気鋭のDJ、ディディ・ハンの目に映るソウル・アジア・音楽

気鋭のDJ、ディディ・ハンの目に映るソウル・アジア・音楽

Share it!

Yaeji、Peggy Gou、CIFIKA……いま、韓国出身の女性アーティストが世を賑わせている。K-POPでもK-HIPHOPでもないところからも、新たな才能が続々と現れているのだ。ソウルのクラブシーンを中心に活動するDJ、ディディ・ハン(Didi Han)も近年注目されるアーティストのひとり。アジアを飛び出しヨーロッパへと活動の幅を広げようとする彼女に、ソウルの現在について尋ねた。


──ディディさんは5年くらい前にDJを始めたそうですね。なにかきっかけはあったんですか?

学生のときにファッションを勉強してたんだけど、ファッションショーのときに流す音楽を自分で構成したくて。それからDJを始めるようになったんです。

 

──ファッションを勉強してたんですね。

そうそう。子どものころからファッションには興味があって。それで卒業してからしばらくファッション業界で仕事をしていたんですけど、ちょっと飽きちゃったんです(笑)。ファッション業界にいるとどうしても売れる服をつくらないといけないじゃないですか。あとは少女時代やEXOのようにK-POPアーティストのMVに出てくるアクセサリーのデザインにも携わったり、舞台衣装の制作も手伝っていたんですけど、結局自分とはあまり合わなくて(苦笑)。だから以前はDJも別の仕事をしながらやっていたんだけど、ひとつの方向に集中した方がいいなと思って。いまはDJに集中している感じです。

 

──DJをするにあたって、影響を受けた人とかはいるんですか?

決定的に大きな影響を受けたのは、BBCから配信されていたニコラス・ジャーのミックステープ。ほかのDJよりもなぜか映画を観ているような印象が残って。耳で聴いているだけなのに、映像が眼の前に浮かんできたんです。それでDJにもっと興味が湧いて、練習するようになりました。

 

──映画もお好きだったんですか?

昔に比べたら観る本数は減っちゃったけど、好きですよ。なかでもクエンティン・タランティーノの作品が好きで。映画に出てくるセリフとか足音みたいな音があるじゃないですか。それをサンプリングしてミックステープに使ったりとか。

 

──いいですね。いまDJとしては、〈Deluxe Seoul〉というコレクティブに所属してるんですよね。

〈Deluxe Seoul〉は4年くらい前に結成されたコレクティブで、当時は〈Pute Deluxe〉という名前だった。わたしが参加したのは3年前。創設メンバーのヤンとジュリアンは、わたしたちがよくプレイする「Soap」というクラブのオーナーでもあります。

──いまソウルのクラブシーンに盛り上がりは感じますか?

そうですね。昔はカンナムの方にクラブが多くてEDMがたくさんかかっていたんですけど、最近はイテウォンやホンデの方にアンダーグラウンドなクラブが増えてきていて、音楽のジャンルも多様になってます。クラブの数自体も結構増えてるかも。ただ、その分潰れるところも多くなっている気がしますけど。

 

──新陳代謝が激しくなってる、と。ディディさんはどんなところでよくプレイしてるんですか?

「Soap」「Henz Club」「MODECI」が多いかな。「Soap」はオープンしてから1年ちょっとしか経っていないんだけど、遊びに来る人たちのバイブスが明るくて好きですね。「Soap」ではオープン当時から友達のブランシュと一緒に〈Peach〉というパーティを企画していて、それがいつも楽しくて記憶に残ってます。

 

──日本から旅行でソウルに行く人も多いですし、ソウルはいま注目されているような印象があります。

コンパクトだし、アーティストにとっても住みやすい街だと思いますよ。ソウルはまだクラブシーンもそこまで大きくないので一度なかに入れば色々な人に出会えるし、アイデアの共有もできる。一緒に音楽をつくることだってできますから。
一方で、最近身の回りでは海外と韓国を行き来する人も増えている気がします。たとえば一年のなかで韓国と海外でそれぞれ半分ずつ過ごすとか。わたし自身、海外に拠点をもとうかなと考えてた時期もありました。ヨーロッパだと色々な国に行きやすいし、音楽シーンも活性化しているので学ぶことがあるんじゃないかと思って。

