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フォロワー7.9万人のNAOMI SHIMADAが、完璧な人生を演じるのをやめた理由

フォロワー7.9万人のNAOMI SHIMADAが、完璧な人生を演じるのをやめた理由

ボディポジティブムーブメントを後押ししたアクティビストとしても注目されている、モデルのNAOMI SHIMADA。Instagramのフォロワーが7.9万人を超える人気者の彼女がデジタル習慣を問い直す本を出版した。モバイルを常に持ち歩く今の時代において、SNSとの上手な付き合い方を改めて見つめ直す。


SNSのビッグサクセスより
現実のスモールハピネス

「NYのタイムズスクエアのビルボード広告を飾ったこともあるけれど、どんなに大きな成功の喜びも、一過性のもの。“これさえ成し遂げたら、一生ハッピー!”なんていうものはない。毎日のささやかな幸せを見つける力がなければ、人生は絶望に満ちたものになってしまう」

そう語るのは、日本にルーツを持つモデルのNAOMI SHIMADA。「モデル=スレンダー」という既成概念を覆すエナジェティックな魅力で、ボディポジティブムーブメントを後押ししたアクティビストとしても知られている。この秋に刊行された初の著書『Mixed Feelings:The emo-tional impact of our digital habits』(混ぜこぜのフィーリング:デジタル習慣が感情にもたらすインパクト)は、友人でエディターのサラ・ラファエルとの共著で、SNSに代表される現代のデジタル習慣を見直すことを訴えかける内容だ。SNSのフォロワーの多さが成功に直結する業界に身を置き、Instagramのフォロワーが7.9万人を超える人気者であるNAOMI。いま世に出したかったのが、半自伝的サクセスストーリーやスタイルブックではなく、デジタル習慣を問い直す本だったのはなぜなのだろうか。

 

インフルエンサーはプロダクト。
完璧な人生を演じるプレッシャーを感じていた

SNSは、私たちの世代のあらゆることを変えてしまった。友達や恋人の作り方、働き方、何を食べてどこに行き、どんなフィットネスをするかまでもね。タイトルにもなっている“Mixed Feelings”は、ネガティブな面とポジティブな面がミックスされているデジタルの世界を表しているの。世界中のさまざまな人とコミュニケーションをとれる素晴らしいツールである一方、自分以外の誰もがパーフェクトな人生を送っているように錯覚して、孤独感を抱いたり嫉妬心に苛まれる人も絶えない。Just,Performming happiness. 人間の本質はSNSではわからないし、「誰も見ていないときは超別人」なんてこともざら。本当は、誰にとっても完璧な人生なんてあり得ないのにね。他人と自分のライフスタイルを比べてしまう面は昔からあったことかもしれないけど、よりクリアに“見える化”が進んだことで、トゥーマッチになってしまったんだと思う。

naomi モデル

私自身、Instagramで人気を得たことで、ポジティブなこともネガティブなこともたくさんの変化があった。いちばん変わったのはキャリア面かな。Instagramがポートフォリオ(作品のカタログ)代わりになることで、モデルとしての仕事の幅はすごく広がった。けれど、どこで誰と何をしているのかまで可視化されたことで、撮影時間以外でもパーフェクトな人生を演じなければいけないようなプレッシャーを感じ、一度ならずやめたいと悩んだ。始めたばかりの頃は、シンプルに投稿を楽しんでいたのに、いつの間にか「インフルエンサーは完璧な人生を演じるプロダクトなんだ」と自分を商品のように感じるようになって……。Twitterも始めた頃は楽しんでいたけれど、みんながシャウトしているような状況に疲れて、結局やめてしまった。

デジタルの明暗について執筆するにあたっては、私の身の上に起きたパーソナルな出来事もオープンに書くことに。インスタで知り合った相手と婚約して、別れるまでの出来事もそう。この本ではプライベートな体験もシェアし、大好きと大嫌いが入り混じったデジタルへの「ミックスフィーリング」について正直に書いたものなの。

 

SNSは、アディクトになるよう設計されている
やめられなくても、あなたは悪くない!

例えば、一日のうち、SNSに費やす時間を1、2時間削ることができたら、とっくにフランス語をマスターできていたかもしれない。それに、SNS用の写真ばっかり撮っていて、雰囲気を覚えられる?スマホがない時代は、人の目をもっと見ていたんじゃない?……デジタルは人生をより良いものにするオプションに過ぎないのに、いつの間にか毎日がジャックされてしまったかのよう。やめたいのにやめられない罪悪感に苛まれてしまうけれど、デジタル中毒になってしまうのは、仕方のないこと。絶対にあなたのせいじゃないよ!と、声を大にして伝えたい。だって、テック企業は、どうすれば長時間夢中にさせることができるかを、真剣に考え抜いて設計しているもの。オンラインギャンブルやスロットマシーンと同じく、専門のエンジニアがいかにアディクトにするか、知恵を絞っているのだから!無防備に利用しがちなSNSだけれど、運営企業にとってはあくまでもビジネスだということを忘れないでほしい。

共著者のサラは、『iD magazine』などで執筆しているデジタルエディターで、メディアに対するジャーナリスティックな視点を持った人。デジタル化が進んだことで、クリックを誘う強い言葉ばかりが求められ、グッドストーリーを広めることが難しくなったことを憂いている。休む間も無く、SNSにラインにメール。誰にとっても時間がない中で、ジャーナリズムにできることは何だろうと考えているの。

