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【INTERVIEW】中野信子:普通でもクレイジーでも心配ないさ

【INTERVIEW】中野信子:普通でもクレイジーでも心配ないさ

脳科学者の中野信子さん。いまだ謎多き人間の脳についての研究を重ねる一方、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中です。

「(フムフムと弊誌に目を通しつつ)普段ファッション誌はあまり読まないんです。定期的に読む雑誌というと、やっぱり『ネイチャー』ですね」

あ、まあ、そ〜ですよね。

「……ちなみにここは笑うところだと思います(笑)」

す、すいません。

「理系の女の子がファッションに興味をもつのは非常に稀でしたね、私が学生の頃は。だから、ファッションというと、私はコンセプトの決まったカテゴリーに偏りがちなんです。ミリタリーだったりゴスだったり和服だったり。どうやらエクストリームな方向に寄る傾向なんです」

ちょっと仮装的な方向性で(笑)。

 

「女性にはふたつの種類があるんです。『メス』と『人間』です。ファッションはメスのものという認識だったので関心がなかったんですね。私はメスカテゴリーではないので。ならば人として面白いファッションをしたい、それでミリタリーに興味をもったのが最初です。でも最近のパリコレを見ていると、発想が奇抜でユニークで、いわゆるモテやユルといったメスとは関係のない世界。すごく攻めてるなって。拡張された人間のファッションだと思いました」

ファッションが人間の可能性を広げている、ということですか?

「保温保湿、冷却といった機能はすでにありますが、ウェアラブルな記憶デバイスや医療デバイス、ハイテクな義手や義足といったものまで、これからはどんどん拡張する方向だと思うんです。そもそも人間は裸の状態ではその人として認知されません。着るものが一体となってその人が表現されるんです。私だったら、このカツラを含めた拡張された状態で中野先生と認知されるわけです」

そう、彼女はメディアに登場するときには必ずボブの黒髪ウィッグを被る。本来の自分とは一線を画した中野先生としてコメントを述べるための〝ペルソナ〟である。ウィッグの中には、ときには金、ときには赤のロックな髪形が隠されている。

「でも、ペルソナは変えられないものではないんです。バラエティに出るときは黒くて長い髪を被るんですが、みんなカツラだと知っているはずなのに、男の人たちの反応が丁寧なの(笑)。彼らは無意識に反応を変えるんですよ。ウケるでしょ」

ところで。今回の『GINZA』の特集キーワード「クレイジー」について彼女は何を思うか尋ねてみた。

「わくわくするものであると同時に、クレイジーと呼ばれ共同体から排除された人たちの心のきしみを感じてしまいます。多くの人は、普通でいられることの幸せを無意識に享受し、その幸せを享受し続けるために排除されない行動を無意識のうちにとるんです。でもクレイジーな人は、自分のきしみを回避しない。きしみと向き合いそれを表現しようとする。そこに私は共感し同情するんです」

中野さんはIQ148という天才的な頭脳を持つ。しかし子どもの頃は、周囲とうまくコミュニケーションがとれなかったという。いわく「文脈を読めなかった」ためだった。

「なんで教科書を覚えられないの?って。相手の気持ちを考えることができず、言いたいことだけを一方的に言っていたんです。それでは会話は成立しないし、誰も相手にしてくれなくなる。それをすごく長い時間をかけて、人のコミュニケーションを見たり聞いたりしながら練習して、普通に合わせる努力をし、自分の居場所をなんとかここにつくったんです。ですから、クレイジーは言うほど美しいものでもカッコいいものでもないよと私は思ってしまうんです」

じゃあ、私たちが「クレイジー」にわくわくするのはなぜでしょう?

「共同体の外に存在するものだからです。距離があるからこそ憧れ、そういった人の生き様を見ることで自分も生きているという実感を抱く。もし、社会のなかで生きづらさを感じるのなら、自分は迷惑をかけない存在だとわかってもらうことです。そうすれば排除されません。あるいは、あらゆるメリットを捨てて共同体から飛び抜け、あの人はあの人だという存在になるか。ただ、ひとつ言えるのは、普通であれクレイジーであれ、劣等感をもつことはないんです。40億年の生物の歴史を受け継いだ勝者としていまここに生きているのですから。それでいいんです」

中野信子 Nobuko Nakano

1975年東京生まれ。脳科学者、医学博士。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所で研究員として勤務後、脳科学についての研究と執筆活動を行う。著書に『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』『脳はどこまでコントロールできるか?』、『正しい恨みの晴らし方』(共著)ほか。

Photo: Kentaro Oshio Styling: Keiko Sekiya Text: Izumi Karashima

GINZA2015年8月号掲載

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