初めてのソロ・アルバム『THE END』を2021年2月にリリースしたBiSHのアイナ・ジ・エンド。地元・大阪から上京後、住んでいたという中野の街で彼女の〝今〟をドキュメント。この日のために考えた4つの私服コーディネートに、ポエティックな言葉を添えてくれました。
アイナ・ジ・エンドの“今”をドキュメント「帰ってきた中野の街で」
おわりははじまりでしかない
mouton jacket_ TTT_MSW one-piece_USED earrings_TOM WOOD
「名前の一部でもあり、アルバムタイトルにもした“THE END”。ネガティブに捉えられがちな言葉ですが、終わりって何かの始まりなんですよね。中野で路上ライヴをしていた頃、いろいろ上手くいかず地元に帰ろうと思ったこともありました。次がダメなら夢はあきらめようと臨んだのが、BiSHのオーディション。今までの自分とさよならして、BiSHの活動が始まった。“終わり”が新しい未来へと導いてくれたんですよね」
中野の街自体が、家そのもの
one-piece_USED jacket_6 (ROKU) glasses_DIOR shoes_VANS
「上京して初めて住んだのがここ中野。当時は本当にお金がなくて、家賃が払えず、家を追い出されてしまって……。親にも打ち明けられず、ひたすら街を歩いていたことがありました。そんな時にふとまわりを見渡してみると、私と同じ状況であろう人たちもやっぱり歩き続けていたんですよね。それを見てこの街自体が誰かの家になってるんだなって気づいたんです。外と家の垣根がないというか、そんな温度感に心が落ち着きます」
誰かに“いいね”と言われて
生きた心地がする
撮影協力: 不純喫茶 ドープ
「悲しい出来事を他人に吐き出すと気持ちが楽になるのですが、それをすると曲作りに浄化できない。だから制作期間は誰にも悩みを打ち明けず、ためてためて曲にぶつけました。書き終わった曲をレーベル担当に送り『いいね』って言ってもらえて、やっと生きた心地を取り戻せた。私は不器用なので、辛いと息がうまく吸い込めず、歌い方も普段と変わってしまうんです。そのニュアンスが今作にうまく落とし込めたかなと思います」
お粧(めか)しすると、ちょっとマシでいられる
suede jacket_USED knit cardigan_TTT_MSW coat_USED skirt_MAISON MARGIELA shoes_3.1 PHILLIP LIM
「プライベートでは古着がほとんど。お気に入りのお店がいくつかあるのですが、私だけの秘密にしておきます(笑)。とあるショップのスタッフさんと仲良くなって、服の時代背景について教えてもらい試着をしてみたら、いつもと違う自分になれた気がしたんです。そんな経験から古着の魅力にどんどんはまっていきました。根本的に自分に自信があるわけではないので、おめかししている時はちょっとマシでいられるんです」
踊っている時がいちばん呼吸できる
「小さな頃、多動ぎみだった私を気遣って、母がダンスを習わせてくれました。4歳から始めて、小学生でジャズダンス、次はコンテンポラリーという風に、いろんなジャンルの踊りをずっと続けています。BiSHではメンバー各々の癖を拾って振り付けにするんです。逆に自分のパートが全然思いつかず、今でもほとんどがアドリブ。喋るよりも踊るほうが楽なので、インタビューでも脇汗をかいてしまうくらい緊張します(笑)。私にとっては踊っている時がいちばん呼吸しやすいんです」
太宰治、カフカ、三池崇史…
私が好きなもの
dress:_PATOU scarf_CHINATOWN panda-ring_CHINATOWN bag_HIDAKA shoes_VALENTINO
撮影協力: まんだらけ
「最近読んで面白かったのは『絶望名人カフカの人生論』と森鷗外の『山椒大夫』。一番好きな作家は太宰治で、「虹」のサビにある《トカトントン》という歌詞は彼の同名小説から引用しました。最近になって映画も観るようになり、友人におすすめされた三池崇史監督の作品は本当に素晴らしかった。なかでも、『オーディション』や『ビジターQ』にはかなり感化されました」