愛らしいそばかすに、スラリと長い脚。18歳とは思えない、何もかもを悟ったようなその瞳。(あれ、もしかしたら眠たいだけなのかも……?) なんだかとにかく目が離せないモデルのモトーラ世理奈さんが、この夏、映画『少女邂逅』で堂々の女優デビュー。田園風景が広がる田舎町を舞台に描かれた少女たちの青春ストーリー。ファッション誌では見ることのできない、みずみずしいモトーラさんの演技に注目です!
——モトーラさんにとって映画出演はほぼ初とのことですが、決まったときのお気持ちは?
オーディションを受けたのは昨年冬でした。正直全然うまくできないまま終わってしまって、その日は肩を落として帰ったんです。だから結果を聞いたとき、すごく驚きました。しかも自分はミユリ役(保紫さん演じる相方役)だと思って受けていたのに、いただいたのが紬役だったのでさらに驚きました。紬という女の子は、複雑な過去や内に秘めた繊細な感情を持っている人間。長編映画で演技をするのは今回が初めてということもあって、「いきなり難しそうな役だな」という気持ちと、楽しみな気持ちが半々でした。
——初めてのこともたくさんあって大変だったのではないでしょうか。
本番前に何日かリハーサルがあったんですけど、ミユリと紬が森の中で激しくもみ合うシーンは何度もやり直しになってしまって、自分が足を引っ張っていると思うと焦るばかりだし、この撮影の中で一番苦しい時間だった気がします。私が煮詰まっているのを見て、枝監督が「泣きたくなかったら泣かなくていいし、言いたくなかったら言わなくていい。台本のままじゃなくていいよ」と言ってくださったので、気持ちが少し楽になりました。監督と話しているうちにだんだん紬の人生がわかってきて、クランクインする頃には、すっと紬の気持ちを想像できるようになったんです。
——枝監督の故郷でもある群馬県高崎市で、泊まり込みで撮影をされたそうですね。
キャストもスタッフの方も全員一緒に、一つ屋根の下で2週間過ごしました。私は一人っ子なので集団生活が新鮮だったし、楽しくて仕方なかったです! 学校帰りに自転車に二人乗りして田んぼ道を帰ったり、あんな大自然に囲まれた場所で学生生活を送ってみたかったなって思いました。(モトーラさんは東京生まれ東京育ち)
——紬と深い関係になっていくミユリ役の保紫さんとは、現場でどんなコミュニケーションをとられたのでしょう。
保紫さんは、いつも何を考えているのかわからなくて(笑)。だから初めて顔合わせで会ったときはけっこう距離があって、撮影が始まって一緒に帰るようになり徐々に打ち解けていった感じです。LINE交換したのも、しばらく経ってからでした。映画の中でお互いをiPhoneで撮り合うシーンが出てくるんです。喫茶店でクリームソーダを飲んでいるシーンは、自分的にもミユリのことをかなり可愛く撮れたのでぜひ観てほしいです。あの時間は、紬とミユリにとっても一番キラキラしている2人の時間なんです。予告編でも少し見られるので、ぜひ!
先立って公開された予告編の動画再生回数は、なんと150万回超え!
——モトーラさん自身もけっこう謎めいていると思うのですが(笑)、紬とご自身のキャラクターとは近い部分がありましたか?
最初に台本を読んだとき、紬は自分と正反対の性格だって思っていたんです。いじめられていたミユリの前に突然現れて、ぐいぐい手を引いて連れて出してくれるような、カッコイイ女の子だと思っていたから。だけど紬を演じていくうちに、本当は紬も過去に同じような辛い経験をしていて、ミユリの痛みがわかるからこそ、そういう行動をしていたんだって気づいた瞬間があって。私と紬は生い立ちも全然違うけど、人の気持ちを敏感に察してしまうところが似ているなって思いました。普通に話していても、どこかで相手の思っていることを勘ぐってしまうというか。
——紬とミユリのような友人関係はモトーラさんの身近にもありますか?
映画にも出てきた女の子特有のカーストみたいな世界って、割とどこにでもあるじゃないですか。私も小学生時代に体験したことがあって、すごく辛かった時期に、一人だけずっと変わらず側にいてくれた友だちがいたんです。その子がいたから、毎日頑張って学校に行こうって思えたんですよね。高校時代にも親友と呼べる友だちができたんですけど、その子も私も、集団でいるのがしんどくなっちゃうことがたまにあって。本当はバスを使う道を、2人で話しながら帰ったりしていました。
——モデルとしてファッションの現場で活躍されていますが、今回演技に挑戦してみて、女優活動に興味を持たれましたか?
雑誌の撮影は1日で終わることが多いけど、映画は長いスパンで取り組むものなのでとても濃厚でした。それと、スチール撮影は、スタイリストさんやフォトグラファーさんと一緒に“モトーラ世理奈”としてものづくりに参加している感覚なのですが、映画の撮影は自分じゃない誰かになりきって参加しているような不思議な感じ。その感覚に戸惑うこともあり、やりがいも感じました。これからも機会があれば演技に挑戦していきたいと思っています。
モトーラ世理奈
もとーら・せりな>>1988年東京都生まれ。高校生でモデルデビューを果たし、雑誌や広告などでラブコールが止まない存在に。昨年秋に発売されたRAD WIMPSのアルバム『人間開花』で顔どアップの写真がジャケットを飾り、話題となる。特技は変顔。この夏、映画『少女邂逅』で女優として長編映画デビューを果たした。
©映画「少女邂逅」製作委員会
『少女邂逅』
出演:保紫萌香、モトーラ世理奈、松浦祐也、松澤匠 ほか
監督・脚本・編集:枝優花
音楽:水本夏絵
8/15より新宿K’sシネマ、渋谷UPLINKほかにて順次公開予定
学校でのいじめをきっかけに声が出なくなった小原ミユリ。唯一の友達は、山の中で拾った蚕。ミユリは蚕に「紬」と名付け、こっそり大切に飼っていたが、いじめっ子の清水に蚕の存在がバレ、捨てられてしまう。生きる希望を失ったミユリの前に、「紬」という名前の少女が現れる。
Photo: Kodai Kobayashi Text: Satoko Muroga