」 – 東京の空の下、星占い談義は流れる

西洋占星術師ジョニー楓さんとスタイリスト飯嶋久美子さんが、深夜に星占い談義。
世相やファッションに始まり、話題はいつしか「これからの幸せの形」へと…。
世の中どうなっちゃうの? 多くの人がそう感じた、トランプショックへの興奮冷めやらぬ11月。思わずこう切り出した―。
編集S(以下S) 来年はどんな1年になっちゃうの?
ジョニーさん(以下J) いきなりっすねえ。もちろんいいことも悪いことも両方あるけど、みんながいい状態に近づけるように、いま原稿を書いてます。
S ジョニーさんの原稿は一見強面(こわ もて)だけど、愛にあふれてる。
飯嶋さん(以下I) そこがファンなの。占いってどちらかというと悪いときに観てもらうことが多いけど、今の星の動きがこうだから、時代とか空気がこうだからだって、自分だけが原因じゃないって大きな心で教えてくださるのが本当に素晴らしい。
J ありがとうございます。
*ジョニー占いはなぜ当たる?*
S おふたりの仲良し歴は?
I 足かけ2年。すっごい当たるの。どうして私のことわかるの?って聞くと、いやいやいやって謙遜なさるけど。
S ほほう。たとえば?
I 今年の自分の誕生日(8月)にね、「ジョニーさんのおかげで楽しく誕生日迎えられてます」ってなんの気なしにメールしたら、さっと占って返事をくれたの。最後に「足腰に注意。履きやすい靴を履いてね」って。私、マッサージに行くと必ずコンクリートみたいに硬い体だって言われて。ちょうどテバのサンダルを買ったばかりで。
S おしゃれ健康サンダルだ。
I そう。こんな些細なことも当たるから信じざるをえない。
S 足腰の忠告って、閃きみたいなものが降りてくる?
J いや、ソーラーリターンなんですよ。
I&S ???
J 占星術のひとつの技法なんです。ホロスコープ(*1)って30度区切りで12個の星座があるんですが、ソーラーリターンっていうのは、たとえば飯嶋さんの出生時の太陽が何度かを調べて、その度数に再び太陽が帰ってくるのはいつか? その帰ってきた瞬間の太陽以外の惑星はどんな星の配置だったか。毎年必ず太陽はサイクル通りの動きをするので、同じ場所に帰ってきます。でも他の惑星は公転周期がバラバラなので、去年の誕生日と今年の誕生日では太陽だけが同じ位置にいるだけで全然違う星の配置になります。そこで今年の誕生日の星の配置から今年一年どんな年になるのかを予測するのがソーラーリターンという技。そしてそのソーラーリターンで飯嶋さんの今年の運勢を見た結果、健康面が目につきアドバイスに至った次第です。
S 同じ星座の人でも全然運勢が違って見えてくる、と。
I だから的中率が高いんだ。
S ジョニーさんは自分のことは占ってみたりするの?
J まったくしないです。
I&S なんで!?
J 頭ではわかっていても、実行に移せないことっていっぱいあるじゃないですか。今は我慢のときですよって言われても待てなかったり。自分もそうなの。自分の占いごときじゃあ、自分は止められない(笑)。
I かぁっこいい。
J たとえば水星が逆行(*2)という太陽系のイベントがあるのですが、いつもと違う考え方になったり、あるいは正常な判断をしにくくなったりするといわれている期間なんです。その期間は、大きな買い物とかは避けるべきって自分で予測しといて、素敵な洋服を見つけちゃったりすると、わかっていても買っちゃうんですよ。
S 買っちゃうんだ。
*1 ホロスコープ 西洋占星術において、その人が生まれた瞬間の天体の配置を記した図。360度の円の中に惑星を書き示す。
*2 水星が逆行 主にコミュニケーションに障害が生じるといわれる。次回は12/19〜2017年1/8、4/10〜5/4。お気をつけて。
*占い師になった意外なきっかけ*
J 服と占いしかないです、自分には。
I きゃはっ! ジョニーさんのクローゼット見てみたい!
