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『メインストリーム』ジア・コッポラ監督にインタビュー。「YouTuberやインフルエンサーの天国と地獄を描きたいと思った」

『メインストリーム』ジア・コッポラ監督にインタビュー。「YouTuberやインフルエンサーの天国と地獄を描きたいと思った」

Courtesy of Tori Time


YouTubeに映像をアップし、自分探しを続ける20代の女性フランキー。何者かになりたいと思いつつ、さびれたコメディバーで生計を立て、うだつの上がらない日々を送っていた。ある日、天才的な話術の持ち主・リンクと出会い、そのカリスマ性に魅了され、作家志望のジェイクを誘い、リンクを主役にした動画制作をスタートさせる。「ノーワン・スペシャル(ただの一般人)」と名乗るリンクの破天荒でシニカルな言動を追った映像は、かつてない再生数を稼ぎ、瞬く間に人気YouTuberになる──。『メインストリーム』はYouTuberの狂乱を描いた衝撃作。監督のジア・コッポラにオンラインでインタビューを敢行。映画の舞台裏について聞きました。


──非常に考えさせられる映画でした。SNSで「バズる」ことにより、「ノーワン・スペシャル」が時代の寵児に祭り上げられ、彼は自分の欲望をどんどん肥大化させ暴走していく。承認欲求、デマ、誹謗中傷、ここで描かれていることは日本でも起こっていることです。なぜ、SNSをテーマに映画を撮ろうと?

ある日、エリア・カザン監督の『群衆の中の一つの顔』(1957)という古い映画を観たんです。映画は、地方のラジオ局のキャスターが取材先の留置所で出会った男の歌に魅了され、それをラジオで流したことで、男が瞬くまに全米の人気者になり、彼は手がつけられないほどわがままな存在になっていく。それをいまの時代に置き換えるとラジオではなくSNSだなって。YouTuberやインフルエンサーの天国と地獄を描きたいと思ったんです。

 

──前作『パロアルト・ストーリー』(2013)はティーンエイジャーが主人公で胸がキュンとさせられる青春映画でしたが、そこからずいぶん一変して。

前作とはまったく違う雰囲気のものを作りたかったので、皮肉をこめた作品にしようと思ったんです。

 

──リンクを怪演したアンドリュー・ガーフィールドは「SNS界が生んだ“ジョーカー”のようだ」と評されていますが、まったくその通りだと思いました。『時計じかけのオレンジ』(1971)のアレックスのようでもあって。彼は本作にプロデューサーとして関わり、製作総指揮も務めていますね。

脚本を書いている段階から、ぜひアンドリューにリンクを演じてもらいたいと思っていたんです。彼とは演劇コーチを通じて知り合いましたが、話をするうちに、彼も同じテーマに興味があるとわかって、しかも、いままでとは違う、それこそ“ジョーカー”のような役を演じてみたいと。そこで、脚本にアンドリューのアイデアを取り入れていったんです。彼はすごく知的な人。キャラクターをどう作りあげるのか、どんなメッセージを込めるのか、そういったことについては彼からたくさんアイデアをもらいました。

 

──そんなリンクに翻弄されるフランキーを演じたのがマヤ・ホーク(父はイーサン・ホーク、母はユマ・サーマン。モデルやミュージシャンとしても活躍中)です。マヤを起用した理由はなんでしょう?

私はもともと写真家で、ザック・ポーゼンのキャンペーンでマヤの写真を撮ったのがキッカケでした。そのときすでにフランキー役を探していたんですが、なかなかピンとくる女優さんがいなかった。でも、マヤと仕事をしたときにすぐに意気投合してすごく通じ合えるものがあって。彼女ならフランキーにピッタリだなって。アンドリューと脚本の読み合わせをしてもらって決めました。

 

──そして、フランキーに想いを寄せるジェイクを演じるのはナット・ウルフ。リンクとフランキーが「再生回数」に取り憑かれていくなか、唯一冷静に正気を保っていたのがジェイクでした。

ナットは『パロアルト・ストーリー』にも出演してもらって、それ以来、親しくしているんですが、実はジェイクの役は彼のために書いたんです。「パロアルト」ではワルで病んでいる青年を演じましたが、実際の彼はやさしい青年なので、その通りのキャラを演じてもらおうと思ったんです。

 

──絵文字を挿入したり、iPhoneで撮った映像を使ったり、映画の撮り方自体もSNSを意識されていました。フランキーが吐くシーンでキラキラの絵文字が挿入されているのはTikTokぽいなと。

