清水尋也さんも出演したKing Gnu『The hole』や平井堅『♯302』などのMVも手がけ、ドラマ性の高いストーリーと美しい映像で注目を集める内山拓也監督。11月には、メガホンを取った中・長編の2本の映画が上映される。封切りを前に、『青い、森』で主演を務めた清水尋也さんと『佐々木、イン、マイマイン』で主演を務めた藤原季節さんが集結。日頃から親交のある3人に、作品の魅力と撮影の思い出を語ってもらいました。
20年代の青春映画『青い、森』『佐々木、イン、マイマイン』が公開に!内山拓也監督を囲んで主演の清水尋也&藤原季節と舞台裏トーク
藤原季節(以下、藤原) 『佐々木、イン、マイマイン』からクランクアップして、1年が経つのに、まだ余韻が残ってる……。
内山拓也(以下、内山) 『佐々木、イン、マイマイン』は作品が完成して、こうして今取材を受けているこの瞬間から、だんだんと実感してくるよね。撮影中は同世代が揃った興奮に浸る余裕は一切なかった。
藤原 僕も。今頃になってやっと思えているから(笑)。当時は、膨大なテイク数に心が折れていたもん。そんな時に、撮影前に内山さんからの「あなたは悠二そのものなので、何も心配してない」の言葉が励みになった。なんせ、悠二は内山拓也そのものだと思ったから、演じるうえで彼の内面にも潜っていたので。ときには、避けてしまったこともある。そんな時は、内山さんの言葉を素直に聞けず(映画の合言葉である)「佐々木、佐々木、佐々木!」ってコールをつぶやいてた(笑)。それだけ人と向き合うのは大変。でもそれ以上に、楽しいんだけどね。内山さんは撮影前から俳優陣を引き合わせて、食事を重ねたり、みんなの関係性を深める努力をしてくれて。つながりを大切にするスタンスは、とてもありがたい。
内山 季節が呟いていたのは、何度か覚えてる。オファーをした際にも伝えたけど、会う前から尊敬していた。だから、タッグを組めて本当によかった。同じ船に乗り、一緒に漕いでこそ、見える景色も多かったよね。光の見えないまま27歳を迎えた悠二は同級生の一言で、パワフルな佐々木を思い出す。そして同時に彼の現在も動き始める。うまく生きられなくても、蓋をせずに、もがく過程は大切にした方がいい。そして、結果がすべてではない。心の奥底にある感情も現状も変わっていくものだから。これからもその思いを、映画に乗せていきたい。
清水尋也(以下、清水) 熱いですね〜。普段は飄々としていて「僕は世間には興味ありません」って雰囲気を醸し出しているのに、製作の話になると途端に温度が上がりますよね。
内山 社会への興味は全然あるよ!(笑)
清水 同学年の2人は対照的ですよね。季節くんはメラメラした赤い炎で、内山さんは静かに燃える青い炎。
藤原 えー!青い炎がいい!
清水 どっちがいいとかではないんですよ(笑)。むしろ、対極であるから化学反応が起こると思う。ちなみに、僕は内山さんタイプかな。芝居への思いは深いんだけれど、それをうまく言葉にはできない。季節くんのように、熱い想いを全面に出せるのは羨ましくもあります。
内山 たしかに、季節の僕らと違った視点にはいつも刺激を受ける。そして、対照的に尋也とは感覚が近しい部分がある。言葉にならない気持ちも、理解してもらえている。『青い、森』の撮影中、あるワンシーンで波(清水尋也)の演技が想像とちょっと違った時があって。いつもは確認でしかモニターは見ないのですが、その時は僕からは死角にいた尋也がモニター越しに“了解!”の合図を送ってきたときにはびっくりしたと同時にとても嬉しくて。通じてる!って。
清水 僕からは内山さんが見えてましたからね。仕草や表情で今のお芝居は違った、プランAではない、と察して、Bに切り替えました。そしたらOKに。話したわけではないので、内山さんが描いているのはプランCかもしれない。でも、なぜだか僕には内山さんの中にあるものがわかるんですよ。阿吽の呼吸が合う人って、僕にとっても珍しいし、貴重。
藤原 それは、僕と内山さんの間では起こらなかった現象だね(笑)。タイトなスケジュールで気持ちも張り詰めていた現場が終わって、やっと「これで友達になれたね」と、言い合えたくらいかな。
内山 ほんと、友達と呼べるようになったのは最近だよね。撮影では25日くらい一緒に過ごしたけど、ぶつかったし、沢山戦ったね。やっと友達になれたね。
清水 内山さんの現場は心身ともに鍛えられますよね。MVの撮影での話になるんですけど、扉から入ってきて周りの風景を見渡すのを1.5秒で演じてほしい。と言われて。他にもムリでしょ!ってなったことは、数知れず(笑)。
