一般に、春は始まりの季節です。
でも、これからのことよりも、これまでのことを考えやすい気がします。
散り行く桜、忘れ物みたいに咲く八重桜、足元に映えるタンポポやクローバー、優しい風、物陰に入った途端感じる冷ややかさ、いつのまにか伸びた黄昏時の影の感じに、記憶の扉が開くのです。
かつてあった時間、一緒に過ごした人、懐かしい思い出、叶わなかった夢、叶えなかった思い、ふと時空が歪み、過去と現在が混じり合います。
あの時、ああすればよかった、そんな後悔はきっと、誰にでもあるのでしょう。
人生のしくじり、選択ミス、運命の分かれ道みたいなもの。
でも、この前、気づいてしまったのです。
言い換えれば、苦い思い出以外は、それなりにやってきたのではないかと。
夜中に思い出して、うわーってなるような恥の記憶も、身もだえするような黒歴史も、意外に人生のアクセントみたいなものかもしれないと。
だって、それ以外は、思い出さないでしょう?