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【INTERVIEW】
前野朋哉 × 森岡龍:映画『エミアビのはじまりとはじまり』の主演が語る

【INTERVIEW】
前野朋哉 × 森岡龍:映画『エミアビのはじまりとはじまり』の主演が語る

9月に公開を控える映画『エミアビのはじまりとはじまり』(渡辺謙作監督作品、9月3日全国順次ロードショー)。若手漫才コンビ「エミアビ」の海野一哉の死をきっかけに繰り広げられる今作は、キャッチコピーに「笑えない日々を、笑え」とあるように、決して単純なハッピーストーリーではないながらも、さまざまな「笑い」が効いたストーリーとなっています。主演を務めるのは、auの三太郎シリーズで一寸法師役を演じ注目を集める前野朋哉さんと、『茶の味』(04)で映画デビュー後、映画やドラマでキャリアを重ねてきた森岡龍さん。そんなふたりは俳優として、はたまた監督としての経験もある大の映画好き。これからの活躍が楽しみな彼らの「極私的映画論」を語ってもらいました。

 

宮﨑あおいさんは特別です。

 

今日は、映画好きのお二人に映画の魅力についてざっくばらんにおしゃべりしていただきたいと思っています。早速ですが映画にハマったきっかけは?

 

森岡 中学の頃に『GO』(’01)や、『青い春』(’01)が公開されて青春映画が盛り上がっていたんです。そこを入り口に映画って面白いなと思い始めて、昔の青春映画を遡り、(北野)武さんの『キッズリターン』(’96)に出会い、映画ってすごいなぁと。そこからのめりこみました。

前野 僕は中学のときにハリウッド映画を映画館で観るのにハマったんです。『プライベートライアン』(’98)『アルマゲドン』(’98)、そして中2の時には『スターウォーズエピソード1』(’99)が公開されました。放課後になると卓球部の練習に行かなくちゃいけない日でも嘘をついて映画を観に行ったりしていましたね。親がおこづかいとは別に映画代をくれたんですよ。

森岡 うちもそうだったな。

前野 映画好きの友達と映画を観に行くというのが一番幸せな時間でした。そんな感じでハリウッド映画ばかり見ていたんですけど、高校に入って始めて日本映画を観たんですね。それは宮﨑あおいさんが……。

森岡 俺もそうだ!宮﨑あおいさんが好きだったんだ(笑)!

前野 宮崎さんを『害虫』(’02)で観てどハマりしちゃって。当時好きなアイドルとかはいなかったんですけど、僕の中では宮﨑あおいさんがアイドルみたいな存在で、宮﨑さんが出ている日本映画を観るようになったんです。

森岡 一緒一緒!まだお茶のCMとかに出演をされていた頃だね。

前野 そこから、日本映画も面白いんだなと気づいて、古い映画を遡るようになりました。

森岡 俺も『害虫』は観たし、宮﨑さんが出ている映画を散々見て。大学はAO入試だったんですけど、宮﨑さんについて書いた気がする。「宮﨑あおいさんがこれだけ好きです」みたいな。今の事務所に入ったばかりの頃、『青い車』(’04)で宮崎あおいさんとのキスシーンを演じる高校生役のオーディションがあると聞いて、「マジでお願い!」と思っていたんですけど(笑)、他の子が選ばれて落ち込みましたね。その後、18歳のときに『ラブドガン』(’04)の舞台挨拶を観に行かせてもらったときに、会場のロビーで宮崎さんと新井さんを見かけて。それだけじゃ満足できなくて、いつ共演できるんだろって思ってたなぁ。

 

その頃って蒼井優さんも注目を集めていましたよね。

前野 あるんですよ、映画好きの男子のなかで。蒼井優さんか宮﨑あおいさん、どっちが好きかという口論が。モーニング娘。の中で誰か好きか、誰推しかみたいな感覚だと思うんですけど。推しメン……メンバーじゃないか(笑)。僕の場合、宮﨑さんの映画を観た後に夢に出てきちゃったんですよ。あの当時、夢に出てきた女の子のことは好きになってたんですね、男子って。それもあって忘れられなくなって。

