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キュートでクレバーな、アート界のニューアイコン プレシャス・オコヨモン インタビュー

キュートでクレバーな、アート界のニューアイコン プレシャス・オコヨモン インタビュー

岡山芸術交流2022 プレシャス・オコヨモンの作品展示風景

ニューヨークを拠点とするアーティストで詩人、プレシャス・オコヨモン。弱冠28歳でFrieze Artist AwardCHANELNext Prize(共に2021)を受賞、今年のヴェネチア・ビエンナーレではアルセナーレ会場で最大規模のインスタレーションを展示するなど、今注目を集めている。現代アートのエリート街道まっしぐらに見えるが、実は彼女のキャリアは詩から始まっている。しかも、料理を使ったパフォーマンスも得意で、その腕はかなりのものなんだそう。様々なメディアを駆使しながら、独自の世界を表現する姿は爽快だ。

現在開催中の岡山芸術交流2022では、巨大なテディベアを制作。今回の来日をきっかけに日本が大好きになったという彼女が、GINZAのメールインタビューに答えてくれた。


──今回の岡山では、大きなクマのぬいぐるみのインスタレーションを発表されましたね。

作品のタイトルは、《太陽が私に気づくまで私の小さな尻尾に触れている》(Touching My Lil Tail Till the Sun Notices Me)といいます。大きなテディベアのぬいぐるみが、廃墟となった小学校のプールの中に、仰向けになって置かれています。私は「幼少期」というものにとても興味があります。それは精神分析的なカテゴリーとして、この世界や自らの身体について多くのことがクリアになる時期、あるいは空間だからです。私がつくる多くの作品において、私は、子どもの遊びの美学を体現するようなものに回帰します。例えば、私たちが「カワイイ」とか「愛らしい」と思うようなものです。こういった一見無邪気なモノの中に、どんな他の考えが込められているのかを、探ろうとしているのです。

 

──あなたは、詩人としてのキャリアからスタートしています。表現方法の中で、詩を選んだ理由はなんですか?

私は子どもの頃から詩の持つ可能性に魅了され、親しんできました。詩とは無限のメディアであり、少なくとも音楽やアートの中には存在するような伝統的な形式は存在しません。私が今行っているすべてのことに、詩が貫かれています。

岡山芸術交流2022 プレシャス・オコヨモンの作品展示風景(事務局提供)岡山で芸術交流2022のために、事前に来日してリサーチを行った(Art & Public提供)

──作品にグリーンを多用している理由を教えてください。かつてのインタビューでは、あなた自身の出自にもかかわる「Blackness」と植物の生態系を重ねて考えているとも話しています。昨今の気候変動といった環境問題はあなたの制作や考えに影響していますか?

私の作品の多くは、歴史的なリサーチに基づいています。私は、今現在の状況から逆算し、私たちが理解しているこの世界をつくるために仕組まれたたくさんの力を掘り起こそうとしているのです。私はよく、エコロジカルな現象と、政治や経済的な現象が重なる部分を観察しています。人種が生じることや資本の構築、あるいは国民国家のようなものです。自然界はニュートラルな空間ではなく、それは私たちに見えない形で、人間の残忍な行為を記録しているのです。気候変動による危機は、その顕著な例であり、もちろん、産業と商業が(地球上の)あらゆる生命体への無関心から、ひどい仕打ちを行ってきたことの記念碑です。それだけでなく、この影響は、地球の西側と南側、階級や人種、ジェンダーの間で驚くほど偏在しているのです。この事実は、これらの社会技術が世界の完全な破壊をもたらす原動力になったことを教えてくれていると思います。

岡山芸術交流2022 プレシャス・オコヨモンの作品展示風景(事務局提供)Precious Okoyomon, Earthseed, Exhibition view at the Museum Für Moderne Kunst, Frankfurt, 2020. Courtesy of the artist andthe Museum Für Moderne Kunst. Photos by Axel Schneide

 

──あなたはとても料理が上手だと聞きました。以前は料理を使った作品やパフォーマンスも行っているそうですね。最近も料理を制作に取り入れていますか?また、来日時に食べたもので特においしかったものを教えてください。

食べ物は、ケアの実践として私が一番好きなメディアのひとつです。それは多くのものを形づくり、育んでくれます。だから、私は人々に料理をふるまうのです。時には、あまり人前に出ない大切な人たちをディナーに招待して、サプライズ・ミールをすることもありますし、ニューヨーク周辺で、地域のための無料のポップアップを出すこともあります。

来日した時は、信じられないくらいたくさん食べました!一番おいしかったのは、白桃のパフェ、冷やし蕎麦と天ぷらのセット。とうもろこしの天ぷらは完璧でした! おいしいコーンが大好きなんです。

岡山芸術交流2022 プレシャス・オコヨモンの作品展示風景(事務局提供)リサーチ時に岡山の居酒屋で。隣は、同じく岡山芸術交流2022出品作家のアジフ・ミアン(Art & Public提供)

 

──最後に。あなたのファッションは、とても個性的で素敵です。どんなファッションが好きですか?

私は日々の鎧として身につけるファッションを愛しています。ゆったりしてキュートなもの、それから大きなリボンがついていて、悪魔的にかわいいのが、私のバイブスです。好きなデザイナーはVaquera、シモーネ・ロシャ、彼女もベイビードール風のかわいさがありますね。それから、Chopova LowenaChaos Princessの奇妙な美しさが気に入っています。私は、自分のハートにある喜びを表現することが、すごく好きなんです。

プレシャス・オコヨモン Precious Okoyomon

1993年、イギリス生まれ。現在はニューヨークを拠点に制作活動。
オコヨモンは、ナイジェリア系アメリカの現代アーティストであると同時に詩人でもある。 2018年LUMA Westbau(チューリッヒ)、2020年フランクフルト現代美術館(ドイツ)、2021年パフォーマンス・スペース・ニューヨーク(アメリカ)、2021年アスペン美術館(コロラド州)等で個展を開催。 また、2021年パレ・ド・トーキョー(フランス)、2021年LUMAアルル(フランス)、2021年スティーブンソンギャラリー(ヨハネスブルグ、南アフリカ)、2020年アスペン美術館(コロラド州)、2019年LUMA Westbau(スイス)、2019年Institute of Contemporary Art(ロンドン)などのグループ展に参加している。また、2019年サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン)、2019年Institute of Contemporary Art(ロンドン)ではコミッションによるパフォーマンスを実施している。
Instagram(@devilintraining_

【岡山芸術交流2022「僕らは同じ空のもと夢をみているのだろうか」】

会期: 開催中~1127日(日)
時間: 開館時間:9:0017:00(最終入場は16:30まで)※一部、開催時間が異なる施設があります。
休館日: 月曜日
会場: 10カ所(旧内山下小学校、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館、シネマ・クレール丸の内、林原美術館、岡山後楽園、岡山神社、石山公園、岡山城、岡山天満屋)

公式サイト

柴原聡子

建築設計事務所や美術館勤務を経て、フリーランスの編集・企画・執筆・広報として活動。建築やアートにかかわる記事の執筆、印刷物やウェブサイトを制作するほか、展覧会やイベントの企画・広報も行う。企画した展覧会に「ファンタスマ――ケイト・ロードの標本室」、「スタジオ・ムンバイ 夏の家」など

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