内山 でも尋也は絶対に「わかりました」って即答するよね。
清水 プロとして現場に臨む以上はNOの選択肢はありませんから。おかげさまで、スキルが磨かれていますよ(笑)。
藤原 僕の中で尋也は『渇き。』で魅せていた儚い少年だったのが『青い、森』で一変した。透明感は保ちつつも、その幹の太さに圧倒されたわ。映像も美しかった。
清水 僕も今度は内山さんの長編に出たいですよ。できれば季節くんと一緒に。
内山 季節は次に出てくれるのは10年後なんでしょ?(笑)
藤原 僕的には内山組への参加は、向こう10年は遠慮したい心持ちではあるけど(笑)。でも、やりがいは大きい。尋也とも共演したいし、やっぱり来年あたり……。いや、どうしようかな……(笑)。
『青い、森』
天涯孤独の少年・波(清水尋也)は高3の夏に親友と3人で旅した直後に失踪する。彼の足跡を辿るべく4年後に再会した2人が目にしたものとは。
監督 井手内 創、内山拓也
脚本 内山拓也
出演 清水尋也、門下秀太郎、田中偉登、伊藤公一、岩崎楓士、山田登是
配給協力 SPOTTED PRODUCTIONS 2020年/日本/カラー/50分
11月6日(金)より、UPLINK吉祥寺/京都ほか全国順次上映
2020オフィスクレッシェンド
『佐々木、イン、マイマイン』
俳優を目指して上京するも、芽が出ない27歳の悠二(藤原季節)。 彼はある日、高校の同級生でカリスマ的存在だった佐々木(細川岳)と過ごした日々を思い出す。爆発的なパワーで周囲を魅了する佐々木。だが、あるできごとを境に、友情が壊れていく。
監督 内山拓也
脚本 内山拓也、細川岳
出演 藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、三河悠冴、河合優実、井口理(KingGnu)、鈴木卓爾、村上虹郎
配給 パルコ 2020/日本/カラー/118分
11月27日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
©「佐々木、イン、マイマイン」
🗣️
内山拓也
1992年生まれ。新潟県出身。文化服装学院に入学。在学当初からスタイリストとして活動するが、経験過程で映画に触れ、その後、監督・中野量太(「浅田家!」「湯を沸かすほどの熱い愛」など)を師事。23歳で初監督作「ヴァニタス」を制作。同作品で初の長編にしてPFFアワード2016 観客賞、香港国際映画祭出品、批評家連盟賞ノミネート。近年は、King GnuなどのミュージックビデオやLEVI’Sの広告なども手掛ける。
🗣️
藤原季節
1993年生まれ。北海道出身。2014年、映画『人狼ゲーム ビーストサイド』(熊坂出監督)にて本格的に俳優デビュー。主な映画出演作に、『ライチ☆ 光クラフブ』(内藤瑛亮監督)、『ケンとカズ』(小路紘史監督)、『全員死刑』(小林勇貴監督)、『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督)、『his』(今泉力哉監督)など。19年、U-NEXTオリジナル配信ドラマ『すじぼり』で連続ドラマ初主演を務めた。2021年、主演映画『のさりの島』(山本起也監督)が公開待機中。
🗣️
清水尋也
1999年生まれ。東京都出身。映画『渇き。』(中島哲也監督)、『ソロモンの偽証 前編・事件/後編・裁判』(成島出監督)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(瀬々敬久監督)、『ちはやふる 上の句・下の句・結び』 (小泉徳宏監督)、など多数の話題作に出演。近作に映画『貞子』(中田秀夫監督)、『パラレルワールド・ラブストーリー』(森義隆監督)、『ホットギミック ガールミーツボーイ』(山戸結希監督)、ドラマ「サギデカ」(NHK)に出演。現在『青くて痛くて脆い』(狩山俊輔監督)、『妖怪人間ベラ』(英勉監督)、『甘いお酒でうがい』(大九明子監督)が全国公開中。待機作に、劇場アニメ「映画大好きポンポさん」(2021年3月19日公開)にて声優初挑戦ながら主演の座を射止めた他、映画「東京リベンジャーズ」(英勉監督/2021年全国公開予定)等がある。1st写真集「FLOATING」が発売中。
Photo:Hiromi Kurokawa Styling: Hironori Yagi Hair:Tomoya Nakamura Text:Mako Matsuoka