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ドラマ『超サイテーなスージーの日常』脚本×主演対談。「モテ服着たり親が喜ぶ仕事を選ぶうちは“自分”が分からなかった」

ドラマ『超サイテーなスージーの日常』脚本×主演対談。「モテ服着たり親が喜ぶ仕事を選ぶうちは“自分”が分からなかった」

赤裸々なプライベート写真が流出してしまった女優を主人公に描く、イギリス発のドラマ『超サイテーなスージーの日常』。2020年にスタートするや、30代女性のホンネ満載の物語が一般視聴者のみならず、ジョージ・クルーニーやジョディ・カマーらセレブをも虜にし、シーズン2の製作が決まった話題作です。二人揃って製作総指揮も務める、脚本のルーシー・プレブルと主演のビリー・パイパーに、作品を通して伝えたかった想いを聞きました。


──お二人の出会いについて教えてください。

ルーシー: BBCの社員食堂で会いました。その場で、最初に主演・脚本コンビとして組んだドラマ『Secret Diary of a Call Girl(原題)』(07〜11)について打ち合わせしたんですが、ビリーの頭のよさや率直な物言いに感動して、嬉しくなったのが忘れられません。

ビリー: ありきたりなドラマは作りたくないという思いが、お互いに共通していたんです。『Secret Diary of a Call Girl』は、『超サイテーなスージーの日常』の元になった作品で。20代後半〜30代前半の女性が経験する、人生の猛烈な変化が描かれていました。今思えばあの頃、私たちは毎日のように話すことで、不安を解消し合っていた気がします。

ルーシー: 当時、私たちの人生にはお互いにさまざまなことがありました。これまであまり話題にしてこなかったのですが、5,6年前にビリーがふと「あの頃のことをドラマにできるのでは?」と言い出したんです。二人で語り合ってきたことや、面白いと思ったことをテーマに脚本を書くべきだと。

ビリー: 最初は女性同士の友情を主軸に置いたドラマとして企画をスタートさせましたが、最終的にはまったく違うものになりました。

ルーシー: ドラマとして成立させるために、より深いアイデアが必要だったから。「ハッキングによってプライベートをさらされた一人の女性の物語」というアイデアにたどり着いたことで、クリアで強力で現代的なプリズムを通して、私たち自身が観たいものすべてを表現できると思いました。

 

──ビリーさんが演じた主人公のスージーはどんな女性ですか?

ルーシー: 15歳で一躍国民的スターになり、現在も俳優としてゾンビドラマに出演するなどしています。ただし、残念ながら脇役止まりです。

ビリー: 仕事の激減期に差し掛かっている、落ち目の役者なんです。彼女は自分が何者か分かっていないんだと思います。それは子どもの頃からずっと、世間から型にはまったイメージを押し付けられてきたから。感受性が強く、スキだらけで繊細な女性です。

 

──スージーが元ティーンスターという設定にした理由とは?

ルーシー: それには私自身の経験が影響していて。20代までは、男性ウケがいい服を着たり、両親が喜ぶような仕事を選んだりしていたんですが、30代になって初めて、それだと自分の人生に責任を負っていないと気付いたんです。この経験を突き詰めて、幼い頃からメディアに求められるがまま振る舞った結果、常に問題を抱え、やがて人々の興味の対象から外れていくスージーというキャラクターを編み出しました。

ビリー: 年齢を重ねるにつれて、女性の人生から何が失われていくかを描いています。

 

──ビリーさんに、スージーとの共通点はありますか?

