国際舞台での活動も目覚ましい山下智久さん。ブランドアンバサダーを務める〈ブルガリ〉とタイアップしたラブソング「Forever in My Heart」が配信リリースされました。この新曲の制作背景から、国内外の話題作への出演が相次いでいる俳優業まで話を聞くうち、一見物静かな山下さんが今、表現者として誰よりも果敢に攻めている理由が見えてきました。
山下智久が新曲で歌った“永遠”への憧れ。「いつも不安で不確か。だから進化しようとする」
──キラキラ輝くビジュー付きのシャツ、とってもお似合いです!
ありがとうございます、(いたずらっぽい表情で)キラキラし慣れてます(笑)。
──冗談のおつもりだと思いますが、実際にそのとおりですよ。
いえいえ。スタイリストさんの力あるのみ、です。普段はわりとシンプルな格好しかしないので。よく着る色は、白とか青とか。TPOに合わせてアクセサリーで気分を変えたりするのも好きで、まぁ年相応にいきたいなと思ってます。
──新曲「Forever in My Heart」は、ブランドアンバサダーを務めている〈ブルガリ〉とのタイアップ曲ですね。作詞も手掛けていますが、〈ブルガリ〉からどんなインスピレーションを得ましたか?
「永遠」というキーワードです。それが、〈ブルガリ〉が持つ普遍性と、ラブソングとの共通点になると思いました。
──永遠、ですか。
永遠を実現するのは不可能に近いんですけど、人としてどこか憧れてしまう部分もあって。少しでも永遠に近づきたいという、不安定で不確かな思いを、「愛」というテーマに絡められたらいいなと。そんなことをぼんやり考えながら、iPadに向かって詞を書きました。
──この曲の歌詞は英語がメインです。これまでも英語で作詞してきたと思いますが、日本語のときと、何か作詞の意識は変わりますか?
英語で作詞する場合は、まず自分でバーッと書いてから先生に直してもらいます。細かいニュアンスがわからないときもあるし、ボキャブラリーの数もまだ日本語とは全然違うので。どうしても英語だとシンプルな表現を選ぶことが多いぶん、むしろリスナーの方には思いをまっすぐ受け取ってもらいやすいかもしれない。
──外国語のほうがかえって素直に思いを伝えられると。コミュニケーションにおいてもそういうことってありますよね。
たしかにボキャブラリーが多いと、かえって回りくどくなったりするかもしれないですね。英語のほうが本心をズバッと伝えられるというか。
──コミュニケーションで大事なのは、語彙力だけじゃないってことですね。
声のトーンとか仕草とか、全部が合わさってコミュニケーションだと思うので。だから海外の現場に行っても、意外となんとか生きていけますね(笑)。
──2022年は、NHKドラマ『正直不動産』と、ハリウッド共同制作ドラマ『TOKYO VICE』に出演。前者では祟りで嘘がつけなくなったユーモラスな不動産営業マン役、後者ではお金がすべての非情な売れっ子ホスト役という、対照的な2役を演じわけていました。
撮影は全然別のタイミングだったんですけどね。
──とはいえ2作が同じ時期に放送されていたので、幅広い反響があったんじゃないでしょうか?
はい。すごくありがたいタイミングで、同時にオンエアしてくださって。俳優としての醍醐味ですよね、職業も人格も全く違うベクトルの人間を演じられるっていうのは。
──俳優さんにインタビューしていると、「演じた役は実人生にも影響する」と言う方が結構いるんですが、山下さんにもそういう感覚はありますか?
ありますね。ずっと「この役だったら、このシーンではこう振る舞うんだろうな」って考え続けて、さらにそれを本番に持っていくために、グワッと集中して(役に)入る。その過程で、影響はどうしても受けてしまうというか。
──たとえば『TOKYO VICE』で演じたホストのアキラは、根っからのヒール役でした。ああいう役を演じて、自分に返ってくるものって?
なんかやっぱり、心は荒んでましたね(笑)。
──もしかして、それは人生で初めての感覚だったり?
ああ、そうかもしれないですね。でもいい経験でした。演技の振り幅を広げていくっていうのは、大事な作業だと思うので。「量」から「質」へ、だんだん切り替えていかなきゃいけないなと思ってます。
──俳優にアーティストに、幅広く活動している山下さん。今のご自身の、表現者としての持ち味をあえて挙げるとすれば、なんだと思いますか?
