中里唯馬さんと中里周子さんが語る「ファッション未来予想図2017」SPECIAL:デザイナーが考える、未来の服のかたち

中里唯馬さんと中里周子さんが語る「ファッション未来予想図2017」SPECIAL:デザイナーが考える、未来の服のかたち

3Dプリンターを使って服を作るデザイナーもいれば、アフリカの技術に目を向けるブランドもある。あなたが抱く“ファッションの未来”とは、果たして? 年始ですもの、たくさんの夢を描いてみましょう。


SPECIAL
デザイナーが考える、未来の服のかたち

ファッションの未来について、作り手はどう考えているのだろう?テクノロジーを駆使しオートクチュールの舞台で世界の注目を浴びる中里唯馬さんと、規格外の発想でファッションとアートの垣根を越える中里周子さん。ファッションを面白くしている2人に語り合ってもらった。

中里唯馬 中里周子

左から
中里唯馬さん
2008年アントワープ王立芸術アカデミー卒業。アーティストの衣装デザインも行う。先シーズンに続き2017 SSも、パリオートクチュール組合により公式ゲストデザイナーに選ばれた。

中里周子さん
2011年立教大学卒業後、ファッションスクール「ここのがっこう」に入学。14年、ファッションコンテスト『ITS』のジュエリー部門でグランプリを獲得。東京藝術大学大学院に在籍中。

 

手段として取り入れる
テクノロジー

中里周子(以下周子) 今日はファッション界で同じくナカザトと名乗ってもいいか、あらためて先輩に許可をもらいにきました!

中里唯馬(以下唯馬) またー(笑)。講評会のゲストで「ここのがっこう」にうかがったとき会って以来ですね。VRを使用してコレクションを発表したりしているとか?

周子 〝体験〟で新しいものが作れないか、と思ったんです。そこで遊覧船に乗って島に行き着く、というストーリーを体感してもらいたくてVRを使いました(2・3)。でも私にとってテクノロジーは、あくまでも手段です。

唯馬 僕は今オートクチュールの舞台で発表していますが、〝ワン オフ〟、つまり「一点物をすべての人に届ける」ということがゴールです。その実現を助けてくれるのがテクノロジーだと思っています。アーティストに衣装を制作するとき、ひとりひとりの体の特徴に合わせると皆すごく喜んでくれる。それを、誰でも手に取れる価格でスピーディに体験できることを目指しているんです。テクノロジーの助けを借りれば、いずれは瞬時に生地の形や色、触感を自分好みに変えられるかもしれない。

服は液体になり
デザインは体内へ!?

周子 ということは、服は液体みたいなものになるのでは!?

唯馬 そうですね。2016-17年秋冬は、結晶や細胞が寄り集まって服になるというイメージで、フィルム製のユニットを連ねていきました(5・6)。これは変幻自在な液体と同じような発想かもしれません。

周子 そうした究極の心地よさにあこがれる一方で、バグというか、完全ではない人間味というか、そういうものが絶対どこかに必要だという気もします。それは、技術の進歩に逆行するような、ユーモアみたいなものかもしれないのですが……。

唯馬 以前、3Dプリンターの出力時に、思わぬ形でエイリアンのような腕が出てきてしまったことがあります(4の下)。そういう不完全性に思わず親しみを覚えてしまうということはあるかもしれませんね。

周子 もしも機械が完全にひとりひとりに合う服を作れるとしたら、デザインはどうなるんでしょう。

唯馬 僕は、どんなに服が進化しても、デザイナーという存在は必要だと思っているんです。テクノロジーによってオートクチュールが身近になれば、デザイナーは、髪質や好みに合わせて似合う髪形にしてくれる美容師のような存在になっていくのでは?

周子 それは面白い!

唯馬 そして、デザイナーの仕事に体のデザインも加わってくると思うんです。そういう未来を想像して、パリコレではドレスの下に3Dプリンター製の腕(5)をつけました。

周子 人の体はどうなるんでしょうね。ツノをつけるとか……。

唯馬 血管をデザインできるようになるとか。皮膚を透明にして中の筋肉を見せるとか……。

周子 光ったりもするかも!?

唯馬 そうかもね。いろんなことが可能になっても、着飾りたい、という意識は消えないんじゃないかと思っているんですよ。消えないでほしい、という願いでもあります。

周子 自分じゃないものを着飾らせることも面白いと思って。そのうち、持ち物やペット、さらには、他人を着飾らせることが〝私のファッション〟になるかもしれませんよ!

自由さが
ファッションを変える!?

唯馬 周子さんが考える未来の服はどんなものなの?

周子 服自体というよりも、服との出会いをどう演出するかを考えています。出会う瞬間が特別であればあるほど、その作品は大切にしてもらえるので。だから、決められた期間や場所でショーや展示会を行うよりは、私が作ったものに偶然出会ってほしい。今は、「リゾート」という概念をより体感してもらうために、日本のリゾート地でコレクションを発表することを密かに考えているんです。

唯馬 ファッション業界は転換期だといわれていますが、周子さんのような自由さは大切なんじゃないかな。まわりが停滞感を感じているときこそルールを突き抜けるインパクトは大きいので。

周子 光栄です! 私が生み出すものが皆のトラウマになれば、と思っています。良いとか悪いとか判断できないものに出会ったときの、ぞっとする気持ちが大事なんじゃないかなと……。唯馬さんの展望はどんなものですか?

唯馬 僕は、オートクチュールをマスにするというヴィジョンに向かって、これからもヴァージョンアップしていきたい。互いに道なき道を行き、未来を切り拓いていきましょう!

NORIKONAKAZATO

『ITS』での受賞作品

1: 『ITS』での受賞作品。「意識的に日本の幕の内弁当のような美学を取り入れつつ、ぬけ感を出したかったんです。たとえば小さな般若を“デコって”キッチュさを表現したりしています」

Photo: Monika Mogi

リゾートコレクション「海の幸」

リゾートコレクション「海の幸」

2・3: 2015年11月に発表されたリゾートコレクション「海の幸」。VR技術のラボラトリー「Psychic VR Lab」の協力を得て、双眼鏡に見立てたデバイスを装着すると「島」を体験できるインスタレーションを行った。

Photo: Kenta Cobayashi
製作: Psychic VR Lab

 

YUIMA NAKAZATO

3Dプリンターで作成した腕

4: 未来のオートクチュールは体をもデザインする、という思いで3Dプリンターで制作した腕。ドレスの袖から垂らした。下は「エイリアンのようになった」腕。オフィスに大事に飾ってある。

パリコレでの作品 パリコレでの作品

5・6: 7月にパリコレで発表されたコレクション。アイスランドの氷河やオーロラに着想を得た。四角形のフィルムに手作業で細かなカットを入れて、折り紙のように折り畳んだユニットを連ねている。

Photo: Shoji Fujii

Text&Edit: Itoi Kuriyama, Shunta Ishigami

GINZA2017年1月号掲載

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