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ピエール・カルダンのドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル!』。その舞台裏を監督に直撃

ピエール・カルダンのドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル!』。その舞台裏を監督に直撃

【TOP画像:©House of Cardin – The Ebersole Hughes Company】

ピエール・カルダンのドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル!未来をデザインする男 ピエール・カルダン』が102日より公開される。フューチャリスティックなスタイルの提案、プレタ参入、ライセンスビジネスなど、今年98歳を迎えたカルダン氏の偉業を学べるほか、恋の話も。監督/プロデューサーを務め、公私共にパートナーであるP.デビッド・エバーソールとトッド・ヒューズにZoomインタヴューを敢行した。


──おふたりの背景にすてきなインテリアが垣間見えて、気になって仕方がないのですが…。

ピエール・カルダンの家具が多くて博物館のようになってしまっていますが、我が家のインテリアはスペースエイジをテーマにしています。映画『バーバレラ』(1968)などをイメージして、浮遊感のようなものも出しているつもりです。

 

──インテリアにこだわっていらっしゃるんですね!家具をきっかけにピエール・カルダンを知った、と聞きましたが、彼の家具のどんなところに魅力を感じたのですか?

たとえば私たちが持っているピエール・カルダンのコーヒーテーブルは一見シックですが、真ん中が開いてライトが出てくるという驚きがあります。ディテールもすばらしいですし、スペースエイジ的で、モダンでグラフィカル。そして楽観的で前向きな印象を受けました。

 

──カルダン氏が作り上げたファッションについてはどう思われましたか?

ワイルドで、魅力的で、楽しい服だと思いました。発表当時は目新しく、驚くべきものだったのでは。カルダン氏が言うように、まだ見ぬ未来を生み出していたと思います。60年代の有名な「コスモコール」コレクションはもちろんですが、クリスチャン・ディオールを経て独立したばかりの50年代の服もクラシックに見えて実は上下や表裏が逆になっていたりします。本当に型破りで冒険心のある人です。

 

──そんなカルダン氏のことを映画にすることになったきっかけを教えてください。

実は成り行きでそうなったんです(笑)。カルダン氏に会える機会があり、いちファンとして、フェイスブック用に友達に自慢できる写真を1枚撮れればいいかな、くらいの気持ちで行きました。映画にも登場する72年製の車「AMCジャベリン」など、私たちのピエール・カルダンコレクションの写真をカルダン氏に披露していたら、わかった、じゃあいつから撮り始める?と聞かれて。そんな予定は全くなかったのですが(笑)、彼の人柄に魅了されていましたし、本当にドキュメンタリー映画を作ることにしたんです。

©House of Cardin – The Ebersole Hughes Company

──ではカルダン氏はわりと乗り気だったのでしょうか…(笑)。そして彼は映画製作にどの程度関わっていたのでしょうか。

進捗を把握してはいましたが、リミットを設けたり、スケジュールを強制したり、これはおさえておいてほしい、と言われることもありませんでした。作品がある程度できあがった段階で一度見てもらったら、「気に入りました。内容も全て事実です」とおっしゃったのでほっとしましたね。その後の映画祭のプレミアでは非常にアーティスティックでよく考えられている作品だとほめていただきました。私たちはフランスの文化と伝統に十分に敬意を払って映画を作り上げたつもりです。カルダン氏はじめ、関わった多くの人々と実りあるコラボレーションができたのでは、と思っています。

 

──仕事の話だけではなく、ジャンヌ・モローやビジネスパートナーでもあったアンドレ・オリヴイェとの恋愛関係を描くことにもNGは出なかったのですね!

私たちは恋愛関係がカルダン氏の人となりを知るのに重要な要素だと感じたので盛り込みました。決して彼のセクシュアリティについて語ろうとしたわけではありません。ジャンヌ・モローとの関係はカルダン氏の演劇への愛、アンドレとの関係はファッションへの愛の表れだったような気がします。

 

──映画にはたくさんの人たちがカルダン氏について語っていますが、どうやって選んだのでしょうか。

カルダン氏のもとで経験を積み、その後著名なデザイナーとなったジャン=ポール・ゴルチエとフィリップ・スタルクは最初から候補になっていました。ナオミ・キャンベルもレッドカーペットでヴィンテージのカルダンを着ている唯一のセレブなのできっとファンなのだろう、と推測していましたね。あとはパリのプロデューサーに紹介してもらったり、雑誌の記事で1行でも面白そうなエピソードを見つけたらそれを紐解いていったり。フェイスブックで情報を得たりもしましたよ。

 

──2人揃ってインタヴューに臨んだのでしょうか。

デビッドの方がちゃんとした人に見えるので(笑)主にインタヴューを担当し、人によってはカルチャーや音楽に造詣の深いトッドが話を聞きました。それぞれで得意分野が異なるんです。カメラクルーへの指示はデビッド、雰囲気作りはトッドが受け持ちました。編集作業では、トッドはクリエイティブな面を、デビッドは注意深く几帳面なので全体の構成に目を配りました。ちなみに、プライベートではトッドが料理担当、デビッドはお茶係です(笑)。

 

──ここだけの話、大変だった取材はありましたか?

