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映画『ビーチ・バム まじめに不真面目』監督、ハーモニー・コリンにインタビュー。あらゆることに喜びを。

映画『ビーチ・バム まじめに不真面目』監督、ハーモニー・コリンにインタビュー。あらゆることに喜びを。

ポップ・カルチャーシーンの異端児、ハーモニー・コリン監督の映画『ビーチ・バム まじめに不真面目』が4月30日から公開される。『スプリング・ブレイカーズ』以来7年ぶりの映画ということで、マイアミ在住の監督とオンラインでの取材が実現。映画にまつわるあれこれを聞いてみました。


──How do you do?

 Hi!

 

──あれ? いまどこにいらっしゃいますか?

外です。ヤシの木の下。葉巻を吸いながら。

 

──さすがマイアミです。ワニの友達もいそうですね。

紹介したいけど、いま夜だから彼らは寝てます(笑)。

 

──『ビーチ・バム まじめに不真面目』とっても面白かったです。今回は、クライムドラマだった前作『スプリング・ブレイカーズ』とは違い、ハッピー・ゴー・ラッキーな映画というか。アメリカでは2019年に公開されましたが、世界中がネガティブな空気に覆われてしまった2021年のいま観ると余計に気分がアガります。

 

ネガティブな空気というのはホントその通りで。コロナ前からそういう空気は漂っていたので、負のエネルギーにあふれた世の中に対するリアクションとして、それに反する映画にしたいと思ったんです。あらゆることに対して喜びと、ポエトリーと、ワイルドさを見出す主人公を描こうと。

──主人公のムーンドッグは詩人です。チャールズ・ブコウスキー風に言えば「酔いどれ詩人」。最初はどういうところから発想したんですか?

僕はマイアミの南部、フロリダキーズによく遊びに行くんですが、そこには、ハウスボートに住んでる人たちのコミュニティがあるんです。一日中釣りをして酒を飲んで酔っ払ってる人たちで、それは、チェックアウトカルチャー、つまり、余生を楽しもうという人たちで、酸いも甘いも人生いろんな経験をしてきたから、あとはここで酒を飲んで、海を楽しんで、太陽を楽しんで過ごす、そういう人たち。そんな彼らの世界が面白いし奇妙だなと思ったのがキッカケです。

 

──じゃあ、ムーンドッグみたいな人がいるんですね。

そう。ああいう人がわりといる。だから、(ムーンドッグを演じた)マシュー・マコノヒーと一緒にキーズをうろうろしながら観察して、イメージを作りあげたんです。商業主義的な世界を気にしない、自分なりの喜びだったりポエムだったり星だったりヤシの木だったり海だったり、そういうものをチェックアウトして楽しむ、一般の価値観からすればものすごくだらしなく見えるだろうけど、愛すべき人物にしたいなって。

──キーズというと、アーネスト・ヘミングウェイゆかりの場所としても知られていますが、その影響もありますか?

インスピレーションとしてはあります。ヘミングウェイ・ハウスでもいくつかのシーンを実際撮ったんです。そのカットを使ったかどうかは忘れてしまったんだけど(笑)。キーズは、ヘミングウェイ以外にも、テネシー・ウィリアムズも住んでいたし、作家や芸術家が住む伝統があって。アウトローが好む場所なんです。キューバに近いというのもあると思う。酒もドラッグも豊富にあるから(笑)。

 

──ハーモニーさんもそういう生活に憧れます?

Oh, no(笑)。僕はのんびり派。釣りをしたり、葉巻を吸ったり、夜に月を見たり、子供と遊んだり。マウンテンデューを飲んで、タコベルを食べる、そういう毎日ですから。

 

──映画には歌手のジミー・バフェットが本人役として登場しますが、彼もキーウェスト在住のアーティスト。ムーンドッグの親友役のラッパー、スヌープ・ドッグと船上でセッションするシーンは素晴らしかった。

即興でやったんだけど、僕も観ていて楽しかった。音楽的にも哲学的にも相性が良くて、コインの裏表みたいなところがあるんです。2人ともアイコニックなラリってる人たちなんで(笑)。

 

──文学的な影響でいえば、ムーンドッグが最初と最後に読む“ The Beautiful Poem”という詩は、リチャード・ブローディガンの同名ポエム(「ビューティフルな詩」)からの引用ですよね?