不確かなところ。どこかこう、飄々とした部分もあったりするし、人から「何を考えてるかわからない」って言われることもあるので。
──それは仲いい方からも言われますか?
仲いい方……、からはそこまで言われないですけど(笑)。というか、そう言われなくなってきた。周りに自分の本心を伝えられるようにはなってきたんですよね。つまり、昔よりは強くなったってことだと思うんですけど。
──本心を伝えるのが苦手な時期もあった。
昔はあんまり人が得意じゃなくて、人見知りだったので。でも大人になるにつれ、人とコミュニケーションを取ることで、双方にいい影響があるんだとわかってきたんです。もちろん、その逆もありますけどね。合わない人って絶対にいるから。でもその合わない人も含めて、コミュニケーションは世界を広げてくれる。自分自身の境界線を取っ払ってくれるような感覚があります。
──境界線を取っ払えば、自分にとっての合う/合わないもまた見えてくるし。
そうですね。あと、対極を知ることも大事だと思うので。
──話が戻りますが、表現者としての持ち味が「不確かなところ」というのは?
不確かというのは、もっと言うと、常に不安な気持ちがあって。その不安は僕にとって、進化とイコールなんですよね。
──不安なとき=進化の過程だと。
ずっと進化しようとし続けているんだと思うんです。なぜならずっと不安で、ずっと怖いから。それが「変わり続けていきたい」、「成長していきたい」という思いにつながってる。
──では「不安、バッチ来い!」という感じ?
そこまではいかないですけど(笑)、やっぱりその恐怖を乗り越えられるかどうか。乗り越えられなければ……、(心が)“死んで”しまうんだと思うんですけど。でもね、次のステップに行くには、絶対に乗り越えていかなければいけないので。勇気を出して、危険な場所にも挑んでいきたいなと思います。
──それがまさに海外作品の現場だったりする。
そうですね。
──私自身は山下さんと同世代で、ずっと活躍を目にしてきまして。
いえいえとんでもないです。
──それが最近のインタビューで、「20代前半から、海外のオーディションを受けては落ち続けていた」と読んで、「あの誰よりも忙しい時期に、そんな経験をしていたなんて!」とびっくりしたんです。
今、当時のオーディション映像とか観ると、本当に「これは受かるわけないよな……」と思いますけどね。
──今の位置に立ったからわかることですよね。
たしかに、語学は積み重ねなので。今振り返って「全然ダメだ」って思うのは、ある種いいことなんですけど。
──ファンも山下さんの挑戦には勇気付けられているはず。
それこそ僕が活動を続ける上で、目指しているところです。僕自身もみなさんの応援に助けられていて、すでにいいエネルギーの循環というか、キャッチボールができているんじゃないかなと。投げる球をもっと取りやすくして、さらにいろんな人に受け取ってほしいという思いもあります。
──モチベーションを高く保ち続ける秘訣はありますか?
やっぱり荒波に揉まれていることが大事なんじゃないですか? 生ぬるい海でなまけていても、おいしい魚にはなれないですから。
──ストイックな人って、他人にも厳しい場合が多いと思うんです。でも山下さんってなんでそんなに人当たりがいいんですか?
やっぱね、すべては生まれ育った環境によるんですよ。自然なことなんですよね、みんな違うっていうのは。
──どんな人にも事情があるから、みんな違って当然だということですね。
だから僕は人を矯正しようとかは思わない。もちろん変われるポテンシャルがあるなと思ったら、促すことはしますけど。でもストイックじゃないからって、別に悪いことをしているわけじゃないから。当たり前のリスペクトはいつも忘れちゃいけないなと思います。
──人間全般にリスペクトがあるから、俳優としても、どの役にも平等に向き合えるんだろうなと思いました。
はい、どの役も全力で。
山下智久「Forever in My Heart」
2022年6月17日配信リリース
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山下智久
1985年生まれ、千葉県出身。1996年より芸能活動をスタート。映画やドラマでの俳優業、アーティストとしての音楽業の両方で活躍。近年は活動の場を海外にも広げている。2022年は、NHKドラマ『正直不動産』にて主演、またハリウッド共同制作オリジナルドラマ『TOKYO VICE』シーズン1(WOWOWオンデマンドにて独占配信中)に出演。公開待機作にハリウッド映画『マン・フロム・トロント』(Netflixで6月24日より配信)など多数。2021年4月より、〈ブルガリ〉のブランドアンバサダーを務めている。