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グラフィックデザイナー・小林一毅が語る、創造のタネと情熱の源|あのフィールドの旬な人 vol.4

グラフィックデザイナー・小林一毅が語る、創造のタネと情熱の源|あのフィールドの旬な人 vol.4

小説、建築、パティスリーやグラフィック…さまざまな分野でいま、脚光を浴びているキーパーソンにじっくり話を聞きました。あなたの創造のタネ、情熱の源はいったいどこにあるの?


graphic designer

小林一毅

図案を作る過程で生まれる
心地よい形が好きなんです

「おいしそう感、を大事にしています。自分の手から、たとえば〝甘そう〟〝いいにおいがしそう〟というような形が生まれる瞬間が好き」

多くのグラフィックデザイナーを輩出した資生堂クリエイティブ本部に4年間勤めた後、2019年に独立した小林一毅さん。かつて葛西薫や原研哉も受賞したJAGDA新人賞に、歴代最年少の27歳で輝いた実力派だ。パッケージデザインから和紙の文房具や塗り絵まで、一瞬で人の心をつかむ作品の核にあるのは手描きの線によるグラフィック。

「父もグラフィックデザイナーなんです。小さい時から身の周りにあったモノが、僕のデザインの原点かもしれません」

高校の時は美しい色彩構成やタイポグラフィーで知られるデザイナー、マックス・フーバーに憧れたし、日本の民藝も大好き。自ら描いた原画を、盛岡に住む型染め職人のレジェンド、小田中耕一さんの手で型染めポスターにしてもらったこともある。そんな小林さんにとって、いちばんのベースになっているのは資生堂時代に学んだ〝クラフト力〟。

「身体的な動きで考え、手を動かして描く力ですね。資生堂出身のデザイナーに通底しているものだと思います。いわゆる〝資生堂書体〟を学ぶことで身につけた、手で描く線の心地よさや曲線美、間合いのとりかたが、今、作っている図案にも表れているんじゃないでしょうか」

昨年末話題を集めたステッカーの、チャーミングなキャラクターもそう。手描きの曲線による形は、ユーモラスでもあるし〝おいしそう〟でもある。

「そうですね、いつも大切にしているのは〝なんか心地よい〟という感覚なんです。具体的にいうと、感触のよさ。形を手で撫でた時の気持ちよさっていうのかな。ふくよかでやわらかそう、つるつるしてそう、ここはざらっとしてる、みたいな。実際に手を使っているわけじゃないけれど、視覚的に触れて得る心地よさ。受け取る側も、それを“目で触って”気持ちよく感じるのだと思います」

なるほど、触る/体感するコミュニケーションが希薄になりがちな今、「感触」を求めている人は多いだろう。「目で触る心地よさ」にも心惹かれるはず。

「そういう意味でステッカーやチラシなどの紙メディアは、実際の感触でも楽しんでもらえる強みがある。気軽に持ち帰れるし、手元に取っておいて、いつでもどこでも触ることができるから。それにステッカーって〝いっぱい持ってるからあげる〟みたいなアイテムだとも思うので、誰かと共有するのも楽しい」

つるんとなめらかなその手触りは、「紙があればだいたいのことは大丈夫」と話すほど、紙好きな小林さんならでは。

「ちなみに、今後トライしたいのも感触の領域。絵本や積み木などの立体を作りたいんです。これまで〝平面として美しい形〟を描き続けてきたスキルで、立体を表現してみたい。大人も子どもも垣根なく、手で触れられる形を使って会話できるようなものを思い描いてます」

さて、こうして次々と目標を立てハイペースで制作を続ける小林さんだが、モチベーションはどう保っているのだろう。

「あれこれ考えちゃうと先へ進めない性質なので、すごくいい仕事ができても失敗しても、あまり浸らないようにしています。忘却力っていうんでしょうか」

と笑いながら、〝あ、そうだ〟と思い出したように付け加えた。

「ステッカーには、ある種のゆるさも意図的に取り入れているんです。四角いスペースにおさめるために本来の形をゆがめちゃってる花や野菜とか、明らかに目の位置が間違ってるんだけど気にしてないふうの魚とか。僕、〝都合に流されることによる心地よさ〟みたいな感覚がわりと好きで。今ってきちんとしようとし過ぎている大人が多いから、たまにはナンセンスなものに触れて、肩の力を抜いてほしいなあって思いますね」

小林一毅 こばやし・いっき

1992年滋賀県生まれ。多摩美術大学を卒業後、資生堂を経て2019年に独立。16年東京TDC賞、19年JAGDA新人賞、日本パッケージデザイン大賞銀賞を受賞。Instagram→ @kobayashi.ikki

Photo: Keisuke Fukamizu Text&Edit: Masae Wako

GINZA2021年3月号掲載

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