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映画『HOKUSAI』柳楽優弥さんにインタビュー。「自身の人生が役と重なってくるような、そういう役者でありたい」

映画『HOKUSAI』柳楽優弥さんにインタビュー。「自身の人生が役と重なってくるような、そういう役者でありたい」

ときにハードボイルドから優男、クールからヘタレ、アクションからコメディまで、とにかく幅広い役どころにも関わらず、どのキャラクターも説得力をもって生ききる。それが俳優・柳楽優弥さんの魅力だ。2020年の30歳を機に、仕事ではあまり見せる機会がなかったプライベートの側面も少しずつ表に出していきたいという心境の変化があったという。

そんな柳楽さんの最新出演作は、画家・葛飾北斎の知られざる素顔を描いた、オリジナルストーリー映画『HOKUSAI』。ほとんど資料が残されていない青年期の北斎が自身のスタイルを確立するまでの青年期を演じた柳楽さんに、本作への思い、そして自分というスタイルを見つけるまでの道のりについて訊いた。


──今回、世界で愛される浮世絵師・葛飾北斎の青年期を演じてみて、どんな魅力を感じましたか?

本作を演じるにあたって、「北斎漫画」などの過去の映像作品を見ていたのですが、北斎は、男らしくてワイルドな人なのかなという印象があったんです。特に、青年期の北斎に関しては本当に謎が多く、情報がなかったので、監督と一緒にこの作品ならではの北斎像を一から組立ていきました。例えば、40代頃に描いていた波はやや硬いタッチなのですが、その後、70代で描いたという「冨嶽三十六景神奈川沖浪裏」に至るまでの変化もそうですし、調べれば調べるほど、あらゆる過程においてものすごく緻密で繊細な作業の積み重ねがあることに気づかされました。北斎が描いた「北斎漫画」もお弟子さんたちに渡すための絵手本として作られていたということを知って、天才と言われる理由はこういうところにあるのだろうなと思いました。

──北斎は画家でありながら、現在でいうデザイナーであり、パフォーマーでもありましたもんね。

若い頃から何の疑いもなく生涯通して絵を描き続けてアーティストとして生きた人ですよね。だからこそ、後に天才と呼ばれるようになる人なのだろうと思いますし、粘り強く続けたもの勝ちなんだなと思いました。

 

──北斎は画号(ペンネーム)を30回以上変えていることでも有名ですが、俳優もいろんな名前を使い分けますよね。役の名前に引っ張られるということもあったりするのでしょうか?

一生のうちに画家としていろんな名前を使っていたというのは、北斎ならではのエピソードですよね。僕自身意識したことはなかったのですが、確かに俳優もいろんな名前を使い分けてますが、自分好みの役名のときには、すごくテンションあがります。もしかすると北斎も「この名前、ふざけたわりに絵としっくりくるな」みたいな感覚があったかもしれません(笑)。

 

──春画を描くときに使ったという「鉄棒ぬらぬら」だったり、最後の画号「画狂老人卍」だったり、北斎はユーモアを感じさせるネーミングセンスでも有名ですよね。

いいですよね(笑)。ふざけながらも、反逆精神が垣間見られるようなユーモアセンスがある人だったんでしょうね。僕が演じた青年期も情熱系でおもしろい一面もあるキャラクターだなと思いました。でもおもしろいだけではなく、ちゃんとそこにいろいろな含みというか、メッセージを持っている人物だと思うんです。

 

──北斎は阿部寛さん演じる、江戸出版界の名プロデューサーである蔦屋重三郎に焚きつけられ、才能を開花させます。これまで柳楽さんが焚きつけられた、という人物との出会いについて聞かせていただけますか

やっぱり、蜷川幸雄さんですね。特に『海辺のカフカ』(14)は初舞台だったので、焚きつけられたというか、かなり手厳しくご指導いただきました(笑)。今となっては笑えるエピソードでもありますが、当時はそんな余裕も無かったので、楽屋で心を落ち着かせるために瞑想音楽をかけてリラックスするようにしていたほどでした。20代前後は特に、自身にとって刺激的な作品やそういう人たちとの出会いがいくつもありました。

 

──そうした出会いのなかで、北斎が波をとらえたように、ご自身の役者としてのスタイルをとらえた!という瞬間はあったのでしょうか。

いまだに自分のスタイルを持ってるとは思っていないのですが、いろいろな作品に取り組ませていただくなかで、見てくれた人たちによって形づくられていくものなのではないかと思っています。こうありたいというイメージはあまり持っていなくて、やってみたいことには常にチャレンジしています。

──晩年の北斎を演じた舞踊家でもある田中泯さん、俳優の阿部寛さんなどの先輩との共演はいかがでしたか?

