スケート・キッチンの恋、仕事、結婚。NYを拠点とするガールズスケートクルーの本音を聞く

スケート・キッチンの恋、仕事、結婚。NYを拠点とするガールズスケートクルーの本音を聞く

NY・マンハッタン発のガールズスケートクルー「スケート・キッチン」。Miu Miuによる映像プロジェクトの一環で作られた短編に出演し、世界中から注目を集めた彼女たちが今回、長編映画に堂々の初出演!しかも現実と同じくスケート・キッチン役として。リアルと虚構が入り混じる新感覚映画、その名も『スケート・キッチン』を引っさげ、カブリーナ、アジャニ、双子のジュールスとブレンの4人のクルーが来日。まだ男性に比べると少ないガールスケーターだけど、ピンと胸を張って活動しているカッコイイ彼女たちの素顔が知りたくて、プライベートを中心に伺いました。まずは気になる恋愛事情から。


 

誰に彼氏がいる/いないは
話さなくてもほぼ把握してる

──映画『スケート・キッチン』、おもしろかったです!17歳の内気な主人公カミーユ(実際のスケート・キッチンのクルー、レイチェルが演じる)が、スケート・キッチンの仲間たちとの出会いをきっかけに成長していく青春物語ですね。ひとつ気になるんですが、カミーユはクールなスケーター男子・デヴォン(ウィル・スミスの息子で、俳優・ラッパーのジェイデン・スミスが演じる)と恋仲になりかけますよね。だけど彼は、主人公の仲間・ジャネイ(レイチェルと同じく実際のクルー、アーディーリアが演じる)の元カレで、カミーユがデヴォンとつるんでることが明らかになったときの、スケート・キッチンのみんなの反応が恐ろしかったんです。特に何がかというと、SNSでレイチェルを晒し者にしたこと。実際にそういうことが起こりうるのかなと想像すると、思わず震えました……。

一同 Oh!(爆笑)

ジュールス・ロレンゾ(以下、ジュールス) 現実と映画は違うから!(笑)その子との関係性にもよるけど、相手が親友なら何があったとしても、SNSでその子を晒すようなことはしないです。そもそも「なんでわたしの男に手出すのよ!」とかってSNSに書くような、ヒステリックなタイプでもないしね。どちらかといえば、相手に直接文句を言いに行くかな。

アジャニ・ラッセル(以下、アジャニ) 友だち同士の信頼関係を裏切るような行為をしたら、怒るのは当然だとは思うけど。映画の中でジャネイは、元カレのデヴォンのことをまだ忘れ切れていない。なのにカミーユはそんな彼に手を出したし、しかも彼と遊んでることを仲間に黙っていた。だから(映画の中の)スケート・キッチンのクルーは全員、カミーユに対して怒ったんだと思う。

 

──現実的に仲間をSNSで貶めるようなことはしないけど、でも映画の中のクルーの怒りは正しい感情だったということですね。実際のスケート・キッチンにもそういう、お互いの恋愛に関するルールのようなものはあります?

カブリーナ・アダムズ(以下、カブリーナ) 友だちの元カレに手を出さないのは常識でしょ!

ジュールス そのとおり!ただ世の中にはときどき、そういう常識を全然気にしない人もいるけどね。元ルームメイトの女の子は、自分が以前関係をもった男の子をわたしに勧めてきたりしたの。わたしからしたら、そんなの変。「なんで?」って感じ。もし自分が誰かと付き合ってたとしたら、知り合いには「他の人と付き合ってよね」と絶対思うし。

カブリーナ もしその元ルームメイトの子がいろんな人とデートするのが純粋に好きなんだったとしたら、それはある意味彼女の自由だし、その場合はまだマシだけど。

ジュールス それでもやっぱり、何考えてるんだかよくわからないけどね。

スケート・キッチン インタビュー

左からアジャニ・ラッセル、カブリーナ・アダムズ、ブレン・ロレンゾ、ジュールス・ロレンゾ

──友情も恋も大切にしたいからこそ、暗黙のルールがあるわけですね。じゃあクルー内で、お互いの恋愛はオープンにしていますか?

ブレン・ロレンゾ(以下、ブレン) わざわざ自分から全員に「こんなことがあってね、それでね……」なんて話すことはしないけど、誰に彼氏がいるか/いないかは、なんとなく把握し合ってるかな。友だち同士だしね!

カブリーナ あれ?もしかしてそれとなく、わたしの最近の恋愛のことを言ってる……?(笑)

ブレン え?違う違う!全体的な話だよ!ちょっと〜、落ち着いてよね!(笑)

カブリーナ あはは!

