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社会学者・富永京子さんが語る「そばで支える勇気の持ち主こそヒーロー」|時代に愛されるこれからのヒーロー像とは? vol.6

社会学者・富永京子さんが語る「そばで支える勇気の持ち主こそヒーロー」|時代に愛されるこれからのヒーロー像とは? vol.6

気候変動、ジェンダー、BLM、コロナ禍とさまざまな問題に直面している今、ヒーローや人気者のあり方も変わってきているようだ。社会学者・富永京子さんに、これからの時代に求められる人物像を分析してもらった。


壇上に祭り上げられる人よりも
そばで支える勇気の持ち主こそヒーロー

MeToo運動やフラワーデモなど、ここ数年やっと日本でも女性が声を上げるようになってきましたが、依然としてこの国で女性が主張したり世の中に訴えたりするのは、いろいろな面で難しいと思います。たとえば、ある会議の場で私たちはただ意見を述べただけなのに、会のまとめ役の男性から「ただいま、女性の方からお叱りを受けまして」なんて言われる。女性が何か発言しただけで怒っているとか、感情的になっていると捉えられがちです。その時、ある男性の学者が「『お叱りを受けてしまった』などと言うこと自体が、発言者の口を塞ぐような権力的な行為なのではないでしょうか」と言ってくれたのです。その場の空気や立場のヒエラルキーを壊してまでも、女性たちの発言する権利を底上げしてくれているようで、とてもうれしかった。こういう人がヒーローだなと思うのです。

ミレニアル世代やZ世代を中心にここ数年、社会運動をする若者が関心を呼びました。SEALDsやグレタ・トゥーンベリさんはその代表例でしょう。若い活動家をマスコミがチヤホヤするという図式はずっとありましたが、誰かをヒーローに祭り上げることの怖さがあるなと強く思います。香港の民主活動家、周庭さんの件ではそれを痛いほど思い知らされました。若者を無責任にヒーロー視しておいて年長者たちは一体何をしたいのかなといつも思います。社会に対して責任があるのは若者もお年寄りも同じはずなのに。

日本は特に社会運動に冷たい国です。社会運動を当たり前の権利として認めるのではなく、過剰に持ち上げ特別扱いするというのも、つまりは冷ややかな社会であることの表れと言えるかもしれません。でも本来、誰もが何らかの形のアクティビストであるはずです。だから、たった1人の誰かをヒーローとして壇上に上げるのではなく、声を上げた人のそばにいて、自分も同じ目に遭ったよと寄り添い、支えていく勇気がある人こそヒーローだと感じます。社会運動論ではそれを「良心的構成員」と言います。誰かをヒーロー視することは、その人に過重に負担を強いる危険性もあるわけです。だから、サポートする人が増えればいい。ヒーローと呼ばれる人のそばにいて支える人もまたヒーローだと思えるのです。これからの時代、そんな新しい〝並走タイプの人〟が、身のまわりにたくさん増えるといいなと思います。

富永京子 とみなが・きょうこ

社会学者。1986年生まれ。社会学者。東京大学大学院人文社会系研究科修士・博士課程修了。立命館大学産業社会学部准教授。専門は社会運動論。著書に『みんなの「わがまま」入門』。

Text&Edit: Mari Matsubara

GINZA2021年3月号掲載

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