2020年はどんなテクノロジーが出現する!? メディアアーティスト・真鍋大度インタビュー:リオオリンピック閉会式セレモニーの舞台裏

2020年はどんなテクノロジーが出現する!? メディアアーティスト・真鍋大度インタビュー:リオオリンピック閉会式セレモニーの舞台裏

GINZA読者もまだまだ記憶に新しいのでは? そう、日本中、いや世界中が目を奪われた、2016年8月の雨の中でのセレモニー。今日はあの「8分間」の舞台裏を、あらためてお届けします。

 

「やっと2020年が楽しみになってきた!」

これまで耳にしたこともないモダンな君が代、ダンサーたちの近未来的のファッションやヘアメイク、これぞ椎名林檎!という粋な音楽に、テクノロジーを駆使した演出、そして世界中が目を疑った……安倍マリオ!

 

世界が熱狂したリオ五輪閉会式フラッグハンドオーバーセレモニーを目にして、「なんだ、東京ってカッコイイじゃない」とドキドキさせられた方も多いのでは?

 

この挑戦的なショーを手がけた音楽監督の椎名林檎さんや総合演出・演舞振付のMIKIKOさんは、時の人に。そして、制作チーム一覧をチェックしてみると……GINZAの不定期連載「コンピューターはファッションフォトグラファーの夢を見るか?_」でもおなじみのあの名前がありました。

 

チーフテクニカルディレクター
メディアアーティスト:真鍋大度

 

Perfumeの演出技術サポートやBjörkのライブの映像演出なども手掛ける、メディアアーティスト・テクノロジストの真鍋大度(@daitomanabe)さん。世界を飛び回る真鍋さん(睡眠不足)をskypeでつかまえ、あれこれ気になることを聞いちゃいました。

 

聞き手の私はGINZA5月号「ギーク女子会」でもGINZAに登場しました、ブロガーの塩谷舞(@ciotan)です。某月某日、東京は夜の7時、海外にPCをつないだところ……?

 

 

塩谷 こんばんは!

 

真鍋 おはようございます……。(現地時間は朝7時)

 

塩谷 あぁ、おはようございます。まずは、8月のリオ五輪閉会式。テクニカルディレクターを務められたとのこと、本当にお疲れ様でした!テレビの前で鳥肌でした。

 

真鍋 執念の微調整の甲斐あって、色々うまくいきました……ありがとうございます。

 

塩谷 これまで「日本人として嬉しい」だなんて出来事は、あんまり経験することもなかった気がするのですが……あの閉会式は日本のキャッチーな部分と、ディープな部分が組み合わさっていて、純粋に日本人として嬉しかったです。

そして、閉会式後にたくさんの人が「やっと2020年が楽しみになってきた!」とつぶやいていました。ネガティブだった意識をポジティブに変えるセレモニー、感動しました。ところで、ところで、真鍋さんが担当されたのは具体的にどんな部分だったのでしょう?

 

真鍋 企画やストーリー作りは佐々木宏さん、菅野薫さんらが担当して、僕の担当は主にソフトウェア周りのテクニカル全般ですね。とはいえエンジニアリングだけをしているわけではなく、AR(拡張現実)の映像、プロジェクションの映像のディレクション、あとはフレームの光のデザインもやってます。

光のパターンとARやプロジェクションの映像、カメラの動きを組み合わせて考える必要があるので、複数のパートにまたがってディレクションしている感じですね。ARは花井君というエンジニア、ハードは石橋さんというエンジニアが中心となってやっていて、フィールド映像は堀井君、田中君、荒牧君というアーティストが作ってます。クレジットはここを見ると詳しく全部出てますよ。

FLAG HANDOVER GUIDE

 

塩谷 ほうほう。2020年東京五輪の種目をAR(拡張現実)で立体的に出現させた映像と……

 

リオ五輪閉会式フラッグハンドオーバーセレモニー AR映像

(https://www.youtube.com/watch?v=sk6uU8gb8PA)。以下の画像も同様)

プロジェクションの映像ディレクションと……

リオ五輪閉会式フラッグハンドオーバーセレモニー プロジェクション

 

フレームの光のデザインですね。

リオ五輪閉会式フラッグハンドオーバーセレモニー フレーム光

 

真鍋 ハイ。あとはシステム全般の設計などですね。

 

塩谷 1つ気になったのですが、最初の君が代が流れたときの日の丸。あの真っ赤なシートのようなモノはどうやって出していたんですか? どんどん小さくなって……ふしぎでした。

 

リオ五輪閉会式フラッグハンドオーバーセレモニー 日の丸

真鍋 あれはMIKIKOさんのアイディアで、プロジェクションです。

 

塩谷 へえぇ!プロジェクター映し出していたんですか。屋外競技場で、あんな濃い赤色が出るんですね。

 

真鍋 ものすごい台数のプロジェクターを使っているので、影があまり出ずに真っ赤に映ります。

 

塩谷 プロジェクター、スゴい。

 

担当エンジニアたちは優秀だったから、
雨でも風でも大丈夫だと信じていました

 

 

塩谷 閉会式は土砂降りの雨でしたが、精密機械をたくさん扱う真鍋さんたちテクニカルチームは特に大変だったのでは?

