ファッション業界紳士の偏愛趣味 vol.3 デザイナー細谷武司さんが明かす仮面ライダーロケ地巡りの真相

ファッション業界紳士の偏愛趣味 vol.3 デザイナー細谷武司さんが明かす仮面ライダーロケ地巡りの真相

ファッションに関わる男性たちの一風変わった趣味に迫っていく連載、「ファッション業界紳士の偏愛趣味」。ギークな紳士の方々による偏よりまくった趣味話は、必ずやみなさんの好奇心と知識欲を刺激してくれることでしょう。


PEEL&LIFTデザイナーが仮面ライダーのロケ地巡り

〈PEEL&LIFT〉のデザイナーである細谷武司さんは、知る人ぞ知る仮面ライダーロケ地巡りマニア。そう、ただの仮面ライダーではなく、ロケ地巡りのマニアというのが肝である。というのも、そのためにスイスにまで行きながら、仮面ライダー自体はそれほど好きじゃないらしい?ってことで、その真相を究明してきました!

 

ロケ地巡りをしている人を見て
やり方が甘いんじゃないかと

 

──ロケ地を巡り始めてどれくらいですか。

ちょうど10年くらいですね。

 

──きっかけは何だったんでしょう?

『犬神家の一族』という映画が昔から好きで、友達と飲んでいるときにロケで使われていた湖に行ってみようと盛り上がって、実際に長野まで行ったんです。それで、適当に予約した宿が実際の撮影地だったという偶然もあったので、ちょっと感動して。その辺りの古い家のいくつかが使われていることもわかり、調べながら順番に回ったんですよ。そもそものきっかけはそれですね。

 

──ロケ地巡りの原点は、“スケキヨ”でしたか。

そのあとネットでたまたま仮面ライダーのロケ地巡りをしている人を見つけ、改めて調べてみたら、これだけメジャーな作品のわりに細かく巡っている人が全然見当たらず、やり方が甘いんじゃないかって思ったんです(笑)。もともとが物事に凝る性格で、気になり始めていたところ、ちょうどGoogleマップのストリートビューのサービスがスタートしていて、そこからどんどんハマっちゃって。

PEEL&LIFTデザイナーが仮面ライダーのロケ地巡り

──もろもろ、ちょうどいいタイミングだったと。

それまでは、セックス・ピストルズとヴィヴィアン・ウエストウッドの昔の洋服が好きで、ずっとそればかり追いかけていました。ジョニー・ロットンが着ている洋服に付いている、あのバッジは何だろうとか。ネットオークションのeBayにも参加して、昔のものを集めていたんですけど、結構やり尽くした感じが出てきて。だから、無意識ながら次にハマれるものを欲していたのかもしれません。洋服を買うのはお金もかかりますが、ロケ地を巡るのは交通費だけで済みますし(笑)。

 

──仮面ライダーがそこまでお好きだったわけではない?

知識としてはありましたけど、すごく好きでずっと観てきたというわけではありません。これだけやっていると、周りの仮面ライダーマニアには信じてもらえませんけど。そうは言ってもさすがに好きだろうって(笑)。

 

 

リサーチはネットや国会図書館から
出演者やスタッフへの聞き込みまで!

 

──そうして、ロケ地巡りをスタートさせました。

主人公である本郷猛/仮面ライダー1号役の藤岡弘、さんが撮影中にバイクで転倒して、治療のために休んでいた時期があるんですが、そこまでの第1話から第13話はマニアの間で「旧1号編」と呼ばれていて、神格化されているんです。まずはその分だけロケ地を回ってブログに上げようと。全カットのアングルを押さえると決め、休みのたびに撮影が行われていた生田(川崎市多摩区。小田急線で新宿駅から生田駅までは約40分。近くに遊園地のよみうりランドがある)まで来るようになりました

 

──全カット(笑)。生田へ通う日々の始まりですね。

でも、あるとき、劇中で本郷猛が住んでいるというマンションに行ってみたら、「空室あり」の貼り紙があって。写真を撮りたくて内見してみたところ、古いマンションってこともあってか、広いわりに家賃も安く、リフォームもそれなりにしてあり、3日後には引っ越すことを決めていました。それ以来、ずっと生田の辺りに住んでいるので通う必要はなくなりましたね(笑)。

 

──仮面ライダーは、どうして生田周辺で撮影されているんでしょうか。

50年ほど前は撮影所などでもストライキが盛んに行われていて、それを回避するために東映が練馬の東京撮影所から離れたところに借りたスタジオが生田にあったんです。このあとご案内するのはその跡地です(屋外での写真は、スタジオ跡地とその周辺で撮影されたもの)。そこを本拠地として仮面ライダーが制作されるわけですが、子供番組のため予算もなく、半径10km以内で撮影しろという指示があったらしいんです。そういうこともあって、すべてのロケ地を回れるんじゃないかと思ってしまったんですよね(笑)。

