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小山田圭吾が振り返る30年 。「あたらしい」を模索して動く

小山田圭吾が振り返る30年 。「あたらしい」を模索して動く

今年でデビューから30周年を迎える小山田圭吾さん。ソロユニット「コーネリアス」として、今では珍しくなくなった、音楽と映像の融合で表現をはじめた先駆けであり、日本だけでなく海外でも支持される日本人ミュージシャンのひとりでもあります。最近ではテレビ番組『デザインあ』の音楽を担当し、子どもたちを夢中にさせたことも印象的でした。わたしたちに「あたらしい」驚きを与え続けてくれた小山田さんに、30年を振り返ってお話を伺いました。


 

ポップからミニマルまで
幅広い音楽を生み出す

──デビュー30周年おめでとうございます。小山田さんはソロユニット「コーネリアス」において、バンド演奏と映像をシンクロさせたライブを行ったり、言葉を音節にまで分解したかのような歌詞を採用したりと、ずっと「あたらしい」ことに挑戦し続けているイメージがあります。

小山田: どうなんだろう。でもまぁ、あたらしいものに興味はあるかな。自分がつくってる音楽に、自分自身が発見や驚きを求めてるんだよね。今まで聞いたことがない感じのものがつくれた時に喜びを感じるというか。ただポップミュージックがはじまってからの歴史も、もうずいぶん長くなってきてるから、まだ挑戦されていない余白の部分は、ほぼないようなものだけど。でもその中でも、少しでも新鮮な響きをつくってみたいなと思ってこれまでやってきました。

 

──発見や驚きということで言えば、今回リマスター盤が発売される、コーネリアス名義の2作(『The First Question Award』&『Point』)を聴き比べると、改めて、同じアーティストの作品と思えないくらいの振れ幅の大きさですよね。1stアルバム『The First Question Award』はフリッパーズ・ギターの流れを受けているポップさがあり、4thアルバム『Point』は最新作『Mellow Waves』(2017年リリースの6thアルバム)に通じるミニマルさがあります。

小山田: 『The First Question Award』が出たのが1994年で、『Point』は2001年。この7年間の変化は、確かにめまぐるしいかもしれない。ちょうど試行錯誤しながら、自分自身の作風を模索していた頃じゃないかな。『Point』から現在までも20年近くあるのに、ここまでの変化はないね。

 

──ご自身が思う変化というのは?

小山田: 『Point』くらいから、僕独自の音の組み方なんかが見えてきて、サウンドデザインというか、空間と時間という軸の中に、音をどう配置していくかみたいなことを意識して、作品をつくるようになったんですよ。あとは『Point』の1作前、『FANTASMA』(1997年リリースの3rdアルバム)で、映像という表現方法を取り入れたのも大きかった。

 

──『FANTASMA』から『Point』の頃に、コーネリアスの核となる要素ができあがっていったわけですね。そしてその核のひとつが映像だった、と。

小山田: 当時は自分で映像をつくっていたので、いろんな映画のビデオテープを借りてきて、家でコラージュしたりして。で、ライブのステージにVHSデッキを持って行って、自分でビデオをガチャッとセットしてライブをはじめてたりしたんだよ(笑)。結果的にだけど、海外のパフォーマンスでは、歌詞の意味を理解してもらうことが難しいから、曲の世界観やイメージをお客さんに共有するために、映像がすごく役立ったんだよね。

小山田圭吾 インタビュー

 

青春を取り戻した
海外ライブの思い出

──海外でライブをはじめたのも『FANTASMA』の頃から?海外レーベル(米レーベル「マタドール・レコード」)とはじめて契約したのもこのアルバムのリリース後ですよね。

小山田: そうそう。それ以降、海外でのライブパフォーマンスが増えたんだけど、はじめての海外でのライブは、アメリカの小さなライブハウスだったな。この頃の日本でのライブはホールツアーがほとんどで、大きいところでしかやってなくて……しかも直前のライブが武道館だったから、会場の大きさ、お客さんの数、スタッフやバンドメンバーの数、何から何までギャップがすごかったことを、今でも覚えてる(笑)。

 

──武道館の次が小さなライブハウスって、すごい経験……!前にインタビューで読んだのですが、当時は2か月ほどアメリカに行きっぱなしで、ライブハウスを転々としながら、週に4〜5回のペースでライブを続けていたとか。その間で、思い出に残っているエピソードはありますか?