その通り。文脈を変え、アレンジして使いました。ブローディガンは偉大な詩人。僕は大好きなんです。実は、彼が住んでいたカリフォルニアのボリナスは、僕が生まれた場所でもあって。家も結構近くて、母は若い頃に彼の家のハウスキーパーをやってたんです。

 

──へえ〜! じゃあ、ムーンドッグにはブローディガンの要素も入ってますか? 髪型が似てるような気もします。

いや、詩にインスピレーションは受けたけど、モデルではないかな。ムーンドッグは、偉大な詩人だけど壊れてる、自己破壊的な人物なので。

──ところで、「ムーンドッグ」という名前の由来は?

ムーンドッグという言葉の響きが好きというのがまずあるんですが、50〜60年代のニューヨークで活動していた有名なストリートパフォーマーの名前でもあるんです。僕は彼のことも大好きで。盲目のミュージシャンでタイムズスクエア近辺をいつもブラブラしていたノルディックスタイルのホームレスだったんですが(注:「6番街のバイキング」と呼ばれ、“The Viking of 6th Avenue”というドキュメンタリー映画もある)、現代音楽家とか彼に影響を受けた人は多いんです。

 

──なるほど。実在のムーンドッグは詩人でもあったそうですが、そもそも詩人を主人公にしたのはなぜですか?

詩は好きだし、好きな詩もいろいろとあるんだけど、それよりも自己破壊的な人を表現するのに詩人という設定が面白いなって。

 

──D.H.ロレンスやシャルル・ボードレールの詩も引用されていましたね。

まあ、好きかな。好きなんだけど、そんなに熱心な読者ではなく。引用したのは、ムーンドッグがロレンスの詩を盗用するというアイデアが面白いかなと思ったからなんです。

 

──映画に出て来るムーンドッグの詩集『キーゼスト』は実際に出版もされました。これはハーモニーさん自身が書いた詩、ってことですよね?

僕が……、いや、ムーンドッグが書いた詩集です。僕の推薦コメントが載ってますけど(笑)。

 

──ところで、ムーンドッグの娘ヘザーについて、彼女とムーンドッグ、彼女と母ミミーとの関係が、なかなかオープンで面白くて。あんなに奔放な両親のもとで育ったのにすごく冷静でしっかりした大人なのが素晴らしいし、まるで友達同士のような親子関係がうらやましいなと思いました。

ヘザーが親でムーンドッグが子供みたいな関係ですから(笑)。まあ、映画の中のキャラだから極端には描いているけれど、家族の境がないワイルドな家族を描いたら面白いんじゃないかとも思ったんです。フィルターのない家族を描いたら最高なんじゃないかなって。

 

──こういう親子関係を描くのは、ハーモニーさんの娘さん、レフティさん(12歳)の存在も大きいんじゃないかと想像しますが(注:レフティは映画にも登場。ドルフィンボートに乗る家族の娘役を演じている)、彼女はどんな娘さんですか?

とってもファニー。とにかく個性が強くて手がかかる子で。僕にとってもチャレンジな毎日なんです。エネルギッシュでアイデアもいっぱいあって、僕のことにまったく興味がなくて(笑)。

──彼女はどんな夢を持っているんですか?