尊敬する大先輩ばかりの現場で、演じさせていただけるということが楽しかったですし、現場での様子や振る舞い方なども学ばせていただくことが多かったです。泯さんはパワフルでかっこいい方でしたし、阿部さんの作品は好きでたくさん観ていたこともあり、憧れの方たちとご一緒することのできたありがたい現場でした。また、2020年は、俳優という仕事をするうえで私生活の充実は大事だなと強く感じた年でした。コロナの影響によって、計画されていた仕事が強制的に中止になったため、普段のインプット、アウトプットも大切にしたいという思いや、自身の価値観の変化がありました。

──2020年は、30歳を記念したパーソナルブック『やぎら本』(発行:SDP)も出版、今まで以上にプライベートな素顔を出されていたのも印象的でした。

本当は、素の部分も出していけるのが理想なんです。僕の場合、デビュー作『誰も知らない』のときはまだ演技についてよくわからない状態だったので、役づくり以前の自分自身の持っているものがキャスティングされた理由だったと思っていたんです。でも、そのことが自分でもまだよくわかっていなかった20代前半は、いろいろな作品やキャラクターの役づくりに挑戦してみたりもしたのですが、そういうことではなく、もっと自分らしさを追求していこうと思ったんです。

柳楽優弥

 

──その結果、よりパーソナルな部分にフォーカスしていったんですね

演じている時の僕だけではなく、もう少し普段の僕を出していくことも必要なのではないかと思ったんです。自分自身とは全くの正反対の役柄を演じる機会もある中で、役柄のイメージが先行して、普段通りに話しているのに、「嘘じゃないの?」と見られてしまうこともあるんです。それならば少しずつ素の部分も出していこうかなと思っています(笑)。

 

──柳楽さんは、これからどんなふうに年を重ねていきたいと考えていますか?

佇まいや醸し出す雰囲気のある人はかっこいいと思いますし、阿部さんや泯さんのように、自分が好きだと思えることをしっかりと続けられる人に僕もなりたいと思います。年齢を重ねるほど力強さが増していくというか、自身の人生が役柄と重なっていくような、そういう役者でいられたらいいなと思います。

 

──最後に、私生活を充実させるために最近していることがあれば、教えてください。

最近は、ピアノを弾くことですね。坂本龍一さんの曲がとても好きです。ピアノを練習したり、坂本龍一さんのライブ動画をYouTubeでよく見ています。あとは船舶免許を取ったので、釣りにも行っています。去年から少しずつ自分にとって心地いいことを見つけてやり始めている感じです。

『HOKUSAI』

映画『HOKUSAI』posuta- ポスター

江戸時代の天才絵師、葛飾北斎。ゴッホ、モネなど西洋の画家に刺激を与え、今なお工芸、彫刻、音楽、建築、ファッション、デザインなどあらゆるジャンルで世界に影響を及ぼし続けている。若き日の資料がほとんど残されていない北斎の怒涛の生涯が、170年の時を経てこのたび映画化された。自分の道を貫き、ひたすら絵を描き続けた北斎を突き動かしていたものとは──

監督:  橋本一
企画・脚本: 河原れん
出演: 柳楽優弥、田中泯、阿部寛、永山瑛太、玉木宏、青木崇高、瀧本美織、津田寛治ほか

配給:S・D・P
5月28日(金)より全国順次公開
© 2020 HOKUSAI MOVIE

公式HPはこちら

Profile

柳楽 優弥 Yuya Yagira

1990年生まれ、東京都出身。2004年、初主演映画『誰も知らない』で、第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を日本人初、かつ史上最年少で受賞。近年の出演作に映画『ディストラクション・ベイビーズ』『銀魂』シリーズ、『散り椿』『夜明け』『泣くな赤鬼』『ザ・ファブル』など。待機作に映画『太陽の子』(8月6日公開)、ドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」がある。2021年冬、W主演作「浅草キッド」がNetflixで全世界同時配信予定。

Photo:Kaori Oouchi Stylist: Nagase Tetsuro (UM) Hair&Makeup:MOTOKO SUGA Text :Tomoko Ogawa

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