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パリ発リップブランド〈ラ ブーシュ ルージュ〉の創業者ニコラス・ジェルリエがこだわった本当のサステナブル

パリ発リップブランド〈ラ ブーシュ ルージュ〉の創業者ニコラス・ジェルリエがこだわった本当のサステナブル

“サステナブル”は、もはやどの業界においても共通のキーワード。サステナビリティ(持続可能であること)をうたわない商品は売れない、とまで言われるほど、私たちの生活レベルでも聞き慣れた言葉になった感があります。その波はコスメにも波及し、様々なブランドがパッケージを削減したり、リサイクル可能なマテリアルを使うといった試みを実践。そんな中、異彩を放つのがパリ発の〈La Bouche Rouge (ラ ブーシュ ルージュ)〉。何がすごいってこのブランド、一言で言うと、とんでもなくガチで環境に配慮しているんです。その上デザインも色も、ハッとするほど素敵で思わず欲しくなる♡ 昨年11月には伊勢丹新宿店に日本初のショップがオープン。創業者兼クリエイティブディレクターのニコラス・ジェルリエさんに、クリエイションの背景や、プロダクトに込めた想いについて、話を伺いました。


〈ラ ブーシュ ルージュ〉のリップ
カラーリフィル(全21色)各4,600円。ケースは全8色あり各13,500円。

 

「Not only for ourselves, but also for the earth
(私たちだけでなく、地球のために)」

──ブランドを設立した背景について教えてください。

僕ら現代人の暮らしが、いかにプラスティックにまみれているかを実感してきたからです。商品のパッケージに使われているプラスティック類はもちろんのこと、問題なのはマイクロプラスティックと呼ばれる5ミリ以下の微小な粒子。これらは日常的に私たちの体に取り込まれているんです。例えばプラスティック製品をリサイクルする過程に発生するし、身近なところだと、道を歩いているだけで、自動車のタイヤ由来のものを吸い込んだり、化繊素材の服を洗濯機で洗うことにより、他の服や下着に吸着し、結果的に素肌に触れることにも。水道水にだって含まれているんですよ。

最近フランスで発表された研究によると、人は一週間で平均5グラムのマイクロプラスティックをいずれかの方法で体に取り込んでいるそうです。そして化粧品はマイクロプラスティックの宝庫。クレンジング剤などに含まれるスクラブはその代表ですが、アイシャドウやリップなど、ほとんどのプロダクトに配合されているんです。特にリップは、無意識のうちに口に入るため、体に与える影響が大きい。リップにフォーカスしたブランドになった理由はそこにあります。

 

──そうなのですか…⁉️ 日本ではまだあまり聞き慣れないワードなだけに、驚いています。ニコラスさんは、いつ頃からこういった環境への関心を抱くようになったのですか?

自分の子供が産まれて、父親になってからですね。僕はフランス西部のブルターニュ地方で生まれ育ったんです。美しい海岸線が広がる自然に豊かなエリアで、海は子供の頃から生活の一部だったんですよ。でもここ10数年ほどで、かつてはきれいだった海が、目に見えて汚染されてきているんです。引き潮の時に、浜辺に大量のプラスティックゴミが漂着するのを目の当たりにして、これは本当にダメだぞ、と。美しい自然を、次の世代にちゃんと残したいと思ったこと。そして、人としてもっと意義のある人生を送りたいという想いが、ブランド設立の原動力になりました。

ニコラス・ジェルリエさん

──製品の開発に関して、こだわった点や譲れない点は?

極限まで、本当の意味でサステナブルであること。再生可能な素材を使い、プロダクトの製造過程でもマイクロプラスティックを輩出しない方法で作ることです。リフィルは “エコリフィル”素材を独自に開発し、マグネット式で取り外しできるようにしました。リップを作る型はプラスティックではなく金属製を採用し、ケースには、ベジタブルタンニングでなめしたレザーを使っています。

パッケージはもちろん、中身が安全でサステナブルであることも重要です。フォーミュラ(配合)は、専門機関と共同で試行錯誤を繰り返し、最終的に423回、試作品を作った末に、現在のものに行きつきました。マイクロプラスティックはもちろん、パラベンやパラフィン、防腐剤、動物性の油脂などを使わずに、ビビッドな発色を実現しました。

 

──実を言うと、ナチュラル系コスメは発色がイマイチという先入観があったんです。でもこの色合いを見て、その思い込みが覆されました。

専用のマシンを使い、ほぼどんなカラーでも再現できる技術があります。パリの本店ではテーラーメイドも可能で、例えば花や衣類といった自分のお気に入りの色を持ち込んでスキャンし、忠実に再現したオリジナルカラーを作ることができます。名前をつけてアーカイブ化するので、再オーダーも可能。人間の体に優しく、実用的でありながら、クリエイティブで楽しいプロダクトを目指しています。

 

 

「ハンドバッグのように愛されるリップを作りたかった」

──デザインやプレゼンテーションの面で言うと、どんなところがブランドらしさに繋がると思いますか?