小山田: あるときなんて、ライブハウスに映像を映し出すためのスクリーンが用意されていなくて、仕方なく、客席の横の壁に映したことがあったな……(苦笑)。あと、映像と音を同期するための合図音が、本当はドラムのヘッドフォンにだけ届くはずなのに、ライブ中ずっと、「カッカッカッカッ」て会場に漏れてたこともあったし……。

 

──なんと……!それでどうなりました?

小山田: そういうとき「もうめちゃくちゃだ……」って僕は落ち込むんだけど、ライブ後の道すがら、「最高だったよ!」「かっこよかった!」なんて言われたりして。何がいいのか悪いのか、わけがわかんなかったってことを、すごくよく覚えてる(笑)。

 

──オーディエンスのみなさんは、漏れた音すら「斬新なパフォーマンス!」と思ったのでしょうか(笑)。それは苦い思い出ですか?

小山田: いや、全然。すごく楽しかった思い出。機材トラブルに自分たちで対処しなくちゃいけないっていうだけでも、20代の終わりにようやく青春を取り戻してる感じというか。ハタチそこそこでデビューして以来ずっとプロの世界でやってきて、大勢のスタッフがいて、たとえばローディーの人たちが楽器も全部セッティングしてくれるなんてことも、もう当たり前だったし。それを自分でやるだけで新鮮だった。

 

──海外でライブツアーを行ったことで、何か変わりましたか?

小山田: アメリカで2か月間のツアーをやってた時は、西海岸からスタートして、バンドメンバー全員で、ツアーバスでずっと旅してたんだけど、すごく楽しくて。パフォーマンスだけじゃなくて、移動や食事を含めてみんなで共にすることで、なんていうか、「音楽をやってる!」っていう実感がはじめて持てたんだよね。正直、その頃日本でライブするのは全然好きじゃなかった……けど、この体験で変わったかな。

小山田圭吾 インタビュー

 

詞の意味を限定しない
ボーダーレスな音楽

──コーネリアスは日本だけじゃなく、海外でも支持されていますね。その理由の一つとして、たとえば「あ」という音節だけでも色んな感情を表現するなど、言葉そのものに意味を持たせていない印象があり、それが聴く人の国籍を選ばないのかなという気がしています。

小山田: ただ、言葉に意味を持たせないということは、本当は無理だと思ってるんだよね。たとえば「あ!」だけでも「あ?」だけでも、何らか意味を持つじゃないですか。そうではなくて、意味を限定しないというか、聞き手に委ねて感じてもらうこと。説明して理解してもらうのではなくて、気配を匂わせる方が、よりダイレクトに深く伝わるんじゃないかなとは思ってる。それに、言葉は万能じゃないというか、100%伝わることはないとも思ってるんだよね。たとえ、日本人同士で会話していたとしてもね。

 

──たしかにそうですね。

小山田: だから、作品をつくる時に自分の意図があったとしても、全然違う風に受け取ってもらってもOK。言葉を尽くして説明するよりも、相手が能動的に受け取ってくれるような状況をつくる方が、より感じ取ってもらえるんじゃないかなって思ってる。だから、僕の音楽を聴いてくれる人にとって言葉は関係なくて、日本人でも何人でもいいんだよね。

 

──コーネリアスの音楽は誰にでも開かれているっていうことですね!実は、コーネリアスの音楽には難しくてスノッブなイメージが勝手にあるので、聴く人を選ぶんじゃないかなぁとも思っていました。

小山田: そうかなぁ(笑)。色んな人に聴いてもらいたいんだけどなぁ……。30年間くらい音楽を続けてると、お客さんの年齢層が広くて。特に海外だと、ヒッピーみたいな音楽好きのおじいちゃん、おばあちゃんとかも来てくれるし、子どもや孫を連れて、3世代で来てくれるファンもいたりしてね。色んな国、色んな世代、もちろん性別もそうだけど、色んな人がライブに来てくれることがすごく嬉しいんだけどね。