J 自分は年とっても毎日おしゃれしていたいと思って。どんな職業だったらそれが許されるかなって考えて占い師を選んだ。
I 初耳〜。
S それはいくつのとき?
J 29歳。あとね、占い師になろうと思ったときに、巷で当たると評判の占い師40人くらいに観てもらったの。
I 40人!
J みんな「君は水商売向きだよ」って。
S それ、見た目で言ってる。
J 結局は新しいタイプの占い師だったわけで、当時の占い師の概念が古かったんだろうね。自分は当時からファッショナブルだったから(笑)。そして、お洒落っていうところで話変わりますが、こうして占いやってるうちに、流行の様子って洋服の作り方にすごく出ているなーってつくづく思ったんです。それがまた占い的な閃きになったり。
*おしゃれが未来を教えてくれる*
J 最新の洋服を着ることで時代が読める気がすることがある。
I うんうん。
J 「ジョニー先生くらいになるとラフ(*3)着ないとだめでしょ」ってスタッフに言われて一気に買ったりすると、わかってくるんです。デザイナーがなんでこの服作ったんだろう、って考えると未来が見えるというか。パワースポットに行くより、おしゃれにお金使ったほうが勘が冴えるし未来がわかってくる。
I 時代とリンクしてるからね。
J 占いよりおしゃれのほうが全然重いの。重いし、深い。
I 私もそう思う。
J しかも、デザイナーは天然の先読み。
I ブームが繰り返したりするところも、似てるかも。
J その時代の文明の開化っぷりが表れていたり、この時代とこの時代が混ざって……というポイントがファッションにはいっぱいある。だから今の世情を知りたかったら、最新の洋服を着るにかぎる、っちゅー話です。
S ファッション業界に光明。
I (2017年を起算に)天秤座に木星が入った12年前(05年)と24年前(93年)の流行をちょっと調べたの。
S 93年の『あすなろ白書』(*4)は今回打ち合わせで盛り上がったキーワード。懐かしい。
I あのドラマの何がいいって、それまでのスタンダードな男女の恋愛劇から脱して、自由で、吹っ切れていたんだよね。
J 93年はじつはちょっと暗い年でもあって。
I ファッションだとグランジとかチェックのスカート。あと、ケイト・モス。ネルシャツ。
J 05年だと〝ちょいワル〟。
I あと、高級デニムね。
*3 ラフ ラフ・シモンズ。ベルギー出身のデザイナーが自身の名前を冠して95年に発表。
*4『あすなろ白書』 93年にフジテレビの月曜9時に放送された大ヒットドラマ。大学生から社会人へと成長するなかで愛と希望を見つける男女の姿を描いた青春群像劇。原作は柴門ふみ、脚本は北川悦吏子。
*木星を諌(いさ)める、冥王星の不気味*
J (分厚い本を取り出す)
S それは?
J 天文暦っていって。
S 惑星の時刻表みたいな?
J そう。93年とか05年って、ちょうど木星が天秤座にいた時期だったりする。ひとつの惑星がどうこうっていうより、アスペクト(*5)のほうが占星術では重要だったりするんで。
S それで調べるわけだ。たとえば木星が天秤座に入る1年間は、12年ごとに同じことを繰り返すという単純な話ではなくて。
J 占星術では、木星は「みんながそれを幸せだと思う何か」を象徴していたりする。その一方で木星よりも力が大きいたとえば冥王星なんかが悪く絡むと、木星で広げたことが逆の効果になってしまう。目の前の幸せに簡単に飛びついちゃうと、冥王星があとから全部ひっくり返してくる可能性がある。
S 油断ならない、冥王星。
J たとえば木星の恩恵を受けて売り上げが良かったから、調子に乗って何店舗もオープンさせたとします。その後ブームが下火になり売り上げが落ち込めば、経費や人件費がかさんで拡大したぶん自分の首を絞めてしまうみたいな。冥王星によってひっくり返される。というかこの話、難しくない?大丈夫?
S 大事な話っぽいので続けてください。
J 歴史をさかのぼると、男女雇用機会均等法が制定された85年って、木星と冥王星が悪い角度のときだったのね。当時は何か素晴らしいことが始まるようなムードに包まれていたけれど、それが女性の家庭離れ、社会進出、ひいては少子化にまでつながっているわけで功罪がある。大きな意味で、冥王星が〝返してきた〟っていうか。
I&S ガッテンガッテン!
