これからの時代に必要な哲学。陳暁夏代インタビュー

これからの時代に必要な哲学。陳暁夏代インタビュー

誰よりもカルチャーを愛し、世界のトレンドを発信し、そして自分自身のスタイルを楽しむ姿が、同年代の女性から支持されている「なつよ」こと、陳暁夏代(ちんしょう・なつよ)さん。

「ギャルが好き」と公言し、自身もカラフルで自由なテイストのファッションに身を包む彼女の本業はその姿からは予想のつかない職業だった。日中を行き来しながら育ったバックグラウンドを生かし、日本企業への中国進出におけるブランディングや戦略づくりなどを行うコンサルティング業務。更には2019年1月からは、今をときめくクリエイターが集結するコンテンツスタジオ・CHOCOLATEにジョインし、執行役員として多忙な日々を送っている。実はGINZAも愛読していたという彼女に、その哲学と野望を聞いてみた。


 

カルチャーは国や言語を超えられる

──Twitterアカウント @chinshonatsuyo で中国のトレンドを的確に発信し、支持を得ている夏代さん。どうしてそんなにカルチャーやエンタメに詳しいんでしょうか?

趣味だからですね。結局関心を持っている分野、趣味が一番詳しいと思うんですがそれ今仕事に活きている状態だと思います。本業ではすごく堅いことをやっていて、芸能事務所、広告代理店と勤めた後に独立し中国進出をする企業のブランディングやマーケティングのサポートなどを行っていたりと、すごく硬いことをやっている一方で、チョコレイトのように私がリスペクトしている“コンテンツ”そのものを生み出す組織作りを行ったりと、両者とも違うようで実は自分が得意とする領域なんですよね。

Twitterでの、カルチャーやエンタメについての発信は、本当に自分が興味関心のある話題だけを投稿していたいのですが、近年いわゆる「ミレニアル世代」が社会を動かすようになったことで、私の俯瞰的な視点や幅のある発信が世間の関心にハマって、注目を持たれるようになったのかなと。

 

──カルチャーやエンタメに興味を持ったきっかけはありますか。

子供の頃から3~4年おきに日本と中国を行き来する暮らしをしてきたんですが、そのなかで、言語や国を超えてみんなとコミュニケーションできるものがやっぱりファッションや音楽などのカルチャー・エンタメだったんですよね。まあ純粋に好きなんですけど。

ファッション誌も日中問わずたくさん読んでますよ。GINZAだと、KOさんの「自由すぎる私服スナップ」は大ファンでした!まさか本人にこうしてお会いできると思っていなかったのでとても嬉しいです。

カルチャーの中でも私は音楽が好きですね。音楽って、一番軽いデータ量で一番広く世界に普及できる最強のコンテンツだと思ってて。いろんなものと融合できるし、可能性に満ちている。ファッションや文学は、受け手が意識しないと摂取できないけれど、意図しないでも耳に入ってくるのが音楽。だって、世界中の人が「イマジン」聞いたことありますよね。しかもサビは歌えますよね。すごい伝達ツールだなと思ってます。

──夏代さんの素敵なのは、そうしたカルチャー愛を持ちつつ、どんな物事にも、常に冷静な分析をされているところだと思います。

それも、育ちが影響しているでしょうね。日本にいると「中国人だ」と言われて、中国にいると「日本人だ」と言われてきたので、自分の居場所がどこにもないような感覚が幼少期からあって。「自分という存在はなぜこうなんだろう」「みんなはなぜそう思うんだろう」と客観的に思考する癖が、昔からあったので、物事の裏側や原因の因数分解を考える事が得意になってしまったし癖なんだと思います。

 

──Twitterの発信の際に、意識していることはありますか?