PEEL&LIFTデザイナーが仮面ライダーのロケ地巡り

──ロケ地について調べるのは主にネットですか。

いまはストリートビューでだいたいのところを見られるようになりましたが、最初は都内とか各都市の中心部だけでしたから、苦労しましたね。それと、当時の地図や航空写真を手に入れて、それで場所を確認したり。国会図書館に行ったりもしています。

 

──出演者やスタッフのトークイベントで聞き込みをしたともうかがいました(笑)。

トークイベントはラフな感じで、そのあとに懇親会という名の飲み会が開かれるので、写真などを持ち込んで聞いてはみるものの、みなさん覚えていなくて。プロデューサーは行っていないし、役者も1日撮影しただけの場所を覚えていない。結局、頼りになるのは助監督くらいの人で、台本の書き込みを見せてもらったりしました。そういった縁もあって、撮影所の所長だった人と仲良くなり、仮面ライダー40周年のイベントにはスタッフとして関わっていますし、プロデューサーの方の葬儀を手伝ったりもしています。

 

──当然、マニアの方たちとのつながりもありますよね。

ずっと単独行動だったんですが、何年か前にオフ会をやろうと思い立ち、ブログで呼びかけたら結構な人数が集まりました。みんなで一緒にロケ地を回りましたよ。集まった人たちの中には、ネットなどでは発信していないものの、すごくくわしい人もいらっしゃって。生田スタジオが好きすぎて地方から通い、地主の人からスタジオの図面を譲り受けたりしていますから。近所の人とも仲が良いんですけど、誰よりも町の成り立ちにくわしいという(笑)。いまでは2カ月に1度くらい、オフ会で知り合ったメンバーが議題を持ち寄ってミーティングもしています。

PEEL&LIFTデザイナーが仮面ライダーのロケ地巡り

 

いまやブログやSNSのみならず
コミケで同人誌を販売するまでに。

 

──これまでに回ったロケ地はどれくらいの数になるんでしょうか。

数えていないのでわかりません。生田の周辺だけでも無数にありますし、地方も熱海や草津をはじめ、北海道から沖縄まで行きました。ちなみに、唯一の海外がスイスです。実際に海外で行われたロケはないものの、写真だけが登場した教会があるんです。仕事でフィレンツェに行った足で、ローカル線に乗って国境を超え、スイスまで行ってその教会の写真を撮ってきました(笑)。

 

──ほかに、印象に残っているところと言いますと?

特にどこというのはありませんが、断崖絶壁みたいなところで死にそうな経験をしたことは何回かあります(笑)。ロケ地を巡っているおかげで、いろいろなスキルが身につきましたね。例えば、廃墟になっている場合もあるので、廃墟巡りをしている人のブログや本で、どうやったらそこに行けるのか調べて実践したり、山小屋なんかはストリートビューでは探しても見つけられないので、やっぱり山登りをしている人のブログや本で、場所や行き方を調べたり。いろいろな方面のスキルが必要になるんです。

 

──ロケ地巡りのいちばんの喜びは何ですか。

やっぱりロケ地を見つけたときのテンションがいちばん高いですかね。行って写真を撮れれば、それが何よりの喜び。思っていたところと違って帰ってくると、かなりモヤモヤします(笑)。最初の頃はそれの連続で、1日が終わることも多かったですけど。

 

──ブログから始め、ツイッターとインスタへと広がり、数年前からは同人誌も作られているんですよね。

自作したコスチュームを自ら着て撮影したものなんかは、インスタのほうに載せることが多いです。同人誌は2015年から作り始め、1クール、12話ずつくらいで区切り、いままでに5冊を出しました。コミケで売っているんですが、1回で100部ほど作っています。

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──10年が経っても、まだまだ飽きることはなさそうですね。

最初のシリーズが第98話まであるんですけど、それは最後までやるとして、そのあとのシリーズまで続けるかどうか。コーディネイトを任されたロケ地を巡るバスツアーで藤岡弘、さんに会え、一緒に温泉に入るところまで来ましたけど、まだ飽きてはいないです(笑)。

PEEL&LIFTデザイナーが仮面ライダーのロケ地巡り

細谷武司 Takeshi Hosoya

〈UNDERCOVER〉青山本店の店長を経て、2005年にブランド〈PEEL&LIFT〉を立ち上げる。70年代英国のパンク音楽を中心としたカウンターカルチャーをイメージに現代的解釈を加え、再構築したコレクションを展開している。

【〈PEEL&LIFT〉デザイナーとして】
instagram: @takeshi_hosoya
blog: peelandlift.blogspot.com
【ロケ地巡りについて】
instagram: @yartsensei
blog: tourofancientbattlefield.blogspot.com

Photographer: MURAKEN Text:Yusuke Matsuyama   Edit:Karin Ohira

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