S 当時はみんなそれが最善だと思って乗ったわけだ。
*5 アスペクト 惑星と惑星の角度。
*海王星の不穏な動き*
S 過去の出来事と惑星の動きの関係っていうのは、検証してデータがあったりするの?
J まだまだ。自分が趣味でやってるだけ。
S 過去がわかれば未来も予測できるのかなぁと思って。
J 自分より宇宙のほうが二枚も三枚も上手なんで、予測しきれないことが多い。今の動きでいうと、理性を司る土星が、物事をぼんやりさせる海王星とずっと悪い角度をとってて。
S え、今まさに?
J ここ1、2年くらいずっと悪い。たとえば「ここまでやる。規則正しく頑張る」っていう担当が土星。何日までに原稿書きます、何日までに支払います、恋人だったら毎日ちゃんとおはようを言う、とか。そういうのが海王星の影響で段々ぼんやりとして、できなくなってるの。
S 困りますね。
J 何かを守れなくなった奴らが、守れなくなった仲間とともに、ヤンキーみたいな形で現れたりするのがこういうタイミングだったりする。当時の言葉で落ちこぼれ、とか。
I なるほど。
J ただ今回は今までのヤンキーとはちょっと違って、何か予想できないような出方で出現してきているような気はするよね。
S 有名大学の不祥事とか?
J ひとつの危険な軍団として現れるというより、それぞれの心がすさんだ方向に向かっているというか。特に若者が。物事って、ちゃんとできなくなったら元に戻すのは凄く大変だから。
S でも、世の中が悪くなる一方だなんて思いたくない。
J そういう時代でも何か新しいものを見つけなきゃね。同じことばっかりやってないで……。
I マンネリ?
J そう。マンネリを繰り返していても幸せになれない、だったらそろそろテメエで新しいこと考えたらどうだ!って感じに世の中が変わってくるのが、17年の6月くらい。
*決断は春分の日まで待って*
J 春分あたりから流れが変わってくる。春分って占星術版の正月みたいなもので、新しく太陽が生まれ変わる感じがある。もし迷っていることがあったら春分の日を境に決めてみたら?
I それはいいアドバイス。
J 春分の日に自分のなかにあがってきている考えこそが、答えだってこと。恋愛で「やっぱりこの人違うな」と思ったらそれが答えだし。
I そして4、5、6月に向けて世の中の女の子たちにハッピーな風が吹いてくる。
J 本当の意味で〝向き合えた〟って感じかな。たとえば恋愛だったら、途中でぎくしゃくしたけどあらためて〝君〟の大切さに気がついたというか。
S 君の大切さに気がついた、ってシナリオは女子の王道。
J 男ってボヤボヤしてると本当に使えないからサ。
*木星はなぜ特別なの?*
S そういえば、木星を中心に語っているけど、やっぱり占星術の世界では木星は主役なの?