サステナブルかつラグジュアリーであること。僕にとってそれは、クラフツマンシップに直結します。決して一過性のものではなく、生活の一部として、長く愛されるオブジェとして作っているんです。レザーのケースはフランスの職人がひとつひとつ手作りしていて、革自体も某ハイブランドと同等のクオリティのものを採用しているんですよ。

 

──個人的にはこのリップをプレゼントで頂いたら、すごく嬉しいと思います。コスメというカテゴリーを超え、まるでアートのような洗練されたデザインですよね。

実は、家族の影響で、子供の頃からアートや骨董品に慣れ親しんできたんです。なかでも祖母は目利きで、日本の美術品のコレクター。幼い頃の僕はすっかり魅せられて、彼女のコレクションを見るために彼女の家に遊びにしょっちゅう遊びに行っていました。

これは誰が書いた絵画だとか、どんな器だとか、そんな話を聞くのが楽しみで、週末や学校が休みの間は泊りがけ。とても早起きな人だったから、僕もそれに合わせて朝5時に起きなければならなくて、ちょっと大変でしたけど(笑)。でも美しいもののバリュー(価値)とか、そこにあるメッセージ性とか、彼女から学んだことが、僕のクリエイティビティの礎となっているのかもしれません。

 

──今でもアートからインスパイアされると感じますか?

もちろん。パリでは『パレ・ド・トーキョー』や『ジュ・ド・ポーム国立美術館』によく行きます。特に後者は、現代アートとフォトグラフィーがミックスされていて見応えがあるし、人も少ないのでのんびり鑑賞することができて、おすすめですよ。東京では『根津美術館』がお気に入り。日本のクラフツマンシップは本当に素晴らしい。日本人には、きっとDNAにものづくりの精神が刻まれているのだと思います。

 

──ヴィーガンという目線で考えると、レザーを使わない選択肢もあるかと思いますが、そのあたりはどのように考えていますか?

僕は何事もバランスが大事だと思っています。革は太古の昔から、人間にとってなくてはならない素材でした。現代においても、大量に消費しなければ、環境に悪影響を及ぼすものではないですし、〈ラ ブーシュ ルージュ〉で使っているレザーは全て、食肉加工過程の副産物として得られるものです。一方で、ヴィーガンの人たちでも手に取りやすい製品開発にも取り組んでいるのも事実。友人でもあるステラ・マッカートニーと作ったヴィーガンレザーのケースはそのひとつ。彼女とは、このトピックについて何度も意見を交わしているんですよ。

 

──〈ドーバー ストリート マーケット〉ともコラボレーションしていると聞きました。

川久保さんからのオーダーは「黒いリップ」。でも一口に黒といっても、彼女の中で色合いやニュアンスのしっかりとしたイメージがあって、最終的に53回プロトタイプを作った末、OKをいただきました。現在のところパリの『ドーバー ストリート マーケット』のみでの取り扱いですが、将来的には日本でも購入できるようにしたいと考えています。

〈ドーバー ストリート マーケット〉とコラボした黒いリップ

「人間の暮らしは土台となる自然、ひいては地球があってのもの。そこに背を向けて、自分だけクリーンで、美しくあろうとしても、真の意味でのクリエイティビティは育まれない」。最後にそう付け加えたニコラスさん。そんな哲学をバックグラウンドに、斬新なコンセプトとデザインで形にしたブランドが〈ラ ブーシュ ルージュ〉なのだ。

地球に優しく!という発想の斜め上を、軽々といってしまうあたりがすごいし、何より純粋に可愛い!長年のリップ難民状態を卒業できる運命の1本に、やっと出会えた気がします。

Nicolas Gerlier

フランスの大手化粧品会社およびアパレル企業でマーケティングを担当。2017年に〈La Bouche Rouge (ラ ブーシュ ルージュ)〉をスタートさせる。現在リップ1本につき100リットルの飲料水を西アフリカの国々のインフラをサポートする慈善団体に寄付。〈ステラ・マッカートニー〉とのコラボレーションアイテムは3/4から伊勢丹新宿店にて取り扱い開始。今後はリップライナーやアイシャドウなども展開する予定。

Instagram: @laboucherougeparis

Text: Hiroko Yabuki  Photo: Wataru Kitao

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