大久保佳代子
曲名♪夕暮れ
「私の気持ちに気づいている?」
恋する人への想いを歌にのせて。
「カラオケでの十八番の曲は堀ちえみの『夕暮れ気分』であり、バラエティ番組内で歌唱する際は必ずと言っていいほどこの曲を歌っている」。お笑い芸人である大久保佳代子さんのウィキペディアのページにはそうあるのをご存知だろうか。だから今回、大久保さんをゲストに迎えるにあたり、「夕暮れ気分」に狙いを定めていろいろとリサーチして臨んだのだが……。
「そんなことが、書かれているんですか(笑)!?たしかに、名曲だと思いますけど、あれはとある番組の撮影中に『何か歌ってください』と言われて、とっさに披露したらウケたから、何度も歌っていただけで。思い出深いカラオケの持ち歌ということで言えば、ザ・ブルーハーツの『夕暮れ』なんですよ」
と、まさかの〝夕暮れ〟違い!それはともかく、男性ならいざしらず、女性がザ・ブルーハーツを選ぶとは珍しい。
「単純に、ブルーハーツが大っ好きなんですよ。人生を一番動かされたミュージシャンなので。高校受験もそれで乗り切りました。地元が渥美半島の片田舎で、ブルーハーツを聴きながら『こんなところにいたらつぶされる!東京に行って何かを成し遂げなきゃ!』って。結局、受かったのは千葉の大学だったんですけど。だから、ブルーハーツは全部好き。その中でも、『夕暮れ』は20代の頃の思い出の歌なんです。当時は、デビューしたけどテレビにはあまり出られなくて、劇団みたいなことをしていたんですね。そのとき、同じ劇団の男の子を好きになったことがあって。彼は同世代だったからブルーハーツがもちろん好きだし、『夕暮れ』は恋の歌だし、なによりこの曲って女の子が歌ってもかわいいじゃないですか?それで歌って『あなた、私の気持ちに気づいている?』ってアピールしていたという。でも、男の人と近づくには、カラオケっていいですよね。密室だし、入れ替わり立ち替わりできるし、ただ飲んでいるときより進展がありそうで」
しかし、げにこの世は世知辛い。そんな〝進展〟を期待しつつも、バッドエンドを迎えて辛酸をなめた日もあるそうだ。
「30代の頃かな、代理店の男の人たちと3対3で合コンをしたことがあるんですよ。代理店って言っても、聞いたことがないような名前のところでしたけど。その2次会でカラオケに行ったら、幹事の男の子が『上司が近くで飲んでいたんで!』って変なおじさんたちを連れてきて。『このおじさんたちが払ってくれるかな』って下心もあったので、『カナダからの手紙』をデュエットしたり、すっごい媚びを売って頑張っていたんですけど、1人消え、2人消え、最終的に残ったのは酔いつぶれた幹事の男の子だけ。しかも、『お金を払って』ってお財布を開かせたら、一銭も入ってなくて。しょうがないから私たちが払いましたよ。5、6万くらいかな。朝方、女の子たちとは『異性とカラオケをするのってこんなに払うんだね……』って言いながら別れました」
その経験のせいというわけではないが、最近の大久保さんはカラオケから遠ざかっているという。なぜだろう?
「疲れるからじゃないですか(笑)。女芸人たちと飲んでも、歌いに行こうってならない。今、カラオケに行く理由があるとすれば、やっぱり気になる男の人がいたときでしょうね。え、そのときのアピール曲ですか?ドリカムの『あなたにサラダ』ですかね。かわいい曲だし、途中で野菜の名前を連呼するくだりがあるので、家庭的な女だってアピールできる(笑)。でも、今は歳のせいか1次会の時点で体力を95は消費しちゃうんですよ。だから、行ったとしてもずっとぐったりしているかも」
「夕暮れ」/作詞・作曲=甲本ヒロト/歌=ザ・ブルーハーツ