あれは、インターネットで吐き出してすっきりさせる、という意味も込めて。とにかく、私たちが日々接しているデジタルな世界をいかに映画的にみせるか、現実とインターネットの境界線をいかにあいまいに表現するか、というのを試したくて実験してみたんです。それはすごく楽しい体験で、iPhoneを使ってゲリラ的な撮影もできましたし、こういった表現もいい面がいくつもあるんだなって。

 

──ゲリラ撮影といえば、リンクが素っ裸でハリウッドブルバードを練り歩くシーンは最高でした(笑)。

共同脚本家のトム・スチュワートの案だったんですが、トムはアンドリューの友達でもあるので、「アンドリューなら楽しんでやるはずだ」と(笑)。撮影のチャンスは1回しかなかったんですが、アンドリューもすすんでやってくれて、「めっちゃ楽しかったからもう1回!」って盛り上がって。違う通りで撮影するつもりだったんですが、人が大勢いるハリウッドブルバードで撮れてよかったなって。

 

──着飾った自分をみせるんじゃなく、「リアル・ミー(本当の自分)」をさらけ出せ!とリンクは言い、裸になるわけですが、結局、現実でもネットでも、人は「リアル・ミー」でいることは難しい、ということを象徴するようなシーンだなとも思いました。

自分の欠点とかをすべてさらけ出して裸になるのはすごく勇気がいることで。良いことも悪いことも、あらゆる評価をダイレクトに受けるわけですから、自分自身が強くないとSNSで傷つく危険性があると思います。だから、フォロワーが増えて急に有名になるというのも危険が潜んでいて。瞬間的な満足は得られますけど、それが果たしていいことなのか?と、考えてしまいますよね。

 

──フランキーもYouTubeを始めた頃は、ちょっとだけ「いいね」が増えて、ちょっとだけ有名になれればそれでよかったはずだったのに。

彼女が間違いを犯して学んでいく、そういう旅路を描いているんです。

 

──ところで、ジア監督は、2016年にグッチとのコラボでショートムービーも作られました。ギリシャ神話『オルフェウスとエウリュディケ』をベースにした短編で、幻想的でリリカルでとても素晴らしかった。やはり、ファッションも好きですか?

好きです。服は自分自身を表現してくれるものなので。実は、母がコスチュームデザイナーで、今回の映画でもコスチュームを手掛けてくれているんです。だから、ファッションに興味があるのは血筋かなって。グッチのアレッサンドロ・ミケーレとよく仕事をするんですが、彼は服を作るだけじゃなくて、ストーリーテリングをしているので、そこが共感できるところですね。

 

──ちなみに、映画を撮るのも血筋ですか? お祖父さんはフランシス・フォード・コッポラ、ソフィア・コッポラは叔母という、華麗なる映画一族の一員ですが。

映画のセットで育ったけれど、家は自由主義。これをやりなさいと押しつけられたことは一切なく。自分で表現したいことがあれば、それがクリエイティブなことでも、そうじゃなくても、自由でした。自分が幸せになる方法であれば。今回それがたまたま映画になっただけ。ベースは写真家なので、映画はその延長線上にあると考えているんです。

──次回作の構想はありますか?

 過去やってきたこととはまったく違うジャンルに挑戦したいですね。SFにも興味があるし、ホラーにも興味があるし。あと、ポッドキャストもやってみたいなって。

 

──あ、ポッドキャストは面白そう!ぜひ聴いてみたいです。

ね、面白そう。音だけで物語を伝えることに興味があるんです。

『メインストリーム』

何者かになりたい人々の夢と野望が渦巻く街・ロサンゼルス。たいくつな日々を過ごすフランキーの目前に破天荒な言動を繰り広げる男・リンクが現れ、彼の動画をアップしたことでフランキーの日々は一変する。

監督・脚本:  ジア・コッポラ
出演: アンドリュー・ガーフィールド、マヤ・ホーク、ナット・ウルフ、ジョニー・ノックスヴィルほか

10月8日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー公開予定。

『メインストリーム』公式HP

Profile

Gia Coppola ジア・コッポラ

1987年、ロサンゼルス生まれ。フランシス・フォード・コッポラの孫であり、ソフィア・コッポラの姪。写真家としても活動する傍ら、CMディレクターやミュージックビデオの監督としても活躍。コッポラファミリーの一員として着実にキャリアを重ねている。2015年に映画監督として初の長編作品『パロアルト・ストーリー』(脚本も担当)を発表。本作は第2作目となる。

Text: Izumi Karashima

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