ビリー: これは自伝的な作品ではなく、私はスージーのようにプライベート写真が流出したことはないです。ただ、俳優という職業には騒動が付きものですし、30代女性としての自分の思いも物語に反映されています。このドラマは、誰にとっても無関係ではありません。「誰かの正体を暴く」というコンセプトは、現代ではより身近なものだからです。

ルーシー: セレブの世界を“楽しくきらびやか”に見せるのではなく、真実を伝えることにしました。示唆に富んでいて、それでいてダークな真実です。ここ最近で女性セレブが世間の目にさらされた例としては、ブリトニー・スピアーズの精神的なダメージ、リリー・アレン、シャルロット・チャーチ、ジェニファー・ローレンスのプライベート写真の流出などがあって。一時的に世間を賑わせても、その後の顛末や彼女たち自身の思いを耳にする機会はありません。でも、そこにこそ、私は興味がありました。だから今回は、スージーの気持ちの変遷や、騒動がどうその後に影響を及ぼすのかを描いています。彼女は30代になるまで向き合ってこなかった、自分自身を見つめ直すチャンスを得るんです。

 

──スージーと、大学教授の夫コブの結婚生活についても教えてください。

ルーシー: かなり不安定でどうにか関係を保っている状態ですが、どの夫婦にもありうる話です。私の親世代はパートナーシップについて昔ながらの家父長制的な考え方を持っていますし、下の世代はルールに縛られない心地よさを知っていて、関係性は移ろいゆくものだという考え方をします。私たち二人はちょうどその狭間の世代(※ルーシーは1981年で、ビリーは1982年生まれ)。スージーは妻になることを自ら選んだ一方で、表現が難しいんですが、どこか世間のお手本としてそう仕向けられた感じもあって。でも、耳が不自由な息子フランクが夫婦をつなぐ役割を果たしています。

ビリー: あとは、結婚生活におけるお金のことにも触れています。つまり、女性が男性より稼いでいる場合についてです。

ルーシー: スージーが経済的に家計を支えているので、ハッキングが家庭に与える影響は大きいんです。でもコブは、スージーの仕事をくだらないと捉えている節があります。

 

──ドラマはハッキングが起きるエピソード1から、回を重ねるごとにスージーのトラウマのレベルを8段階でたどっていく構成になっていますよね。

ルーシー: エピソード1は「一体何が起こったのか?」「犯人は誰なのか?」といった、ホラー映画のスタイルで幕を開けます。実は当初、ホラー演出はつまらないアイデアだと考えていました。ハッキングそのものではなく、それがスージーの生活に与えるインパクトの方に関心があったからです。そこでテーマがブレないようにするために各エピソードを1話完結型にして、それぞれにトーンを変え、映画的なスタイルで作ることにして。「ショック」「拒絶」「恐怖」といった各話のテーマを考えるうちに、恐怖を描くなら、ホラー映画のように撮影することも効果的かもしれないと最終的に思い至りました。

ルーシー: 全体的にストレスフルです。どの感情にもストレスが付きまとっているような雰囲気を出したかったから。

 

──ジョージー・バンクス=デイヴィスに監督を依頼した決め手とは?

ビリー: ジェンダーがどうこうというより、このドラマのメガホンを取るのにふさわしい監督を探していて。その終盤でようやくジョージーに出会いました。この仕事を引き受けるのは、難しい決断だったかもしれません。何しろ私たちはクリエイティブ面で強固な意見を持っていて、ごくありふれた作品にしたくないという思いで頭の中がいっぱいでしたから。抽象的で変わったクリエイションに対応できる監督を求めていたんですが、ジョージーは理想どおりの人でした。

ルーシー: 彼女は短編映画やCM出身で。それはつまり、ベテランのドラマ監督とは違う独特なトーンで、オリジナリティある作品を作り出す経験が豊富だということです。今思えば、候補にしていたのは全員、野心的で過激で、一風変わった監督たちでした。

ビリー: それってまるで私たちのことみたい!

ルーシー: お互い仕切り屋だからね(笑)。

 

──ダニエル・イングスをコブ役に、またレイラ・ファーザドをスージーの親友兼マネージャーのナオミ役に起用した理由をそれぞれ知りたいです。

ルーシー: ダンの資料映像を観た瞬間、「この人だ」と思いました。怒りを抑え込んでいる演技にリアルな説得力があり、わざとらしさをまったく感じなかったんです。

ビリー: 視聴者がコブに好意を抱いてほしいとは思っていませんでしたし、むしろその逆でした。虚栄心が透けて見えるような役者は面白くないですが、ダンはそういうこともなく、彼自身の中にある激しい怒りをカメラの前でシェアしてくれたんです。