──なるほど。やはり海外の方が音楽シーンは魅力的なんでしょうか。

ソウルもいいですけどね。でも、ヨーロッパのクラブに行くと自分の好きなマイナーなものがむしろメジャーになっていたりしますから。韓国はどうしてもK-POPシーンが盛り上がっていて。わたしの友だちのなかにもプロデューサーとして曲をつくる人もいますけど、メジャーな市場のなかで要求されるものがたくさんあって、それに合わせてテイストが変わってしまったり。そういう様子を見ると少しさびしくなることもあります。流行っているから聴くとかではなくて、自分の好きな音楽がきっちりあって楽しめる人がもっと増えたらいいのにって。
でも、最近クラブシーンが徐々に大きくなっていくことで、ある種そういう問題も少しずつ解決されていくんじゃないかと思うんです。EDMとかヒップホップとか特定のジャンルだけじゃなくて多様なジャンルの音楽を聴く人は増えてきてると思いますし。クラブ以外にも〈Seoul Community Radio〉みたいにアンダーグラウンドのDJをたくさん呼んでいるラジオもあるので、いい変化は生まれてきてるんじゃないかなって。

──ディディさん自身も、最近は海外でDJをする機会が増えてますよね。

中国、インドネシア、マレーシア、インド、台湾……アジアは結構回ってますね。10月は初めてヨーロッパでもDJをしてきました。ロンドン、パリ、アムステルダム、ベルリンと回ってきて。バタバタだったんですけど、すごく面白かった。

 

──日本はまだ?

まだです。2〜3年くらい前に行ったことはありますけどね。今度DJとして行こうと計画はしているんですけど、まだわからなくて。

 

──世界中を回ってみて、韓国の見え方は変わったりしました?

やっぱりK-POP市場の大きさは感じますね。でも、韓国のアンダーグラウンドシーンに興味をもってる人がいたのにも驚きました。アンダーグラウンドなところって、情報が探しにくいじゃないですか。だから海外に行くと、ソウルのパーティのフライヤーを見せられて、このDJは誰なんだとか色々質問されたりして(笑)。
海外にも面白いものはたくさんあるけれど、いまはもっとソウルで活動したいと思ってます。ヨーロッパの都市を色々回ってみて、もっとアジアにフォーカスしたいと思ったし、わたし自身もアジアについて学びたくなったんですよね。

 

──最近は韓国のヒップホップも世界的に注目されてますよね。

友だちのなかにはプロデューサーもいるので教えてもらうこともありますし、わたし自身、プロデュースについて学んでいるところです。韓国のシーンが海外から注目されているのは感じますね。わたしだけじゃなくて、ソウルで活動しているローカルなDJが海外に行くことも増えてます。特に上海とか成都に行く人は多いかも。

 

──YaejiやPeggy Gouのように海外を拠点としている韓国出身のアーティストについてはいかがですか?

ふたりとも大好きです!彼女たちが注目され始めたことによって、希望をもって活動できる韓国のアーティストは増えているんじゃないかと思いますし、わたし自身彼女たちからは影響を受けています。それと韓国に限らず、世界的にも女性アーティストの活躍は最近増えてきていますよね。SOSUPERSAMのようなアーティストも大好きですし、オーストラリアのニーナ・ラスベガスは自分で「NLV Records」というレーベルを立ち上げていたり。DJ活動にとどまらず活躍している人を見ると勇気づけられますね。

 

──ディディさん自身は今後どんな活動をしていこうと考えてるんでしょうか。

いまは少しずつトラックのプロデュースも始めていますし、自分のアルバムをつくりたいとも思ってます。映画の音楽をつくったり、展示会のような形式で音楽を発表してみたり、色々なことに興味はあって。それに、DJっていう職業はすごく面白いと思うので今後も続けたいです。いまは大体週に2回くらいDJをしているんですけど、1回もしない週があると自分が生きてる感じがしないですから(笑)。わたしにとってDJをすることは生きることと同じで、生きていると感じられるのがすごく嬉しいんです。

Didi Han ディディ・ハン

韓国・ソウルを拠点に活躍するDJ。DJコレクティブ〈Seoul Deluxe〉のメンバーでもある。ニコラス・ジャーのミックスに影響を受けDJを始める。アジアを中心に国内外のクラブでプレイするほか、自身のSoundCloudでDJミックスも発表している。instagram @didi_han_

Photo&Text: Shunta Ishigami

Share it!

FOLLOW US

GINZA公式アカウント