ブレン わたしとジュールスの彼氏はそれぞれスケーター男子なの。それはわたしたちにとって、一緒にいてたのしいし最高にクールなことなんだけどね……って、ちょっとみんなも普段みたいにもっと話してよ!(笑)スケート・キッチンはみんな、恋バナが大好きなんだよね(と言って、しばしキャーキャー早口で盛り上がる)。

スケート・キッチン インタビュー
 

スケートボードにトップレス。
女性だってやりたいようにやるべき

──「スケート・キッチン」というクルー名のきっかけは、映画の主人公を演じたレイチェルが観ていたスケーター女子の動画に、「女性はスケボーなんてせずにキッチンにいるべきだ!」という旧態然としたコメントがたくさんついていたことだと伺いました。それを逆手にとって「わたしたちはスケート・キッチンで自由にやらせてもらうよ」と表明したわけですね。粋なカウンターに胸を打たれたのですが、“フェミニズム”という考え方についてはどう捉えていますか?

カブリーナ 当初のフェミニズムは、平等な世の中を目指すためのポジティブな考えだったと思うんです。だけど最近は、男性をネガティブなものとして排除しようとするだけのムーブメントのように感じることもあります。わたし自身としては、男女が公平で対等な関係でいられることが、フェミニズムの理想的なかたちだと考えています。

 

──カブリーナは“おっぱいを解放”するための「Freemyboobs」という活動を行っていて、普段から上半身の服を脱ぎ、ニプレスだけで過ごすことも多いんですよね。今回の映画の中でも、カラフルなニプレス姿が印象的でした。

カブリーナ トップレスになることで、世の中に対して実験をしているんです。先進国と言われる国では、男性がシャツを脱いでいても「服を着ろ!」と言われないのに、なんで女性の場合はそうはいかないんだろうと不思議に思っていて。

 

──勇気ある実験ですね……!周りの反応はどうですか?

カブリーナ 面と向かって「シャツを着なよ」と言ってくる人は少ないけど、わたしに聞こえないところで「着た方がいいんじゃない?」と陰口を言う人は結構いるみたいです。そういえばあるパーティーでは、ニプレスさえつけずに上半身裸で過ごしたこともあったな……その時はみんな酔っぱらっていたせいか、誰にも何も言われなかったですね。

スケート・キッチン インタビュー

──スケートボードカルチャー自体も、「男がやるのが普通」と考えられているんだなということは、今回の映画を観ていても感じました。たとえば映画の中で、スケート・キッチンのみんなはたびたび「女なめんな」とばかりに、スケーター男子たちと喧嘩していましたよね。

アジャニ LESパーク(NY・マンハッタンのチャイナタウン付近に実在するスケートパーク)での喧嘩シーンの撮影は、かなり印象に残ってます。というのはこの作品に出てくるスケーター男子はだいたい仲のいい友だちで、普段あんなふうに喧嘩することはないから。撮影中はお互い、本当に怒っているみたいに演技をしなくちゃいけなくて、普段とのギャップがおかしくて、みんな笑いをこらえるのが大変でした(笑)。

ジュールス ときには男の子から揚げ足をとられるようなことを言われることもあるけれど、映画では実際よりも大げさに描写しているので、実際にはあそこまで激しい喧嘩の経験はないですね。

 

──あそこまで激しくないとはいえ、実際にガールスケーターだからという理由で不当な思いをすることもあるんですね?

ジュールス ええ。男同士なら何も言わないのに、わたしが女だからというだけの理由で「スケボーは危ないよ」とわざわざ言ってきたり、そうかと思えば、次の瞬間にはナンパしてきたりね。

アジャニ 男の子たちが「普段何してるの?」と聞いてきたから「スケートボード」と答えたら、バカにした感じで笑われたこともある。男の子だけじゃなくて、女の子も「なんでスケボーなんかしてるの?」ってわざわざ聞いてきたりとか。あと、スケートパークでは大きなランプ(スケートボードで走るための半円状の構造物)を交代で滑るんだけど、男の子ばかりが列に並んでいると、順番を抜かされて滑らせてもらえないこともある。

 

──そんなふうに、差別的な意地悪をされたときの対処法は?

ジュールス ランプの順番を譲ってくれないときは、タイミングを見て強行突破してる。あと街中でボードを持って歩いていると、男の人が「ねえトリックやってみせてよ」とか声を掛けてくるんです。だいたい無視するんだけど、たまにイラっときたときは、「まずは自分からやってよ。見せてくれたらわたしもやるよ」って返してる。

 

──タフだなぁ!そういうムカつくことが起きて、むしゃくしゃしてどうにもやりきれないときってみんなにもあると思うんだけど、どうやって気分を発散していますか?

