【INTERVIEW】加藤一二三:WHAT’S THE BEST WAY FOR LIFE? – 人生における“最良の一手”とは?

【INTERVIEW】加藤一二三:WHAT’S THE BEST WAY FOR LIFE? – 人生における“最良の一手”とは?

このところ、テレビで見ない日はないくらい人気者になった〝ひふみん〟こと、加藤一二三さん。毎日、お忙しいでしょう?

「先日は名古屋でイベントに出たんですけども、名古屋駅で100名くらいの人たちに囲まれまして、駅員が整理にやってきました。新記録の人数です(ニッコリ)」

やっぱり記録にこだわる! ところで、〝ひふみん〟という愛称、ご自分ではどう思ってます?

「10年くらい前から言われはじめて、最初は何のことだろうと思ってましたけども、最近そのことで非常に感激したことがありました。皇太子殿下が天童の将棋資料館にいらっしゃったとき、私のポスターを見て『ひふみんがいますね』とおっしゃったらしいんですね。新聞で読んだんですけども、たいへん感激しました」

いつもネクタイを長く結んでいますが、これにはどんなこだわりが?

「ネクタイを長くしたときに、たまたま気分よく対局できたんですよ。それからネクタイを長くするのが習慣になったんですね。でも『アウト×デラックス』の収録で、たまに気分を変えてネクタイを普通に締めていくことがあるんですけど、そうするとすぐマツコ・デラックスさんから『ひふみん、今日は短い!』と言われるんです。それでまた長くしてしまうんですね(笑)」

敬虔なクリスチャンとしても知られていますが、洗礼を受けたのは大人になってからですよね。どうしてクリスチャンに?

「もともとクラシック音楽が好きでしたし、文学も翻訳ものが好きで、ゲーテの『ファウスト』やドストエフスキーなんかを読んでいたんですけども、そういった小説には必ずキリスト教の話が出てくるんですね。それもあるんですけど、もうひとつ大きな理由としては、24歳の頃に大山(康晴)名人と升田(幸三)名人と戦ってまして、両名人に完全に負かされることが続いたんです。それまではそういう経験はなかったんですよ。そのときに、はたと思ったんです。『将棋には〝最強の一手〟を指して勝つ世界がある。それだったら、人生においても絶対に幸せになれる〝最良の生き方〟があるに違いない』と。私にとっては、それがキリスト教だったわけです。いい加減な気持ちで将棋を指していたら、そういう心境にはならなかったはずです。プロとして一生懸命に指していたから、その考えに至ったんだと思います」

信仰で将棋の指し方も変わりましたか?

「人間はみんな一生懸命に生きているけれども、いくら努力してもどこかで限界がありますよね。その限界を、祈りによって打開できると思ってます。自分の力が8としたら、祈りによって10になる。私は77歳で公式戦の場からは引退したんだけども、『仕事が好きならば、あなたはこれからも仕事をしなさい』と……神様の声を聞いたわけじゃありませんけども、そういうメッセージを受けたというふうに思ってます」

今日は「一生懸命に生きる」という言葉が何度も出てきました。いつから生き方を意識するようになったんですか?

「小学生のときです。小学1年の頃、チューリップの花を描いたんですね。そこでチューリップの花を見たときに『素朴で美しい』と思ったんです。その瞬間に『ああ、この世の中は、素朴に考えたほうがいい』ということを悟りました。で、小学2年のとき、今度はグラジオラスの花を描きました。グラジオラスの花を見たときに、グラジオラスの花は入り組んでるんですけど、『この世の中は、深くできている』と悟りました。あとで知ったんですけども、グラジオラスには『剣』『戦いの準備ができた』という花言葉があるんですね。いま考えると運命的な経験だったのではないかと思います」

ひふみんのかわいさの裏には、深い人生観と信仰があった……というか、邪気がまったくない「聖人」だからこそ、こんなに愛されているのかも、と思ったのでした。

加藤一二三

加藤一二三 HIFUMI KATO

かとう・ひふみ≫ 1940年1月1日、福岡県嘉麻市生まれ。14歳7カ月でプロ棋士となり、当時の最年少記録となる。実力制第六代名人のほか、数々のタイトルを獲得。2017年に最高齢現役棋士記録を更新し、同年引退。敬虔なカトリック教徒でもあり、1986年にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世から「聖シルベストロ教皇騎士団勲章」を授与されている。

Photo: Noel Takako
Text: Takahiro Maeda

GINZA2017年10月号掲載

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