ファッション業界紳士の偏愛趣味〈N.HOOLYWOOD〉のデザイナー尾花大輔さんが「温泉」を語る

ファッション業界紳士の偏愛趣味〈N.HOOLYWOOD〉のデザイナー尾花大輔さんが「温泉」を語る

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ファッションに関わる男性たちの一風変わった趣味に迫っていく連載「ファッション業界紳士の偏愛趣味」。ギークな紳士の方々による偏よりまくった趣味話は、必ずやみなさんの好奇心と知識欲を刺激してくれることでしょう。


記念すべき最初のゲストは、〈 N.HOOLYWOOD〉のデザイナーである尾花大輔さん。尾花さんは業界では知らぬ者がいないってくらいのハードコアな温泉マニア。全国の温泉を巡る雑誌の連載まで持っていた彼に、その楽しみ方からおすすめどころまでを指南してもらいました!

 

湧き出た場所でそのまま入る。
それが温泉の究極。

 

──最近も温泉には行ってますか?

行ってますよ、年がら年中(笑)。夏は夏で冷鉱泉っていう気持ちよいのがあって。温度が25℃未満の温泉のことを言うんです。

 

──それはよさそうです

プールでも真夏の屋外だと、35〜36℃くらいになりますから。そのくらいの温度は、温泉ならすごくいいんですけどね。体温とほぼ一緒だと1時間でも2時間でも入れて、体とお湯が一体化していく感じ。下から湧いてくる大地のエネルギーを体で感じられるって半端ないですよ。

 

──温泉も一種のパワースポットですよね。

地球のコアなところから、ダイレクトに湧き出してくるものだしね。いちばんよいのは足元湧出、自噴と言われる温泉で、勝手に湧き出てきて、その湧き出てきた場所でそのまま入るというのが、マニアにとってはたまらないんです。

 

──なるほど、そういうものがいい温泉とされる。

動力揚湯と言って、掘ったものを動力によって汲み上げるものは、管を通ってくる間に酸化しやすいし、温度が変わるので鮮度に欠ける。最近の温泉は基本この構造ですが、努力をしてる湯場もあります。

──のっけから聞きなれない言葉がたくさん出てきます(笑)。

僕にとって、温泉で重要なのはお湯の湧出量。少なくても溜めれば源泉かけ流しと言えるけど、菌が生まれないよう循環器できれいにしなくちゃいけない。でも、誰かが入ると垢も交ざり、横で体を流したお湯も一緒に循環されるケースもあるから、正直あまり気持ちいいとは思えないんです。それに、循環することで温泉に入っている成分までろ過されて消えてしまいますし。場所によっては塩素で消毒する必要があり、塩素にかかるコストの問題も絡んできて、いろいろと難しい。だから、お湯の量と湯船の大きさが合っていて、なおかつ、配管ではなく湯船から直接出ている状態のものがいいんです。

 

──いままで、どれくらいの数の温泉に行っているんですか?

2千数百カ所ですね。と言っても、入れないものも含めて日本だけで2万カ所以上ありますから、温泉マニアにしてみれば決して多いほうではありません。

 

──入れないものと言うと?

私有地にあったり、一酸化炭素の量が多すぎて、ガスマスクをしないといけなかったり。いくつかそういうところにも入ってはいますけど。別府温泉の山奥の私有地に温泉があって、行ったときは入れなかったんですが、あとから聞いたら実は知り合いの家のものだったということもありましたね(笑)。

 

ネットは信じるな。
行ってみなけりゃわからない。

 

──そういった温泉の情報をどこで仕入れているのか気になります。

主にネットで調べていますが、自称温泉ジャーナリストの中にはいかがわしい人も多くて、信頼できる情報を見極めるのが難しい。載せてやるから、よく書いてやるからと脅すようなヤツらもいるらしく。温泉の効能、本来は効果と言うんですが、それもデタラメだったりして。ちなみに、温泉の飲用はおすすめしません。成分にもよりますけど、湧出口から直接出ているところだけならまだいいのですが、菌に感染するリスクは大きいので。

 

──そうなんですね。ネットの情報は鵜呑みにしてはいけない。

温泉を求めて海外まで行ったりしてわかったことは、新鮮なお湯を求めれば求めるほど、ハードコアな環境になるということ。2時間くらい山を登らなきゃいけないとか。達成感はあるけど、そのあと2時間かけて戻るわけですから。せっかく入ったのに体もまた汚れるし。……でも、それはマニアとしての喜びの話で、みんなが求めるのはやっぱり癒しですよね。そう考えると、自分の話はあまり参考にならないかも(笑)。

 

──ちなみに、尾花さんが温泉に求めているものって何でしょう?