 

真鍋 ホント、すごい雨と風でした。放送用のカメラの動きに制約がでてしまったりして。

 

塩谷 むしろ、あんな土砂降りの中で、次々と美しい演出が出てくることに感動してました……。

 

それに、このようなAR(拡張現実)を生放送で伝えるだなんて、やっぱりかなり高度に計算されていたんですよね?

a

 

真鍋 はい。ARと一部のプロジェクションではカメラの位置やズームが非常に重要なので、その辺は何度もシュミレーションソフトで再現して、厳密に指示していました。

ただ、ARは本番一発勝負だったので、万が一カメラ位置がずれていた場合には自動で補正をかけるシステムも作っていて、もしものずれがあったとしても目立たないようにしています。それ以外にも、いくつもバックアップがあります。

 

塩谷 念には念の計画を立てていたんですね。

 

真鍋 生放送のライブパフォーマンスなので、私たちの担当部分以外にも全てにおいてバックアップのプランが用意されてますね。トラブルや例外が起きたらどうするか、という検証を幾度となく行っていました。ただ、現地のエンジニアも優秀だったので大丈夫だろうと思っていました。

 

塩谷 百戦錬磨ゆえの確信……カッコイイ。

 

#裏方 #rhizomatiksresearch

daitomanabeさん(@daitomanabe)が投稿した写真 –

8月22日に投稿された真鍋さんのInstagram

明確なリーダーはいない、30代中心のフラットな職人チーム

 

塩谷 しかし、リオ五輪では私(1988年生)と同年代の方々や、もっと若いエンジニアさんも多くリオの現場で活躍していたみたいで……日本のエンジニアってスゴい!と感動しました。しかも今回、真鍋さんをはじめ、みなさん30代のクリエイターの方々が中心になって作り上げたんですよね。

 

真鍋 あ、ぼくは40歳になりましたが……椎名林檎さん(1978年生)やMIKIKOさん(1977年生)、菅野さん(1977年生)、中田ヤスタカさん(1980年生)たち、ほとんどが30代半ばのクリエイターですね。

 

塩谷 失礼しました(汗)。真鍋さんはテクニカルディレクターとのことでしたが、全体のチームリーダーは誰だったのでしょう?

 

真鍋 チームリーダー、というものはなく、全員が自分の領域に徹して、お互いが全力を出せるように知恵を出し合う……という感じですね。

 

GINZA編集部S 素晴らしい!従来の縦割りのピラミッドではなくてフラットな組織だったんですね。

真鍋 ハイ。強いトップがいてそれに引っ張られるという感じではなかったです。びっくりするくらい皆オープンでした。特に、デジタルクリエイティブの世界だと技術の進化が速く専門性が必要とされることが多いので、そうせざるを得ない気もします。

 

塩谷 たしかに、数ヶ月前の技術はもう古くなっちゃうような世界ですもんね。演出プランを決めていても、制作途中で技術が古くなっちゃう。

 

真鍋 そうですね。あと「最先端の技術で…」と言われがちなのですが、僕らが携わる演出は、必ずしも最先端である必要は無いんですよ。「枯れた技術の水平思考」という言葉があるのですが、古い技術でも違う目的に再利用出来る、という意味ですね。

古い技術でも、これまでと違った使い方をしたり、新しい技術と組み合わせて使えることの方が重要です。

 

塩谷 なるほど。新しい技術にとらわれすぎない考え方も重要なんですね。

 

真鍋 しかし、今回のチームは全員が専門領域を持つ職人で、実制作に移ってからは非常にスムーズでした。お互いのパートは信じ合う感じでしょうか。あと、IOCやリオ大会の閉会式を制作するエンジニアの方々にもたくさんアドバイスをいただきましたね。

 

 

2020年、どんなテクノロジーが登場する?

塩谷 でも4年先になると、また技術が進歩してるわけですよね。2020年には、どんなテクノロジーが登場していると思いますか?

 

真鍋 年先だと、大きな舞台で使えるテクノロジーはもうほぼ決まっていると思いますが……たとえば大きなステージでスマホを使った演出は出来るようになると思います。

 

塩谷 それは事前に観客がアプリをダウンロードして、客席みんなが曲にあわせてスマホを光らせる、というような?

 

真鍋 そうですね。1、2年後にはライブ演出でスマホをガンガン使えるようになりますよ。あと、動画のリアルタイム3Dスキャンや複数台のカメラの映像をシームレスにつなぐ技術。これも精度が上がると思います。

 

塩谷 つまり、競技中のアスリートを撮影して、その一瞬の姿を立体模型として3Dプリンターでプリントアウト出来ちゃったりもするんですかね。

 

真鍋 はい。それと、自分の好きな視点から生放送を見るというのも、一つのトレンドになると思います。

 

塩谷 スゴい!

 

真鍋 あとは、フラッグハンドオーバーセレモニーでやっていた、現実空間にはないものを、現実空間上に合成するARの技術。この間やった際は条件が厳しかったため、技術的なハードルは相当高かったですが、これも2020年にはもっと開けた技術になって、一般普及していくと思います。

 

リオ五輪閉会式フラッグハンドオーバーセレモニー

 

塩谷 ARってポケモンGO でぐっと普及したイメージですが、もっと気軽に作れるようになったら、結婚式の招待状とかにも仕込む人増えそうですね!

 

皆さまご飯タイムです

daitomanabeさん(@daitomanabe)が投稿した写真 –

 

真鍋大度がハマッているアプリって?

塩谷 では、突然ですが、最後の質問です!最近ハマッているスマホアプリを教えてください。

 

真鍋 うーん……snowとポケモンGOですかね(笑)

 

塩谷 snowって、くまちゃんとかの顔が合成できる写真アプリのsnowですか(笑)?じゃあここで1つ、snowで盛った自撮りを送っていただきたいのですが……

 

真鍋 いいですよ。

 

真鍋大度 snow

塩谷 超可愛い!! でも…なんだか、めちゃくちゃ疲れてません?

 

真鍋 これはひどいですね。

 

塩谷 目が寝てますね…忙しい中、ありがとうございました!

Text&Edit: Mai Shiotani

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