ジュールス 自分のことをハッピーにしてくれる友だちに会いに行く!

ブレン 呼吸のエクササイズをするかな。呼吸が浅くなると感情をコントロールしづらくなるので、とにかく深呼吸をするんです。あるいは、思いっきり泣いて発散することもある。あとは問題点を明らかにした上で、どうしたら解決できるかをロジカルに整理してみるとかね。

カブリーナ むしゃくしゃしたときにもしボードを持って外にいたら、スケートパークに行って、とにかく滑りに集中する。リラックスできるから。

アジャニ 寝る!(そのときアジャニはすでに床の隅に寝転び、まどろんでいたので、一同笑う)アトリエに行って、絵やオブジェなどのアートを制作する!それか、すごく長い時間散歩をする!

 

結婚する、映画監督になる、
アートクラスを開く…4人の未来予想図

──固定観念に流されないみんなにだからこそ聞きたいんだけど、フルタイムの仕事に就くとか結婚するとか、人々が普通に歩んでいる人生のレールについては、どう考えていますか?

アジャニ “nine-to-five-job(9時から5時まで働く、いわゆる普通の仕事)”は絶対にしない!結婚したいかはまだわからないけど、もし結婚したとしても、フルタイムでは絶対に働かないな。

ブレン わたしは今、NYのSOHOにある「KITH」というスニーカーショップでバイトしているんだけど、ずっとこの仕事を続ける気はないかな。でも今の環境で出会える人もいるから、そうしてできた繋がりを活用しつつ、次のステップに進みたいとは思っています。結婚はしたいなぁ。

ジュールス いつか結婚したいけど、なるべく遅めがいいなと思う。仕事に関しては、2年くらい前はフルタイムで働いていたんだけど、そういう生活に戻るつもりはないです。今は映画の学校に通っているから、以前みたいに働いたら、映画の勉強もスケートボードもできなくなってしまうと思うから。

スケート・キッチン インタビュー

──では少し質問を変えて、何をしてお金を稼ぎ、生活をしていくのが自分にとって理想的だと思いますか?

カブリーナ これ一本でという何かは特になくて、今やっている活動をちゃんと続けていきたい。具体的に言うと、環境に優しいサステナブルなウエアや、freemyboobsのメッセージを伝えられるようなアクセサリーをもっと作りたい。たとえば、おっぱいのかたちをしたストレスボールを作ってWEBSHOPで売っているんだけど、そういう感じのものだったりね。

アジャニ 地球のために何かをしたり、人助けをしたりして生きていきたいです。たとえば、アートに触れるチャンスがない子どもたちのためのアートクラスを開けたらいいな。

スケート・キッチン インタビュー

ジュールス わたしは映画を学んでいるから、監督や脚本家、演技で食べていけるようになりたい。それか……、小さなときからロックバンドのボーカルをやりたいと思ってるんだけど、バンドメンバーが見つからないんだよねー(笑)。

カブリーナ それなら全部自分でやればいいじゃん(笑)。

一同 (笑)

アジャニ それがいいよ!PCで曲を作って、歌ってさ。

──いつか聴けるのをたのしみにしてます(笑)。今日はみなさんそれぞれのユニークなお話を伺えて、改めてスケート・キッチンというクルーに魅了されました。本当にありがとうございました!

スケート・キッチン インタビュー


『スケート・キッチン』
監督・脚本:クリスタル・モーゼル
出演:スケート・キッチン、ジェイデン・スミス、エリザベス・ロドリゲス
原題:Skate Kitchen
2018年/アメリカ/106分/カラー/R15+
配給:パルコ
2019年5月10日(金)より渋谷シネクイント他全国順次公開中
ⓒ2017 Skate Girl Film LLC.
skatekitchen.jp/

スケート・キッチン Skate Kitchen

カブリーナ・アダムズ/ニーナ・モラン/ジュールス・ロレンゾ/アーディーリア・ラブレス/レイチェル・ヴィンベルク/アジャニ・ラッセル/ブレン・ロレンゾの7人で構成されるガールズスケートクルー。 女性はキッチンにいるべきだという固定観念を打破すべく結成されたクルーで、自分たちの居場所であるスケートパークを“キッチン”としている。
@theskatekitchen

Photo: Midori Kondoh Text: Hiromi Kajiyama Edit: Milli Kawaguchi

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