6人のサムライのお仕事道-06 寺田克也さんが特別である理由。「人と違うものを描き出そうと 小さな火を灯してきた」

6人のサムライのお仕事道-06 寺田克也さんが特別である理由。「人と違うものを描き出そうと 小さな火を灯してきた」

何かを極めた人たちにはきっとスペシャルな経験や方法論、 意識の持ち方がある。そんな仕事の“礎”は迷える子羊、 働くギンザガールのポラリスとなり照らしてくれるはず。 いぶし銀に光るサムライ6人に聞いた、彼らが特別である理由。


 

「人と違うものを描き出そうと 小さな火を灯してきた」

漫画家/イラストレーター
寺田克也 さん

 

取材前、旧知の仲だという編集長に聞いた寺田克也さんの人物像は「とにっかくひたすら手を動かしている人」。ご本人にそう伝えると「絵を描くことは7割フィジカル。アスリートが日々エクササイズするみたいに〝ラクガキ〟してアップするんです。それか……ただ暇だったからですかね」と笑ってくれた。

でもその落書き、素人目には作品に見える完成度。「気持ちを楽にするひとつの方法なんですよ。〝ラクガキ〟って呼ぶと重たくないじゃないですか。仕事よりさぼってる時の絵の方が良かったりするんですよねぇ」と。こういう〝心構え〟がいかにも寺田さんらしい。

「絵を描いて生きていたい」という少年時代の夢を叶えたのだが「街の看板屋でもよかったワケですから僕は運がいいんです。アーティスト肌なら自分の中の何かを表現したいという欲求がある。でも僕にはテーマがなくて、絵にすることが世間を見る、そして知る手段だった。この世にはない、フィクションの世界を形にしていく。その仕上がったモノが大切なのであって、自分自身は何かの出力装置であればいいと思っているんです」。だがその〝好運〟も日々見逃さずにいられるか否かは意外と難しい。無い物ねだりの私たちには少し耳が痛い。

とはいえ、世界が評価するに至ったのは単にラッキーだったからではない。「若い頃は意味なく自信を持っていたりするから、ページの隅に置くような小さなカットさえ上手くできず挫折を味わうことは多々ありました。〝捨てカット〟の歴史を変えるほどの腕がないなら、『よし、もらえる仕事は全部やろう』と10年。すると周りが認める〝得意分野〟なるものができて、『バーチャファイター2』を担当することに。〝なしえたもの〟として人に言えるくらいにはなった。自分の〝名前〟でできるようになったのはやっと30歳くらいかなあ」

ジャンル問わずの下積みがあるから、何事も対応できるし、迎合ではない作品が生まれる。「それはもう親に絵を褒められた幼い頃からね、自分の中ではトロ火が点いているんですよ。都市ガスのね(笑)」と寺田さん。

〝トロ火〟は強い。決して燃え尽きることはなく(なんせ都市ガス!)、煮えたぎりもせずに静かに沸点を保ち続けるのだから。「日々、人とは異なるものを描く」というのが彼のガス代、灯し続ける原動力となっている。「自分は特別ではないんだから、替えがきくようなものではダメなんです。違うものを生み出すという意思を持って制作に向かうことが役に立つ。それはこの道の先人から学んだ知恵です」

「冒険が人を飛躍させるのは分かっている」から、どこかで〝つまずきたい願望〟もあるそうだ。惰性に陥らないよう、あえて高いハードルに向かって自分をプレッシャーに晒す。「口先だけの挑戦ね」と笑いにするが、そうやって死ぬまでうまくなり続けたいのだという。「今日もいいトロ火だなぁって言っていたいですね。でも本当は、火力を大きくもできるんだぞって心の中で嘯きながらね(笑)」

 

CHRONOLOGY

-1981-

上京し阿佐ヶ谷美術専門学校に入学。在学中からイラストの仕事をするようになる

-1994-

『バーチャファイター2』のキャラクターデザインが転機に

-2013-

『寺田克也 ココ10年展』を京都国際マンガミュージアムで開催。最近は毎年LAで個展を開く

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“ラクガキ”にiPad Proを愛用、これは打ち合わせ中に1時間ほどで完成。魔法のように無から生まれる筆運びのトラックバックを見ると感動!


 

【サムライメモ】
かれこれ20年ほどを過ごすという推定築100年のアトリエへ。寺田さんの脳内を疑似体験できる(!?)コレクション山積みのラビリンスでした。

 

寺田克也

てらだ・かつや≫ 1963年、岡山県生まれ。高校時代にメビウスの線に惚れ、イラストレーターを志す。『西遊奇伝 大猿王』(集英社)をはじめ作品多数。

 

Illustration: Toshikazu Hirai Text&Edit: Aiko Ishii

2017年6月号掲載

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