ポジティブな内容や視点で書くというのは、徹底していますね。政治の話なのでネガティブな話は誰かが書くじゃないですか。なので私はあえて触れず最新のトレンドやエンタメの話を書いて、みなさんがいろんな情報を摂取する中でバランスよく摂取できるようにと思ってます。あとは中国関心層のフォロワーはあらゆる中国系の情報は見ていると思うので、そうじゃないフラットな新規の方の感度にひっかかればいいなと思い幅のある情報を出していますね。

(「中国系ツイッタラー」みたいにまとめられるのはイヤなんで、最近書きすぎないようにしてますけど。)

 

日本でも「一つじゃない」
生き方が認められはじめた

──夏代さんのことを、どういう肩書でとらえると正しいでしょうか? Twitterのbioには「ラッパー」とありますが……。

それ、いろんな人に聞かれるんですが……自分でもうまく説明できないんですよね。「陳暁夏代」であるというのが一番しっくりきます。それ自体がすでに時代を表していると思っていて、今までの日本では“本業”と“副業”と“趣味”というように、あらゆる行動を分けて語るじゃないですか。あれが私はわからなくて。私には中国の仕事をしている時も、チョコレイトの時も、個人の活動の時も全てが本業なんですよね。あと一つのことを極めないとプロじゃないという風潮。それももう違うと思っていて。なので一つの肩書きで名乗れずいつも聞かれると困ります。落合陽一さんも大量の肩書きがあるじゃないですか。彼は全部並べてますが、その上での“落合陽一”ですよね。あれと同じです。


参照元: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000024007.html

 

 

──昔はこれになりたかった、というのはありますか?

女優になりたかったですね。自分が何者なのか毎日考える幼少期を過ごしたからこそ、何者かを演じる存在になったらいいんじゃないかと考えていて。

でも、今こうやって自分の名前が流通しだして、自分自身を生きられるようになったことで、その欲は不思議と消えました。だから「陳暁夏代」でしかないなと思うんです。そしてたぶん、こういう私のアイデンティティ――型にはまらずに自分を発信したり、職業にとらわれずに着飾る生き方が、今の若年層女子のマインドにもフィットしてるのかなと感じます。講演会などやると驚くことにものすごく女子にモテます。クッキーとかもらいます(笑)。それはみんながなりたい人物像のヒントになれてるんじゃないかなと思っていますね。

 

──夏代さんから見て、日本の女性って抑圧されていると感じますか?

めちゃくちゃ抑圧されていると思いますよ。日本ほど、型にハマることが求められる国ってないですから。服装ひとつとってもそうですよね。ただ「女性が抑圧されない社会に」というよりは、性別も年齢も肩書も、全部がフェアであれという発信をしていきたい。その方が社会のシステムが新陳代謝していける。旧来のこうであれの仕組みで発言をためらっていた人たちがどんどん発言していける空気ができればいいなと思います。

 

──中国は、どうなんでしょう。

まず服装に関して言うと、そもそも年齢に応じてこういう服装を着るべきというような世間の目はあまりないですね。職場でも一部を除いてはフォーマルを強要する企業は少ないです。

というのも、中国は目立つメリットが大きいんですよね。人口が多いから、何億人ものなかで一番派手になって、ピックアップされないといけない。なのでファッションも自己主張の手段の一つになっています。

あとは社会全体としていままの中国はずっと変革の中にあったので皆が長期的視点ではなく短期的視点で物事を捉えています。来年社会がどうなってるかわからないからこそ、他人に干渉しすぎないし、自分らしく生きていいというのがあると思います。

あとは日本と違って均一的な所得や人生じゃない。日本だと仕事を聞けば大体の年収が想像できますが、中国ではできません。親の資金で不動産運用し不労所得を得ている人もいれば、ネットで化粧品を売っている人もいれば、結婚して裕福になる人もいれば普通に働くOLもいる。500万円の年収の人も、5000万円の年収の人もいて、しかもそれぞれの稼ぎ方がバラバラなんですよね。上には上がいて、下には下がいる。なので隣と比較してどうこう……という発想にそもそもならず、自分の人生を後悔のないように生きるという概念の方が強いです。

一方で、そんな社会変化に追いつかないと淘汰されてしまう面もあります。なので安定を求めて海外に移住する若者も多いですね。日本は、良くも悪くも社会が守ってくれるし仕事も一度正社員で採用されたらクビになりません。そういう意味でも日本は人気ですね。

