28 Jun 2019
FeelDog(ピルドク)の努力家な素顔。アイドル×芸術家の胸の内をGINZAに語る

K-POPは勿論、ヒップホップやバンド、ファッションまで多角的に文化が注目されるようになった現在の韓国。表舞台に立つ人達だけではなく、それらの文化を世界に発信してるクリエーターの存在が気になり、取材を敢行。
第1回: NCTやSHINeeのMVを手がける映像作家 ETUI COLLECTIVE キム・ウジェ インタビュー
第2回: BLACK PINKやEXOのMV監督イ・ハンギョル氏に動画制作の裏側をインタビュー
第3回目はK-POPアイドルグループBIG STAR・UNBのメンバーとして、表舞台に立つFeeldog(ピルドク)さんにインタビュー。歌手活動をしながら、ペインターとして芸術活動も行なっており、韓国では個展を開催した他、アーティストへのジャケットアートワークも提供。5月には、日本最大級のK-POPフェス、「KCON」にてライブドローイングと展示を行い多くの人が集まりました。
──まずはGINZAの読者に自己紹介をお願いします。
アーティストとして活動しているピルドクです。お会いできて嬉しいです。
──今回はKCONにアイドルではなく作家として参加したとのことですが、どのような内容の展示をしたのですか?
私が最近韓国の百貨店で開催した「봄을 느끼다(春を感じる)」という企画展で発表したものをKCONでも展示しました。
──日本の方々の作品に対する反応はいかがでしたか?
日本での展示ははじめてだったのですが、非常に新しい感覚を得た1日でした。初日のライブドローイングでは、見てくださった方々も楽しんでいるように見えましたし、私自身もとてもあたたかい気持ちになりました。僕が作品のモチーフにしている「花」は、人によって持っている考え方や価値観が違うものだと思いますが、見る人それぞれが優しさや心の和みを感じてくれたという感想を聞けたので嬉しかったです。
──絵の活動はいつから行なっていたのですか?
2017年に初の個展をし、そこから本格的にスタートしました。それ以前は歌手としての活動をしながら、アルバムの準備を休んでいる期間に退屈な時間を送るのが嫌で、制作をはじめてみたんです。最初はスケッチブックに描いていたのですが、だんだん欲が湧いてきてキャンバスを買って描くようになりました。予定はしていなかったけれど、自分の考えや思いを込めた作品たちをそのまま捨てるのが勿体なくて、展示をすることに。知り合いを通じてキュレーターの人を探したり、その方と話し合いながらギャラリーも直接回って、ようやく個展を開催することができました。それを機に「しっかりと制作活動をしなければ!」と思うようになり、2018年には二回目の展示、2019年には先輩たちとのグループ展にも参加しています。最近は、先ほどお話した「봄을 느끼다(春を感じる)」というテーマの企画展を主催しました。
──自力で展示を開催した最初の展示会から、今では大型イベントに参加するまでに。この過程で気持ちの変化はありましたか?
はい。こうやってイベントに招待していただいてる事自体が私を作家として認めてくれたと思うので嬉しい反面、少し心が重く感じる部分もあります。期待に応えるためには、もっと自分のカラーや作品性を確実に伝えなければという気持ちが強くなってきています。本も沢山読まなければならないし、勉強もして、プロらしく見えるために努力をしなければ、と。プレッシャーに感じる部分もありますが、結果的に皆さんが好んでくれているのであれば、その負担さえも作家活動のひとつだな、と思えます。
──大衆性という面に通じると思うのですが、メジャーシーンで音楽活動をしながらも、アート活動を続けてこれた創作エネルギーの源は何でしょうか?
ファンの方々、家族、友達…。私の周囲の全てのものです。今は自分のために、休まずにずっと動いていようという思いが大きいです。自分が動きまわる分だけ結果はついてくると思うし、僕はその成果を得た感覚が好きなんです。展示をしたり、ダンスのワークショップをしたり、結局は誰かと疎通して何かを生みだすことで、それだけ自分が努力をしたぞという勲章を受けた気持ちになるんですよね。歌手としてだけではどうしても楽曲をリリースした時にしかお会いできないので、ファンの方々のためにももっといろいろな方法で会いたいですし、継続的に私が一生懸命やっている姿をお見せしたいという思いがありますね。
──歌やダンスと、絵を描くという行為、表現としてどのような違いがありますか?
歌手としての時は、直接的に自分自身の体を動かし表現しています。逆に絵を描く時は、絵を通して間接的に見ている人の心に何かが響くように表現しているのだと思います。
──ピルドクさんの絵によく登場しているひまわりにはどんな意味が込められていますか?