なんだろう。とにかくいまはTikTokに夢中(笑)。見るたびに踊ってる。うちの中で一日中踊ってますよ。クレイジーで最高です。

 

──小さなムーンドッグかもしれませんね(笑)。そういえば、映画の後半、ムーンドッグは「光をぶちまけろ」という詩を、ザック・エフロン演じるフリッカーに伝えるシーンがあります。ムーンドッグこそが光だなとも思いました。

そう、その通り。自由の精神で、自由意志で生きる人こそが光。ムーンドッグは光に向かって生きている人だと思うんです。

 

──そして。すべてを破壊して終わるエンディングが素晴らしい。ある意味、ハッピーエンドで、ムーンドッグが妻ミミーとの永遠の愛を誓うようなロマンティックな最後にも思えました。

それはとても素敵な解釈で、芯を突いてると思います。でも、オープンエンドなので、みなさんの好きなように捉えてほしい。それが永遠の愛であったり、物質主義や消費主義への反発であったり、あるいは、人生に意味はあるのかないのかの問いであったり、いろいろ感じるだろうと思います。破壊への祝祭というのが、僕が考えていたことでもあるので、そこを楽しんでもらえればと。

──次回作の構想はありますか?

いまちょうど練っている最中。とってもファニーでバカバカしい話を書いたので、映画になるのかテレビになるのかわからないけれど、それをカタチにしたいなと思ってます。それもまた舞台がフロリダで。

 

──じゃあ、「フロリダ・トリロジー」の3作目になりますね。

ですね。僕も楽しみにしてる作品なので、出来上がったらぜひ。

 

──そういえば。ヘミングウェイ・キャットよろしくかわいい仔猫ちゃんも登場しますが、ハーモニーさんも猫派ですか?

妻が2匹飼ってるから、いつも家の中をぶらぶら歩いてて。僕も好きじゃなくちゃいけないんだけど、このあいだお腹を引っかかれて血が出ちゃった。若干苦手です(笑)。

『ビーチ・バム まじめに不真面目』

かつて1冊だけ出版した詩集が大成功を収め、天才と称賛された詩人ムーンドッグ。資産家の妻と結婚後は、パーティ三昧で酒とドラッグと女に溺れる生活を送り続けてきた。フロリダの太陽と海に囲まれ自由気ままな人生を謳歌するムーンドッグだったが、新しい詩集を出版しなければ無一文になるという窮地に陥いる──。ムーンドッグの親友をラッパーのスヌープ・ドッグが、資産家の妻をアイラ・フィッシャーが演じている。共演にザック・エフロン、ジョナ・ヒルなど。気鋭のデザイナー、ハイディ・ビベンズによる個性的な衣装にも注目。ムーンドッグを演じるのはテキサス州知事選への立候補が噂される名優マシュー・マコノヒー。

監督・脚本:  ハーモニー・コリン
撮影: ブノワ・デビエ
美術: エリオット・ホステッター 
編集: ダグラス・クライス 
衣装: ハイディ・ビヴェンス 
音楽: ジョン・デブニー
出演: マシュー・マコノヒー、スヌープ・ドッグ、アイラ・フィッシャー、ステファニア・オーウェン、ザック・エフロン、ジョナ・ヒル、マーティン・ローレンス、ジミー・バフェット

提供:木下グループ
配給:
キノシネマ

2019年/アメリカ/95分/カラー/シネスコ

4月30日(金)より、キノシネマみなとみらい・立川・天神ほか全国順次公開
© 2019 BEACH BUM FILM HOLDINGS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

公式HPはこちら

Profile

Harmony Korine ハーモニー・コリン

1973年生まれ。映画監督。10代の頃から脚本を書き始め、ラリー・クラーク監督の映画『KIDS/キッズ』(95)で注目を浴び、『ガンモ』(97)で映画監督デビュー。「アンファン・テリブル(恐るべき子供)」と呼ばれ、90年代のユースカルチャーを牽引する存在に。その後、『ミスター・ロンリー』(07)、『スプリング・ブレイカーズ』(12)など、映画監督としては寡作ながら、確実に心に響く作品を残している。近年は、絵画や詩、小説や写真などを発表したり、ファッションブランド〈グッチ〉のCMや、ビリー・アイリッシュやリアーナのMVを手がけるなど、幅広いアーティスト活動を展開している。

Text :Izumi Karashima

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