ルーシー: 私たちが会った俳優の多くは、コブに人の好さや哀れさを見つけ出そうとしていて。ご時世柄、男性にはヒール役を演じることへの恐怖心があります。だからこそ、バディ役やナイスガイ役をこぞって演じるわけです。でもダンは、結婚生活に悩むあまり激怒しているコブを思いきり演じつつ、ときにはブラックユーモアを交えるなど、役をしっかり自分のものにしていました。

ビリー: ダンの後でレイラに出会いました。とてもドライな性格で、私たちとしては大満足でした。スージーと正反対で、精神的に安定していて意志が固いナオミ役にぴったりだと思ったんです。

ルーシー: ナオミと私にも共通点がたくさんあります。彼女にはどこか支配欲があり、知的好奇心も高いから。

 

──最後に、お気に入りのシーンはどこでしょうか?

ルーシー: エピソード2で、スージーはコミコンのQ&Aイベントに登壇します。そのシーンのために美術部が、スージーが過去に出演したという設定の架空のドラマ『Quo Vadis』のポスターをデザインしてくれて。さらに、役衣装やウィッグまで用意してくれたんです。SFファンなので、撮影現場では「夢が叶った!」と思いました。

『超サイテーなスージーの日常』 ルーシー・プレブル ビリー・パイパー インタビュー

ビリー: 私はエピソード1の最後に、スージーが道路で歌を歌いながらダンスするシーン。変わり者のスージーが織りなすドラマの始まりの瞬間を、あのダンスを通じて表現することができてハッピーでした。まるで名作ミュージカル映画『オリバー!』(68)のワンシーンのようだったなと思います(笑)。

 

『超サイテーなスージーの日常』
(シーズン1・全8話)

『超サイテーなスージーの日常』 ルーシー・プレブル ビリー・パイパー インタビュー

かつて15歳でオーディション番組に出演し、国民的スターになったスージー。俳優としてキャリアを積み30代半ばになった今は、夫と一人息子と3人で、ロンドン郊外で田舎暮らしをしている。そんなある日、久しぶりに大きな仕事の話があった矢先に彼女のスマホがハッキングされ、不倫相手と撮った赤裸々な写真がネット上に拡散されてしまい……。

脚本・製作総指揮: ルーシー・プレブル(『キング・オブ・メディア』)
主演・製作総指揮: ビリー・パイパー(『ドクター・フー』)
監督: ジョージー・バンクス=デイヴィス、アンソニー・ニールソン
出演: レイラ・ファーザド、 ダニエル・イングス(『恋愛後遺症』)、ナサニエル・マルテッロ=ホワイト(『コラテラル 真実の行方』) ほか

Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX」にて独占配信中。毎週月曜1話ずつ更新
© 2020 Sky UK Limited. All Rights Reserved.

公式HPはこちら

ルーシー・プレブル Lucy Prebble

1981年生まれ、イギリス出身の脚本家。舞台からそのキャリアをスタートさせ、2007〜2011年放送のドラマ『Secret Diary of a Call Girl』でテレビ界にも進出。2018年から手掛けているドラマ『キング・オブ・メディア』では、エミー賞作品賞や脚本賞をはじめ多数の賞を受賞し、シーズン4の製作がすでに決定している。

ビリー・パイパー Billie Piper

1982年生まれ、イギリス出身の俳優。1998年に15歳でポップ歌手としてデビューし、デビューシングルがUKチャート第1位の最年少記録を樹立。その後俳優に転向し、イギリスの最長寿SFドラマ『ドクター・フー』最新シリーズ(05〜)のヒロイン、ローズ役で俳優としても一躍人気者に。舞台でも活躍し、イギリスに存在する舞台関連の賞レース6つすべてで主演女優賞を獲得した唯一の人物である。本作では英国アカデミー賞(BAFTA)主演女優賞にノミネートされるなど、感情の変遷を表す演技が高く評価された。

Text&Edit: Milli Kawaguchi

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