【INTERVIEW】宮本浩次:A BASIS OF THE ELEPHANT KASHIMASHI 試行錯誤を繰り返し築いた“エレファントカシマシの基礎

【INTERVIEW】宮本浩次:A BASIS OF  THE ELEPHANT KASHIMASHI  試行錯誤を繰り返し築いた“エレファントカシマシの基礎

今年、デビュー30周年を迎えるエレファントカシマシ。これまで発表してきた260曲以上の中から、30曲を厳選した初のオールタイムベストアルバム『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』を発表する。

選曲したのは、バンドのフロントマンをつとめ、ほとんどの曲の作詞・作曲を手がけた宮本浩次さん。膨大な量の曲の中から、ごく一部を選び出す作業となると、ファンならもちろん、テレビなどで氏のキャラクターを少しでも知っている人なら、自部屋で選曲に悩む宮本さんの姿を想像できる。しかし、「より多くの人が聴いてくれる作品にしたい」という、真摯な心意気から、これまでにない選曲の手段が取られたという。

 

「最初は1人で考えていましたね。その最中に会ったスタッフから『結成30周年、30曲、3000円』という、わかりやすいキーワードをもらって。自分の中ではまったく脈絡を感じない、意味のないことを言ってくれたんだけど、逆に気持ちが楽になって。『なるほど、それでいいのか!』と思ったんです。その後、スタッフのみんなはどう考えているのか知りたくなって、朝10時から始まるレコード会社の会議にも、2回参加しましたね。そうやって曲を選んでいるうちに、あっという間に2カ月経ってしまいました」

 

このベストアルバムは「今宵の月のように」や「悲しみの果て」などおなじみの大ヒット曲を収録した『Mellow & Shout』と、ステージでは必殺の「ガストロンジャ―」や「奴隷天国」などが入った『Roll & Spirit』の2枚組、各15曲に分けられている。

 

「会議に出ている時、もうひとつ出たキーワードが〝エレファントカシマシの基礎を作る〟というものだったんです。最近はフェスに出演することも増え、そこで初めてエレカシを見た人に、もっと興味を持ってもらうような曲。それに近づけて曲を選んでいきましたね」

 

『Mellow & Shout』には、誰でも一度は聴いたことのあるような名曲が多い。しかし、2枚全体を通して気になったのは、デビュー当初のヒリヒリするようなハードな曲、飾り気のない優しい言葉で語りかけてくるようなシンプルな曲が少ない点だ。

宮本浩次 インタビュー

今年の1月、日本武道館でのライヴの最後に『待つ男』(88年『THE ELEPHANT KASHIMA

SHI II』収録)を演奏したんです。発表当初のライヴでは、〝シーン〟と静まり返った客席(注: 当時のライヴ会場では、踊ったり、拍手をすると、ステージから宮本さんに怒られた)を相手に演奏していた曲。しかし、29年の時間をかけ、お客さんも、自分たちも変化したんだと思いますが、今では誰もが拳を振り上げて歌う、ライヴの最後を飾るにふさわしい曲に成長したんです。つまり29年前の『待つ男』と、今の『待つ男』は違うんですよね。当時のオリジナルテイクは、演奏や音響面が、たとえば『今宵の月のように』など、ほかの楽曲と違う。新しいライヴテイクを収録することも考えましたが、〝エレファントカシマシの基礎〟の元、思い切って収録しないことにしました」

 

音楽的な試行錯誤を繰り返しながらの30年。しかし、エレファントカシマシは、前身バンドが中学時代に結成され、高校時代に現在のメンバーになって以来、一度もメンバーチェンジを行っていないバンドだ。あらためて、宮本さんは男同士(バンド)の絆に気が付いたという。

 

「デラックス盤にバンドの年表が入っていて、メンバーの赤ん坊の頃や、デビュー前の秘蔵写真を載せています。中学時代の写真を整理していて、初めて気づいたのがドラムのトミ(冨永義之)の眼差しでした。10メートルも20メートルも深みから、宮本を見ている。YAMAHA池袋店で初めて『おはようこんにちは』(88年発表、3枚目のシングル)のリフを弾いた瞬間、ドラムのフレーズを返してくれた時は驚いたんだけど、50歳になって写真を見ながら振り返り、初めてその理由に気が付いたんですよね。うまいバンドなんてたくさんいるけど、技術じゃない。音楽を作る前に、人間の集団として、それぞれが愛情を持って接することができるかって、やっぱり重要なんです」

 

今年の12月まで、バンドとしては初となる全国47都道府県ツアーが幕をあける。

 

 

「実は昔からずっと回りたかったんですよ。普通のバンドなら、地元で人気が出た後、大都市や小さな町のライヴハウスを巡るようになる。しかし、エレファントカシマシはデビュー当初から真逆だった。いきなり日本武道館3000人限定ライヴとか、客席の電気をつけっぱなしにした渋谷公会堂(それらのライヴ映像は初回限定盤のLIVE HISTORY DVDに収録)とか、そういうライヴをやってきたんです。だから、結成30周年のベストアルバムを発表する今、ようやく全国を回れると思うと、なんだか感慨深いものがありますね」

 

ツアーを目前にして、実は密かな楽しみがあることを教えてくれた。

 

「ここはひとついい旅行鞄を買おうと思って。海外のロードムービーなんか観ていると、車にポーンとトランクを積んで出かけますよね。あれに憧れまして。エルメスの素敵なアンティークトランクを見つけたので、オークションに参加したんですけど、競り負けました(笑)。トランクなら、Yシャツを入れておいてもシワにならないからいいんですよね。それから旅用の衣装も買おうと思ってます。僕は細身の〈MISTER HOLLYWOOD〉のシャツやジャケットが好きで、8年くらい前のジャケットを持っているんだけど、新しいものを買おうと、お店で試着したら、同じサイズでも、現行で売られているものは、少し大きいんですよ。店員さんに聞いたら『今は少し太めに作ってある』ということで。やっぱり時代の流行に合わせて、シルエットも変わっていくそうなんです。確かに、曲だって時代に合わせて変わっていくんだから、洋服だって当然かもしれませんね」

宮本浩次 Hiroji Miyamoto

メジャーデビュー30周年を記念した『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』を3月21日に発表。3月20日大阪城ホール公演の後、4月8日東京・北とぴあ さくらホールから〈30th ANNIVERSARY TOUR 2017 “THE FIGHTING MAN”〉がスタート。www.elephantkashimashi.com

撮影: 髙橋恭司

Text: Katsumi Watanabe

2017年4月号掲載

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