皆さんはコップのフチ子というセンセーションを覚えているだろうか。それは約5年前。私はまだ一般企業のオフィスで働いていた。ベージュ色のヒールを履き、綺麗に決めたOLお姉さん達も、揃いに揃って卓上カレンダーのフチ、卓上加湿器(綺麗なOLにはマスト)のフチ、PCのフチ、などなど。皆いたるフチにフチ子を飾っていて、私はPCの上に共有で置かれているティッシュを取るたびに服に引っ掛けて落として、その度に謝っていたことを思い出す。フチ子の存在と、それによるコミュニケーションが、まるで、山崎春のパン祭りのシールを集めることのように、オフィスグリコの引き出しを開けるように、ナチュラルな行為となって仕事の場であるはずのオフィスに浸透していたのだ。もはや小さな働き方改革ではないだろうか。フチ子、そんなポーズとってるけど、あんたすごいぞ。
こちらはGINZA200号記念に特別付録として制作された「GINZAのフチ子」。ショッキングピンクのユニフォームに、シルバーのタイツ。オフィスではありえない、なんともGINZAらしいファッションで舞い降りてます。
そんなフチ子が誕生5周年を迎え、フチ子を愛してくれた全ての人々に捧げるという意味を込め、『あなただけのフチ子展』が開催されるとのこと。そんなめでたいタイミングに、前述の私のしょぼいフチ子エピソードではもの足りない…と、今回は以前からフチ子愛を語っていた(たしか)美術作家の臼井良平さんにコンタクトを取り話を聞いた。
臼井良平 Ryohei Usui
≫ 美術作家。1983年静岡生まれ。無人島プロダクションに所属し国内外で多数の彫刻、インスタレーションを発表している。ミニマムで上品な彫刻作品にファン多数。最近驚いたことは伊集院光のラジオで自分の作品が紹介され、友達からめちゃめちゃ連絡が来たこと。instagram: @uuss
フチ子との出会いを教えてください。
確か5年前、作品の制作で大量の発泡スチロールが必要になって、築地に買いに行きました。両手いっぱいの発泡スチロールを持って築地の場外を歩いていたところ、ガチャガチャがたくさん置いてあるコーナーに、見つけてしまったんです、フチ子を。なぜかたくさんあるガチャガチャの中でふと目に留まりました。それで200円を入れて回してみたところ、しょっぱなからシークレットのフチ子が出たんです。かなりテンションが上ったのが思い返されます…。
え!シークレットって、あの、ちょっとエッチな水着のやつですか?すごい!画像でしか見たことない。
そうです。カプセル開けたらあの制服を着ていなかったので少し動揺しました。で、「いきなり煽ってっくるなあ〜」と思いつつ、制服を着ている通常のフチ子がよかったので、そのあと10回くらいガチャガチャしたと思います。
そんなにセンセーショナルな出会いをされていたんですね。運命の女、フチ子。そんなフチ子の魅力とはなんでしょう。
「ありそうでなかった感」でしょうか。世の中にある良いものって、だいたい出て来た時には「ありそうでなかった感」を強く感じるように思います。あとは従来のガチャガチャや食玩と比べて程よく生活に介入してくるところが皆さんから愛される由縁なんではないかと思います。色々な感情を読み取れそうな表情は観音様のようですらありますよね。
インタビュー中、おもむろに喫茶店のシルバープレートの上にフチ子を乗せる臼井さん。「あ、見てください、足が浮いてるのが綺麗に写り込んでいます。」「ほんとですね、なんだか足上げ腹筋トレーニングをしてるみたい」。フチ子あるところに発見あり。どんな大人も遊びたくなってしまう、そんなコケティッシュなフチ子に乾杯。
臼井さんは美術作家で、ご自身の手で色々なオブジェクトを手がけられていますが、もし臼井さんがフチ子の開発を任せられたら、どんなフチ子をつくりたいですか?
クリスタルフチ子を作りたいですね。自分の作品でガラスを扱っているので、透明のものに対しては一家言ありまして。フチ子の存在は広く知られていますし、透明になっても認識できそうですよね。コップのフチに透明のフチ子がぶら下がっているところを想像してみると若干意味不明かもわかりませんが、妙なスペシャル感は出てくるんじゃないかと思います!
今回の「あなただけのフチ子展」で期待したい見所はどこでしょうか。
先行発売商品や限定商品も気になるところですが、やっぱり今までのアーカイブである1500種以上のフチ子がオール展示されるところですかね、圧巻だと思います。更に買えたら嬉しいけど、さすがに買えないかなあ。修学旅行の写真選ぶみたいな感じで、「コレとコレと…」って番号紙に書いて買えたりしたら最高なんですけどね。