これまで行なってきた展示では、沢山伝えたいことがあったので、作品に多くの意味を込めてきたんです。絵が少し複雑だったり、表現の仕方も様々でした。でも今回は、もっと単純に「自分が一番好きな花・ひまわり」と、「自分が一番好きな季節である春」この二つだけをキーワードに設定して、自分自身が描いていて楽しくなるような絵を描こうとしました。前回までは具体的な話をするピルドクだとすれば、今回は人々に安らぎや優しさのムードを与えるピルドクだったらいいなと思って、そういう考えが込められています。ひまわりが自分だとすれば、太陽は自分が行かなくてはいけない未来。ひまわりが太陽を見ているように私自身も懸命に未来に向かっていかなくちゃ、そんな意味が込められています。
──展示だけではなく、HOYAさんのアルバムのカバーワークや、ご自身の楽曲であるFeeldog x Jvde『Color』のMVにも絵が登場するなど音楽関係の仕事にもつながっていますよね。個人的に韓国の音楽シーンにおけるアートワークがすごく面白く感
何年か前まで韓国のメジャーシーンではシンプルでミニマルなデザインが流行っていましたね。最近はデザインや色彩のスタイルが多様化し、メジャーとマイナーの境界がなくなってきているのを感じます。音楽と同じで、ジャンルも多様化して視野が広くなってきているようです。
──音楽に対する理解度も高いからこそ表現できることもありますか?
誰かになにかを伝えたいときに、どうすればより理解されるものになるかについては、いろいろなジャンルの活動をしている分、他の人よりは知っているのかなと思います。なので、今後もっと歌手活動以外のことにも積極的に挑戦してみたいし、私の活動を見て新しいことに挑戦する人も増えたらいいなと思います。
──実際ピルドクさんの影響で絵を描き始めたアイドルの方が何人もいらっしゃるとお伺いしましたが、そのように周りの方に影響を与えてることについてはどうお考えですか?
純粋に周りの友人たちが幸せなら良いな、退屈しないと良いなと思って「一緒に絵を描こうよ」って声をかけたところから始まったんです。疲れてるときや何もしていないときに、話をしたり、一緒にお酒を飲むこともできるけど、もう少し健康的で芸術的に発散できる方法として、一緒に踊ったり、歌の作業をしたり、絵を描いたりして。そうするうちに、今ではチャニ(A.C.E.のメンバーチャン)やジュン(U-kissのメンバーJUN)なんかは、絵を描くことにヒーリングを感じてくれているみたいです。そういう友達の姿を見ると、自分も幸せなんですよね。
──今回の展示を見に来ていたファンの方々からピルドクさんが周りの歌手やアイドルの方に影響をもたらしているという話を聞いたのですが、きっとこういった考えからきているのですね。
僕はただ受けた分だけ返したいと思っているだけです。ファンの方々が下さる愛も当たり前のものではないと考えています。私は舞台の上だろうと展示会場だろうと、いろいろな方法で今後も作品を見てくれる人々とコミュニケーションを続けていきたい、と思っています。
──実際に日本のファンの方も韓国に展示を見に行っている方が多数いらっしゃるようですね。
時々会場に私がいても、私と話をしないで、ずっと作品を見ている方がいるんですよ。そういう姿が私にとってはすごく嬉しくて。歌手ピルドクではなく作家のピルドクとしても少しづつ認められて来たのかなと感じました。
──K-POPは今や世界中に知れ渡っていますが、実際韓国のアートというとまだ日本ではそんなに知られていないのが現実かと思います。でもピルドクさんのような影響力がある方が展示をすることで韓国のギャラリーや美術館にまで足を運ぶきっかけを作っているのが素晴らしいですね。
新しい経験をプレゼントしているという部分において、とても幸せでありながら、活動を続けていかなくちゃというプレッシャーも感じています。ただなんとなく絵だけを描くのではなくて、もう少し勉強や研究をしていきたいです。
──今後の活動計画や、アーティストとして表現したいことを最後に教えていただけますか?
今回のKCONのイベント全体のテーマ「拡張」でした。海外での芸術活動は、今回のKCONが初めてだったので、私の人生においても芸術活動が「拡張」できたかな。今後も海外で様々な活動をしていきたいですね。今は少し絵の活動に集中していますが、歌手としても色々とコツコツと準備しているところなので、期待してくだされば嬉しいです!
Feeldog
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