 

──コーネリアスのライブの楽しみ方って、国によって違ったりするんですか?メキシコでは合唱が起きたと、以前のインタビューで読みましたが。

小山田: そうなんだよね。あれは僕もびっくりしたなぁ。日本語なのにね。それに、音楽のタイプとして合唱するようなものでもないし。もし合唱が起きるとしても、日本語がわかる人たちがライブに来てくれてる、日本の方が可能性はあるはずなのに、不思議だよね。

 

──日本では、コーネリアスのライブで合唱するなんて、想像できないかもしれない……。ノリノリでわかりやすい一体感というよりも、思い思いにその空間を楽しんでる感じがあるから。サイリウムを一斉に振ったり、全員が同じタイミングで拳を突き上げたり、そういう感じでもないですしね(笑)。

小山田: 「みんな一緒に!」みたいなのが、苦手な人たちが来てくれるライブだからね(笑)。まぁでも、ライブの楽しみ方はもちろんそれぞれでよくて、音楽を体験してもらうイメージかな。脳で理解するとかいうことではなくて、ライブ空間で体感してもらえたらいいなと思って、いつもパフォーマンスしてる。

小山田圭吾 インタビュー

 

生演奏とプログラミング
どちらもコーネリアスの魅力

──オーディエンスだけではなくて、小山田さん含めバンドメンバーも、淡々とパフォーマンスしているように見えますけど、実際のところはどうなんでしょう?

小山田: 内心は盛り上がったりしてるんだけど(笑)。4人の演奏がピタッとはまった時とか気持ちいいしね。でも基本的には、「次のセッティングはどうだっけな」とか「ここで水飲んどこうか」とか、色々忙しいんですよ(笑)。4人それぞれが複数のパートを受け持ってるし、演奏も難しくて。どう難しいかというと、「右手で三角描きながら左手で四角を描いてる」ようなイメージ。演奏に集中してるから、淡々と見えるっていうのはあるかも。

 

──なるほど!あの複雑な音楽を、実際に生身の人間が演奏してるんですもんね……。

小山田: だって人間が演奏してる方がより説得力があるし、それだけで楽しめるじゃないですか。ただ、アルバムに録音されてる音楽は、誰も演奏してないんだよね。コンピューターでプログラミングしながらつくったものだから。

 

──アルバムの収録曲自体はプログラミングで緻密につくられていて、ライブではそれを譜面に起こし、みなさんが実際に演奏しているということなんですね。

小山田: そうそう、実はね。そんなことも含めて、ライブもアルバムも両方楽しんでもらえたらいいかな。

小山田圭吾 インタビュー

 

【NEW RELEASE】

『The First Question Award』
1994年発売の1stアルバム、リマスター盤発売!
小山田圭吾 インタビュー
2019.07.31 発売¥2,400+税/WPCL-13066
wmg.jp/cornelius/discography/21081/

 

『Point』
2001年発売の4thアルバム、リマスター盤発売!
小山田圭吾 インタビュー
2019.07.31 発売¥3,700+税/WPZL-31631/2
wmg.jp/cornelius/discography/21080/

 

『Mellow Waves Visuals』
音とともに映像でも世界を魅了するコーネリアスの映像作品集!
小山田圭吾 インタビュー
2019.07.31 発売¥6,500+税/WPXL-90203
wmg.jp/cornelius/discography/21079/

小山田圭吾 おやまだ・けいご

1969年東京都生まれ。89年にフリッパーズ・ギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、93年にCornelius(コーネリアス)として活動開始。98年『FANTASMA』を米マタドール・レコードからリリース。以降、国内外のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。2017年には約11年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Mellow Waves』をリリースし、翌年に全国ツアー「Cornelius Mellow Waves Tour 2018」を行った。また「デザインあ展 in TOKYO」、「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」で音楽ディレクターを務めるなど、活動の幅を年々広げている。
www.cornelius-sound.com

Photo: Kikuko Usuyama Text: Maho Ise   Edit: Milli Kawaguchi

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