日本でもだんだん「一つじゃない」生き方が主流になっていると感じます。たとえば、下着ブランドを経営しつつ生理用品にも視野を広げるハヤカワ五味さん、アーティスト活動を絶頂期に引退するぼくのりりっくのぼうよみさん、複数の肩書きを持つ落合陽一さん、日本を離れアメリカに拠点を置くも人気が再燃するkemioさんなど例を挙げるときりがないですが、

今私が列挙した方々は皆、いろいろな企業に起用され時代を代表する顔になっている。もっと自由でいい、もっとやりたいことを本気でやればいい。彼らにファンがつくのはそうした若者がこれまで求めていた人物像がそこにある方だと思います。

「個」を生きる肩書がある人がみんなの憧れになる流れが、さらに加速していくと思います。

陳暁夏代

 

「群れ」を率いて、
時代をハックしたい

──これからの時代、視野を広く持って生きるためには、どうしたらいいんでしょうか。夏代さんは、普段どんな情報を摂取しているんですか?

普通にTwitterですよ(笑)。多分これはよく聞かれるんですが、アンテナを張っているエリアが違うだけで視野に入っている情報は同じです。同じニュースに対しての視点や切り口が大切なので。なので私の見ているメディアを見たところで全く同じ感想は生まれない。映画と同じだと思います。

意図してやっていることとすればアイデアの幅を広げるために自分が自然摂取できないであろう情報を強制摂取することで、幅を広げています。

例えば、自分がオーガニックでとれない情報を発信している人をフォローすること。私の場合は中国ネタやファッションネタは自分でdigれるので、それ以外の国やITとかインフラとか、そっちですね。ウェブメディアなどで読んだ記事がいいなと思ったら、そのライターさんのアカウントを直接フォローするようにしています。

 

──今、夏代さんが注目している人物やムーブメントを教えてください。

 ちょうど世界全体で、「ジェンダーレス」や「ジャンルレス」といった、垣根をなくす現状がフィーチャーされています。音楽でいうとレーベルの88risingはアジアのカルチャーを伝えるプラットフォームとして中国・インドネシア・日本など、アジアのさまざまな国にルーツを持つ若手アーティストたちが集まり、アメリカからアジアカルチャーを世界に発信しています。

88risingが良いのは、彼らが先陣を切っている感じで、その強い組織の動いが大きな渦を作っていて、アジアカルチャーが世界で注目され同じような組織がいろんな場所ででき始めている。こういった個が広がる「群れ」的な集団は、“女性”とか“ファッション”とかいろいろな領域で作れるはずで、それがもっと盛り上がるといいなと思います。ちょっと「ギャルサー」に近い感じ。

 

──夏代さん自身は、どこかの群れにいる感覚ありますか?

私が群れを率いていかないといけない、先陣を切らないといけない意識は、あります。と言うよりは多様性を増やしたい時に、それが一番効率がいいと感じているからですね。私よりも才能がある人は五万といるし周りにもたくさんいます。そんな彼らを私の力でプッシュしていければいいなと思っています。私、星野源さんをすごくリスペクトしていて、彼って自分の周りで見つけた才能ある若い子をきちんと起用して、後押ししてあげてるんですよね。素晴らしい存在だなと思って。

 

──今後、Twitterに限らず、発信の機会はもっと増えていく予定ですか?

女優になりたい気持ちはもうない、と言いましたけれど、“発信“に関係したプロジェクトをやりたいなと思っています。陳暁夏代という人間の思想の布教方法はわかってきたのでもっと評価されるべき人々を上のレイヤーに押し上げたい。そのためには今の「個人」から飛び出ないといけない。

ここ1年感じているんですが、インターネットなどで意見を言ったときに、周りにちゃんと聞いてもらえる時代になってきたなと思います。みんなメディアが適当なこと言ったら「ほんとかよ」と疑うようになったし、個人が正しい主張をしたら、きちんと認めてくれる。この時代の流れをハックしないともったいないし、私が流れをつくるくらいの勢いで生きてます。

Text: ひらりさ Photo: Tomohiro Takeshita Edit: Karin Ohira

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