いまはただただ癒しですね(笑)。一時期は職業病みたいになって、旅館で出てくるステレオタイプな夕飯に飽きてしまったこともありました。すごく贅沢なことなんですけどね。宿泊はホテルにして夕飯は外で食べるようになったり、食がメインになったいわゆるオーベルジュにしてみたり。部屋にお風呂が付いているところもあって、湯船が小さいから劣化も少ないし、こういうのがベストなんじゃないかと思ったりもして。ただ、地方で洋風を演出するのは難しいので、危険な例も多くあります(笑)。だから結局、“まあまあ”なところに行き着くという。

 

──そもそも、温泉にハマったきっかけってあったんですか?

箱根まで車で1時間のところに住んでいたこともあって、もともと温泉によく行く家で。温泉は楽しくて好きな場所でしたね。親もくつろぎたいから、ある程度なら好きにしていても怒られなかったし。

 

──子供の頃から慣れ親しんでいたんですね。

そのあと大人になってから、たまたま手にした本に「本当の温泉は66軒しかない」と書かれているのを見つけて。それで改めて興味を持ったんです。66軒というのは大げさでしたけど(笑)。

 

──そこからのめり込んでいったと。

ハマった当初は日帰りで青森の温泉に行ったりもしていましたね。妻と小さな子供にも付き合ってもらって。設備がちゃんとしていないところでは、車で待っていてもらってひとりで入ったりもしました。でも、そんなことを何度かしているうちに「ねえ、そこまでして入りに行く理由あるかな?」となって、「ないよね、ないない」と(笑)。

 

尾花さんがGINZAの読者に
すすめる温泉5選。

 

──温泉にはご家族で行くことが多いんでしょうか?

いまは家族、あるいは、友人の家族と行くことが多いですね。パッと思いついて、ひとりで行くなら近所の温泉。東京でいちばん黒い温泉と言われている、北品川の天神湯とか。若い兄弟が番頭をしているんだけど、ふたりとも洋服好きで。家族で行ったときに声をかけられて知り合ったんですよ。一見チャラチャラしているけど、温泉ということについてはすごくマジメにやっているところです。

 

──事前に候補として挙げていただいたおすすめのひとつですね。

実はおすすめを挙げるのって難しいんですよ。女性にも行きやすいところで絞ってみましたが、本当はもっとくわしい条件を出してもらえたほうがよくて。誰とどこから行くかなどによっても、細かく変わっていきますから(笑)。

 

──そこまで考えていただいて、すみません(涙)。

都内なら練馬にある久松湯もおすすめです。恐ろしいくらいかゆいところに手が届くところ。こだわりが感じられて、新しくきれいで、突き抜けてますね。天神湯の連中にヤバいところがあると聞いて知りました。

 

──拝見したホームページも素敵でした。

あとは都内から日帰りで行けるところなら、埼玉の都幾川温泉 とき川神奈川のかぶと湯温泉 山水楼。ともにpHが10を超えているアルカリ性。pH7〜8くらいの弱酸性が肌にいちばん害がなくて、それより低いと酸が強くなって肌によくない。逆にそれより高いアルカリ性になると、ヌルヌルと肌にまとわりつく感じで、シャンプーがなくても髪がサラサラになったりします。簡単に言うと、美肌の湯。それもあって選んだんです。

 

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結果、こいつらが一番使える^_^#ph計 #水温計uomo_magazine #uomo #入浴タイムズ #newyokutimes #最終回#約5年間#uomoさんありがとう

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──さすが抜かりのないチョイスですね。

ちなみに、山水楼は東京に近いのに秘湯みたいな感じもあって、秘湯感をわりと手軽に楽しめるのもポイントが高いです。そういう意味では、群馬の法師温泉 長寿館は少しハードコアな感じかもしれません。クラシックというかノスタルジックな感じで、千人風呂と言って男女混浴だったりもしますし。すごくいいところですけど。

 

──そういうストイックさはGINZAにも合いそうです(笑)。

それと、最後は箱根の姥子温泉秀明館。昔は泊まることのできる宿だったんですが、いまは休憩室のようになっていて、わりとレギュレーションが厳しいところ。でも、神がかった湯場は昔のままで、周りだけモダンにあしらいを変えていて、それもすごくいい。モダンな家具やアートが嫌味なく置かれていたりするので、GINZAの読者にもおすすめですね。

 

──参考にさせていただきます。ありがとうございました!

尾花大輔 Daisuke Obana

〈N.HOOLYWOOD〉デザイナー。古着を扱うショップのバイヤーなどを経て、2001年に自らのブランドをスタート。ニューヨークコレクションに参加するなど、国内外で高い注目を集める存在に。ファッションに関する膨大な知識を生かし、近年は数多くのブランドのディレクションを手がけている。

Photographer: MURAKEN Text:Yusuke Matsuyama   Edit:Karin Ohira

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