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歌舞伎役者・片岡千之助を解剖 vol.2|20歳を目前にして2つの大役と向き合った

歌舞伎役者・片岡千之助を解剖 vol.2|20歳を目前にして2つの大役と向き合った

梨園の名家に生まれ、3歳から歌舞伎道を歩む新鋭の役者だ。一方で大学にも通い、同世代の友達との時間やカラオケと映画鑑賞も楽しむ。さまざまな環境に身を置き、芸の糧にしていく。20歳を迎えた今、思うこと、これからを聞いてみた。#片岡千之助を解剖


 

20歳を目前にして
2つの大役と向き合った

2020年の初め、千之助さんにとっては10代のラストでもある『二月大歌舞伎』の演目『菅原伝授手習鑑』で、物語の鍵を握る苅屋姫にキャスティングされた。仁左衛門さんが演じる菅丞相の養女で、帝の弟と恋に落ちる。愛しい人との逢瀬が父・菅丞相を窮地に立たせる。

「配役を聞いた時に、何かの冗談かと思いました。だって、物語の要となるのは、祖父と(坂東)玉三郎のおじちゃまと僕なのですから」

女方の経験も少ないため、立女形(一座の中で最高位の役者)の玉三郎さんに型を教わった。

「とにかく型を染み込ませるのに、必死でしたね。そうして迎えた公演も試行錯誤の連続。苅屋姫の意識がかたまってきたのは、千穐楽の1週間くらい前です。もがき続ける日々で、いったん、教わってきた型を無にして、心を優先させてもらった回があったんです。そしたら、型と想いがピタッとハマった。その瞬間に、霞が晴れました。誰よりも玉三郎のおじちゃまが、喜んでくださって。10代最後の舞台で、大きな大きな経験をさせていただきました。第一線を走る方の芸との対峙法を目の当たりにできた経験も含めて、僕の宝物です」

さかのぼって、2018年12月。京都・南座での公演『義経千本桜 木の実』も、彼にとっては試練であったそう。

「京都から東京へ戻る際に『脱出だー!』って、つぶやいていたんです。役に没入している間は気づかなかったけれど、慣れ親しんだ東京を離れていることに、神経を張り巡らせていたんでしょうね。実は、ちょっとコンディションが優れない日々が続きました。それからというもの、体調管理にも気を配るように。大変な思いをしましたが、人生に無駄なできごとはひとつもないんですよね」

2020年も12月19日まで南座の『吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎』に出演している。東京生まれの千之助さんにとって、京都はどんな街?「人間関係が濃いですね。あと、住んでいたわけではないのに、そこはかとなく懐かしさを覚える。ご先祖さんとの縁が深いからかな? 足を踏み入れるたびに不思議な感情に包まれます」

祖父の仁左衛門さんは上方歌舞伎の再興にも力を尽くす。いつか、演じてみたい気持ちはある?「もちろん! 特に『廓文章 吉田屋』『女殺油地獄』『封印切』に出たいです。まずは、難関でもある関西弁の習得から取りかかります」

 

演者と芸術監督が両立してこそ
歌舞伎役者でもある 

舞台に上がる際には、白粉と隈取りの独特な化粧を自身で施す。“顔をしている”(メイクアップ)時間は役になりきるうえでも、大切だと語る。

「焦点を当てる部分を化粧で決めていきます。たとえば、顔を大きく見せたい場合は眉毛を広げて描く。目の角度を変える時には、目張りをちょっと上にする。といったように。ここでは、どのように見られたいか、ディレクション力が求められる。役に対しての俯瞰性が大切な一面ですね。集中力を研ぎ澄ませるため、白檀や沈香をブレンドした塗香を体にはたいています。新鮮なアロマが広がると空気もピンと張って、背筋が伸びるんですよ。また、香りを感じることで、役のスイッチがオンになる。およそ1カ月の公演では、感情のピークを舞台に持っていくための工夫が必要になります。朝はできるだけニュートラルな状態で、楽屋に入る。イレギュラーなできごとによって、心が乱されないためにも、“顔をしている”までの行動をルーティン化しています」

そして、ここでもあの方の振る舞いを見習う。

「ちょうど昨日、祖父の“顔をしているところ”に、おじゃましました。手で眉、目、鼻を仕上げるんですけれど、ぼかし具合が絶妙で。いつ見ても惚れ惚れ。鏡の前で仁左衛門さんのマネをしますが、まだまだ足元にもおよびません。精進します」

仁左衛門さんが“顔をしているところ”は技術だけでなく芝居観でも、影響が大きいと続ける。

「“顔をしている”傍らで『周りが口にするのは、期待でもあるからね』と声をかけてくださいました。会話から僕のゆらぎを察知してくれたんですよ。祖父の一挙一動には、愛があふれています。あぁ、三度の飯より歌舞伎が好き、っていうのはこういうことなんだと。目上の、しかも身内に抱くのはおかしいのかもしれませんが、ピュアだな〜って。先日も親友から『千之助から見ておじいさんのかっこいいところは?』と質問されました。『全部!』と即答。役者として、完璧なんですよ」

 

顔をする

 

 

外国の文化を理解し
日本の魅力を再発見

大学では比較芸術学科に籍を置く。

「西洋の文化を学ぶなかで、日本の芸術が育む繊細さに、あらためて胸を打つようになりました。ヨーロッパの芸術に対する意識の強さにも刺激を受けています。日本は歴史と文化の深みを持ちながらも、そこに対する感覚は薄れてしまっているような気がする。歌舞伎という伝統芸能を通じて、その魅力を発信していけるようになりたい」

新しい知識を吸収するキャンパスではどんな装いをしているのか、気になった。

「白か黒が中心のシンプルな服装です。モードなテイストを取り入れたいと思いながらも、まだ手が出ないですね。香りが好きなので、それで雰囲気を変えるかな。スパイシーで甘いディプティックのド ソンはよくつけていて、最近、FIVEISM×THREEのウッディなアロマも気に入りました。あと、キールズのヘアオイルのさわやかさもいい」

 

香りで彩る

片岡千之助 歌舞伎 インタビュー
気分に応じてアレンジ。左から時計回りに 高野山太師堂 高野山の極上塗香 ¥1,800(高野山太師堂 | 高野霊香)/オード トワレ ド ソン 50ml ¥12,500(ディプティック | ディプティック Tel: 03-6450-5735)/タッチング フロム ア ディスタンス フューチャー メモリー50ml ¥12,000(FIVEISM × THREE | FIVEISM × THREEカスタマーサポート Tel: 0120-330-019)/キールズ スムージング ヘアオイル 75ml ¥2,900(キールズ Tel: 0120-493-222)

片岡千之助 かたおか・せんのすけ

2000年生まれ。2004年、初代片岡千之助として歌舞伎座にて初舞台を踏む。2020年秋〈パシャ ドゥ カルティエ〉のアチーバー就任でも話題に。

Photo: Masahiro Sambe(cover)、Kaori Ouchi (object)   Styling: Naomi Shimizu   Hair&Make-up: Hiroko Ishikawa   Text&Edit: Mako Matsuoka

GINZA2021年1月号掲載

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