30 Mar 2021
しし座さんへ。4月のお手紙

ノスタルジー
一般に、春は始まりの季節です。
でも、これからのことよりも、これまでのことを考えやすい気がします。
散り行く桜、忘れ物みたいに咲く八重桜、足元に映えるタンポポやクローバー、優しい風、物陰に入った途端感じる冷ややかさ、いつのまにか伸びた黄昏時の影の感じに、記憶の扉が開くのです。
かつてあった時間、一緒に過ごした人、懐かしい思い出、叶わなかった夢、叶えなかった思い、ふと時空が歪み、過去と現在が混じり合います。
あの時、ああすればよかった、そんな後悔はきっと、誰にでもあるのでしょう。
人生のしくじり、選択ミス、運命の分かれ道みたいなもの。
でも、この前、気づいてしまったのです。
言い換えれば、苦い思い出以外は、それなりにやってきたのではないかと。
夜中に思い出して、うわーってなるような恥の記憶も、身もだえするような黒歴史も、意外に人生のアクセントみたいなものかもしれないと。
だって、それ以外は、思い出さないでしょう?
4月は、時空を超えていく
無邪気だった子供の頃とか、ちょっとひねくれちゃった思春期、大人になってからの挫折や妥協、いろいろあって、今があって、懐かしいあの頃に戻りたくても戻れなくて、仮に戻っても、きっとあの頃みたいにはならないとわかっていて、いくつもの時間が重なり合って、ここにいます。
よく過去の栄光って言いますが、昔はすごかったけれど、今は時代遅れ的なニュアンスで否定して、誰かをへし折って、自分も傷つけてきたと感じるのです。
そういう負の連鎖を終わらせて、得意なこと、好きなこと、やりたかったことにもう一度、立ち戻っていくことが結構大事だと感じるのです。
そして、心の中の大事なところにいる人に対して、胸を張るのです。ちゃんとやっているよ、約束を守ったよ!と。
過去に立ち戻って、熱を取り戻す、年齢とか、時代とか、環境とかを言い訳にせずに、あの日の続きからやってみる……
永遠の若さを秘めるしし座さんにお勧めしたい春の過ごし方です。
章月綾乃 しょうづき・あやの
やぎ座生まれ。星占いを読んでもなんだかピンとこなくて「こんなはずじゃない!」と深追いしたら、うっかり、占い師に。雑誌やwebの心理テストを考えたり、占いを書いたりしています。星のお手紙、モグモグ食べないように気をつけます。オフィシャルサイトはこちら。
Illustration: naohiga Coordinate: Norie Toriyama