とはいえ、このご時世にバッサリとデジタル断ちするというのは非現実的。恩恵を楽しみながら、アディクトにならずに付き合うためにはどうすればいいのか。いかにバランスを保ちながら楽しむべきか。デジタルとの付き合い方をアップデートするのが、この本の目的。私たちも決して正解を見つけたわけではないけれど、いまのタイミングで世に問いて、考えるきっかけをシェアしたかった。自分の生い立ちについて「これがマイライフ!」なんて語るのは、もっと先でいいもんね。

NAOMI SHIMADA

 

「プラスサイズ」という言葉は時代遅れ!?
見た目、年齢、性別を気にしすぎる日本人

赤ちゃんの頃、初めて話した言葉は「かわいい」。小さい頃から、エナジーを感じられるカラフルなファッションが好きで、ワードローブに黒い服が全くないの(笑)。11歳まで過ごした日本は、私にとって大切なルーツ。イッセイ ミヤケのプリーツ プリーズをよく着るのも、日本との繋がりを感じていたいから。でも、いざ帰国となると、ルッキズムやサイジズム、セクシズム、エイジズムが蔓延した日本の感覚に馴染めなくて、ナーバスになることも。例えば、数年ぶりに会ったのに、第一声が「太った?」「痩せた?」という見た目の話だったり、30歳を過ぎたあたりからは、子供いないの?結婚しないの?とプライベートに踏み込んだものだったりする。相手の事情や気持ちを想像せずにいきなりそんな話を始めるのって、実は日本ならでは。日本の女性は、どんなに才能があっても頭が良くても、「何歳?」って聞かれたり、容姿のことでからかわれがちでしょ。それって、すごくおかしいよね。

日本の情報番組で、人気シンガーのLizzoが「ビッグサイズの歌姫」と紹介されていたことにも、思わずワオ!と驚いた。だって、Lizzoは、オペラもダンスもフルートもできる才能に溢れたアーティストなのに、日本では「ビッグサイズの歌姫」であることだけがフォーカスされてしまう。その横に、年齢まで添えてね。私は違和感を抱くけれど、幼馴染たちは女性に対するそんな扱いに慣れ過ぎていて、なんとも感じないみたい。

ちなみに最近では、ボディの多様性を肯定する価値観が定着したことで、世界的に「プラスサイズ」という言葉の役割が終わりつつある。だから、私も数年前まで「プラスサイズモデル」と名乗っていたのを、今は「モデル」とだけ名乗っているんだ。そんな私も、11歳まで日本で過ごす間は、「細い体がベスト」と刷り込まれてきた。しかも日本ではハーフの子はいじめられやすいから、幼稚園や小学校では「肌が汚い」って言われて……。色が白くて痩せてなければ美しくないんだと、信じ込んだまま育ったの。

NYやロンドンで暮らすようになってからは、どんなサイズでも「自分にとってフィールグッドな体こそがヘルシーで美しいのだ」とわかった。よく寝て、野菜も食べて、運動して、セルフケアを通して身体の声を聞いて。自分にとって心地よい身体かどうかは、他の誰でもない、私にだけわかること。美しさはフィーリングで、ビジュアルだけじゃない。どんな見た目、どんなボディタイプ、どんな年齢だろうと自信があれば、You look so grait!いちばん大切なのは中身。そういうルールだよね。

 

日本特有の「恥」のフィーリングは
オープンに語ることで解消できる

Instagramにヌードを載せていると、日本の友達に驚かれちゃう。そもそも、日本と海外ではヌードのコンテクストが違うみたい。日本ではヌード=セックスと結びつけられがちだけど、ヌードのポートレイトはナチュラルな状態の表現であって、セックスとは関係ない。どちらがいいとか悪いではなくて、カルチャーギャップを感じる瞬間。

日本は、あまり自分のことをオープンに語らない“シークレットソサエティ(秘密社会)”。自分の意見や考えを話すことに慣れていないし、何か悩みがあってもカウンセリングもセラピーも受けない。特に、「恥」の感情がとても強いのが気になる。だって、「恥」を溜め込むと、ストレスや病気の原因にもなりかねないから絶対に良くないよね。私に恥をかいた経験はあるかって?もちろん!本にも書いた結婚が破談になった話は、まさに恥のフィーリングだったよ。みんなに散々知らせた後で、「間違った相手だった」と気づいて結婚を取りやめるのは、とても恥ずかしかった。私の場合は洗いざらい本に書いたように、失敗を隠すのをやめてオープンにしてしまえば、もはや恥ではなくなるの。秘密にしているから恥なのであって、話すことができればもう恥じゃない。身体の中に巣食う恥の感情をリリースしたら、フリーな気分が手に入る。いつか日本で、自分のことをオープンに語れる、グループセラピーのようなワークショップを開けたらいいな。

 

NAOMI SHIMADA

『Mixed Feelings:The emo-tional impact of our digital habits』
Naomi Shimada / Sarah Raphael

SNSと自分自身においての複雑な関係性や、デジタルの世界では見えない部分を深掘り。人の生活と常に隣り合わせであるSNSとの付き合い方など著者の経験を交えながら描かれている。現在amazon(US版)にて発売中。

NAOMI SHIMADA

ロンドンを拠点に世界で活躍するモデル・アクティビスト。現在は本の執筆やラジオに出演するなどし、ポジティブなメッセージを提唱、発信している。
Instagram: @naomishimada

Photo: Satomi Yamauchi Text: Anna Osada Edit: Karin Ohira

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