フィリップ・スタルクは独特の視点を持っていて、頭の回転が早いので緊張感がありましたね。シャロン・ストーンはジャンヌ・モローと親しかったので恋愛の話をしてくれるのではないかと期待していたのですがその件については一切触れない、とシャットダウンされてしまったり。ひょっとするとナオミ・キャンベルに手を焼いたのでは、と思われるかもしれませんが、大変スムーズで全く問題ありませんでした。

 

──そしてもちろんカルダン氏自身にもインタヴューされています。印象に残った言葉を教えてください。

ジャン=ポール・ゴルチエがカルダン氏から聞いたという「Tout est possible(全てが可能である)」です。自信を持ち、楽観的で、恐れることなくクリエイティブであり続ける彼らしい言葉だと思います。私たちがピエール・カルダンのネクタイをしていたら、「私のブランドのネクタイをしてくれてありがとう」と言われたことも印象に残っています。数々の偉業を成し遂げているのに小さな感謝を忘れない態度は見習わなければなりません。

 

──98歳で現役、というのにも驚かされます。

劇中にも出てきますが、長寿の秘訣は、「Work, work, work and stay happy(働いて働いて、幸せでいること)」なんです。それをシャロン・ストーンに伝えたら、「真実だけど、幸せでいるには努力が必要」と言っていました。もっともだな、と思いましたね。僕たちも好きなことを仕事にしていて、幸せに暮らせています。引退なんて到底考えられなくなりました!

 

──カルダン氏から多くのことを学ばれたのですね。最後に、次にドキュメンタリーを撮ってみたいデザイナーがいれば教えてください!

ウィリアム・ヘインズというすばらしいインテリアデザイナーです。彼はゲイだったのですが、20年代に映画スターとして活躍し、その後レーガン大統領時代にホワイトハウスのインテリアを担当しました。今人気の「ハリウッド・リージェンシー・スタイル」の創始者です。あとはあまり知られていない裏方の衣装デザイナーであるマイケル・シュミットです。彼はロックなスタイルを得意としていて、ティナ・ターナー、マドンナ、ビヨンセ、レディ・ガガ、デボラ・ハリーなど、錚々たるスターたちに衣装を提供しているんですよ。

 

──2人とも存じ上げませんでしたが大変興味深いです!カルダン氏のようなモード史に名を刻む巨匠だけではなく、有名無名問わずさまざまなクリエイターに目を向けていらっしゃるのですね。次回作も楽しみにしています!

『ライフ・イズ・カラフル』


原題: HOUSE OF CARDIN
監督/プロデューサー: P.デビッド・エバーソール&トッド・ヒューズ
プロデューサー:コリ・コッポラ エグゼクティブプロデューサー:マーグレット・レイヴン マシュー・ゴンダー 
撮影監督:ローレント・キング
音楽:ジェームズ・ピーター・モファット 
編集:メル・メル・スケカワ=ムーアリング&ブラッド・コンフォート
配給:アルバトロス・フィルム
2019年/アメリカ・フランス/101分/ビスタ/5.1ch/原題:HOUSE OF CARDIN / 日本語字幕:古田由紀子/後援:在日フランス大使館アンスティチュ・フランセ日本 / 提供:ニューセレクト / テキスト協力:落合有紀

2020年10月2日(金)Bunkamuraル・シネマ、 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国公開

https://colorful-cardin.com/

Profile

P.DAVID EBERSOLE & TODD HUGHES P.デビッド・エバーソール&トッド・ヒューズ

デビッドは1964年、トッドは63年生まれ。共に監督、プロデューサー、脚本家として活躍している。2人で参加した作品は、グランジバンド「ホール」のパッティー・シュメルについてのドキュメンタリー『HIT SO HARD』(2012)、スタンリー・キューブリック監督作品『シャイニング』を検証するドキュメンタリー『ルーム237』(同)など。

Text: Itoi Kuriyama 

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