J 木星はあくまで表面的な流行りを示すだけで、もっと遠い惑星がいろいろ絡んでくるとまた全然違うものになってしまう。ただね、新しい人にアプローチするとか、自分の輪を広げるには、天秤座が木星に入った時期には適しているかもしれない。一概には言えませんが対人関係に可能性が含まれているのは確かだから。
I 今回の特集はパートナーとの間での逆転劇を描いてるんだよね。進んだ男女の関係というか。
J パートナー運っていうことに関しては、木星天秤座というのは改善しようと思えばいくらでも改善できる機会をくれる星回りなんだと思いますよ。
*2016年はフォーマットの年*
S 私乙女座なんだけど、木星が乙女座に滞在(*6)してた1年は、幸運祭りは別になかった。
J 誤解されがちだけど、木星が来たからって単純に幸せになるわけじゃない、まして待っていればいいことが起こるわけではないですよ。木星乙女座の時期は、自分自身が将来うまくやっていくためのフォーマットを敷くのに適した時期だったんだと思う。将来を見越した個人的計画性というか。Sさんは多分その辺とても恵まれた1年だったはずだよ。
S 確かにそうかも。
J 世の中的にも、みんなが多少保守的に「きちんとやらなきゃ」っていう気合があった。
I 日本中がやらねばムード。夏は仕事が本当に忙しくて、私まさにそんな感じだった。
S ニッポン、マジメ。
J 乙女座から天秤座に移って、9月くらいからみんなちょっと乱れてる。イケイケになってるっていうか。
I 気が早いけど、17年下半期に木星が次の蠍座に移ると、どんな時代になるのかな。
J パートナーと築き上げたバランスのとれた関係が、深まるというか。〝ひとつになる〟みたいな感じ。
I いいキーワード。
S 編集長に提案しなきゃ。
J 私が私ではいられなくなる、っていうか。顔が変わった、愛している人に顔が似てきた、っていう変容と無関係ではいられなくなる。次の物語の流れが始まってきますよ。
S 男子と形勢逆転した女子がどうなるか……わくわくします。
*6 木星が乙女座に滞在 2015年8月11日から2016年9月8日。
*おいしい人生は降ってこない*
I 編集長がコーデチェック(*7)のときに言ったの、撮影のときは絶対女の子が引き立つようにしてね。ギンザは女の子が主役の雑誌だからって。私、感動しちゃった。
S 女の子たちにとってのおいしい人生って、なんだろう?
J 新しいものを見つけた人、自分に合った生き方を見つけることが、おいしい。
I なるほど。
S 「おいしい人生」自体が転がっているわけではなく。
I 自分のことを好きでいられることが幸せなのかなって。そうしたら、なんでも向き合える。人のことも大切にできる。
J 自分が自分で一番好きなことをやれる。やれてる。それが一番幸せ。
I 指輪のシーンのように、人のことをうらやましがらないっていうのも大事。自分は自分だもの。
S そのために星占いができることってなんだろう?
J 自分が自分らしくいられて、私も何かできるかも、って思わせる占いをしたいと思ってます。君のオリジナルってこれだよって言ってあげたい。クライアントがアガる瞬間ていうか、やる気出す瞬間を見るの、自分超感動するんですよ。
I そう、そこがジョニーさんの占いの醍醐味。
S 凹ませることは言わない?
J あ、でも、そういうこともしますよ自分。一瞬気を紛らわせるだけの痛み止めみたいなことは言わないので。
I おおお。
J たとえば「彼は私と彼女とどっちが好きですか?」って相談されて、はっきり言って彼女のことのほうがいまは好きだよ、って。そこは絶対言っておかないと。でも、それを受け入れた上でどうするかだよって話で。
*7 コーデチェック スタイリストが集めた衣装を実際に見ながら、編集長の立ち会いのもと、ページの方向性にふさわしいか最終確認をすること。
*歴代担当が証明する〝御利益〟*
I 恋愛って、好きな人が自分のことを好きじゃなかったら、自分の存在意義までなくなってしまったかのように落ち込みますよね。でもそうじゃなくて、いろんな要因があって、時世だったり月の位置だったり。それを踏まえて心の持ち方を教えてくださるのがジョニーさん。
J 巷で言われている恋愛の成功形が「両思い」ってだけで、人によっては、片思いやプラトニックが幸せだったりね。
S 連載開始当時は仕事が恋人だった初代ジョニ担は2児の母に。2代目Tは寿退社のち海外移住。ジョニーさんといると面白い人生になる。3代目Iの身辺もこれからどうなるか。
I 編集部が身をもってジョニーさんの御利益を証明している。ねえ、それってすごくない?
S ということですな。
上:ジョニー(やぎ座)
小誌の連載「愛となぐさめの星占い」でおなじみ。飯嶋さんとはプライベートでも仲良し。
左:ポロン(しし座)
スタイリスト、コスチュームデザイナー飯嶋久美子さん。あだ名“PORM”は師匠が命名。
右:編集S(おとめ座)
ジョニー楓さんの鑑定にひと聞き惚れしギンザにスカウトした初代“ジョニ担”編集。
Illustration: the blake wright
Text & Direction: Johnny Kaede
GINZA2017年1月号掲載