森岡 宮﨑さんにはそういう力あったよね。

前野 画面を通しても衝撃だった。ミステリアスな役が多かったこともあって「なんなんだこの子は!」みたいな。映画館で映写のアルバイトをやっていたとき、『天地明察』(’12)の舞台挨拶でいらっしゃったんですけど直接は見られなかったんです。宮﨑さんに会うときは仕事を一緒にするときだって。映写室の隅でブルブル震えてました。

森岡 さっきキスシーンがどうのこうの言ったけど、できないよね。

前野 尋常じゃない。

森岡 降りるよね。

前野 共演NG(笑)。

森岡 共演NGだよ、好きすぎて(笑)。

前野朋哉 森岡龍 対談

 

 

役者って、おいしい存在

 

おふたりの映画好きの共通点には、監督として映画製作をしてきたというエピソードがありますよね。映画を観る側から、演じたり作ったりするようになるまでにはどんな経緯があったんですか?

森岡 中学のときに親にビデオカメラを買ってもらいました。姉貴が大学で映像をかじっていたので、編集ソフトの使い方を教わったりして、映画というかコントみたいな遊び映像を撮りはじめたんです。今でいう「◯◯やってみた」的な。自分が出たり、友達に出てもらったりして文化祭で上映したり。

前野 早いね。

森岡 そのうちに映画作りってなんだろうって思うようになったんです。撮影の仕方も、美術も全部が気になるぞと。それで色々調べていくうちに、今のプロダクションが俳優のマネージメントもしながら、映画を作っていることを知り、面白いなと思って手紙を送ったんです。そしたら、「『茶の味』という映画のオーディションがあるから受けてみない?」という話になり、デビュー作になりました。その現場が楽しかったんですよね。まわりは大人ばかりでいつもの学校生活とは全然違う。「こんな職場があるんだ!」って。ダメ出しされるとかも全くなく、「アドリブでなにか喋ってて」と言われて喋るみたいな感じだったのでのびのびやれました。

前野 僕が自分で撮りはじめたきっかけは、大学で映像学科に入ったら先輩に石井裕也監督がいて、石井さんの『剥き出しにっぽん』(’05)という作品に照明助手として参加したのがすごく面白くて感動したからなんですよ。それまでは漠然と映像の仕事に就けたらいいなと思っていたんですけど、せっかく映像をやるなら「撮りたいし、モテたい!花形の監督になろう」って。そしたらたまたま役者の人が来れなくなって「前野君、出る?」って声がかかって1シーンだけ出させてもらったんです。作品が完成してエンドロールを見たら、照明助手としての僕の名前より役者としての僕の名前の方が先に出たんですよ。照明として3ヶ月も吹雪のなかがんばったのに、全然重みが違ったというか。そこで「なんか役者っておいしくね?」って(笑)。あともうひとつあるんです。話してもいいですか?

 

どうぞ!

前野 22〜23歳の頃、大学を卒業して、関西で映像を撮ったりバイトしたりしていたときに、初めて受けたCMのオーディションに受かったんですよ。リーマンショックが起きる前だったこともあってギャラがよかった。1日拘束で僕の1ヶ月のバイト代より多かったんですよ!そんな(お金の面での)夢もあったので、俳優をやりたいと。その後、上京し今の事務所に入りました。

 

『エミアビ』を通して新しい自分になれた

 

今回の共演作『エミアビのはじまりとはじまり』では、コンビで漫才を演じられていますが、もともと交流はあったんですか?

森岡  石井裕也監督の『君と歩こう』(’08)で出会って、ある時期一緒に作品を作ったり、事務所も一緒だし会ってたんですけど、前野くんに子供が生まれてなんとなく疎遠になっちゃって。今回、共演するにあたって、どう距離を詰めたらいいのかわからない感じになっていて。前野君はヒップホップのCDを貸してくれました。

前野 とりあえずお互いのことを知ろうと(笑)。

森岡 僕は何も渡してないか。でも岡村ちゃん教えたよね。

前野 カラオケで『カルアミルク』を歌ってくれました。

 

撮影はどんなふうに進んでいったんですか?

森岡 撮影は去年の夏に行われたんですけど、具体的に動き出したのは去年の春あたり。そこからシナリオをみんなで直して、撮影の1ヶ月前くらいから漫才の稽古をはじめました。

前野 ほぼほぼ毎日会ってね。

森岡 今回めちゃめちゃ追い詰められたんですよ。今までは楽しく「ヘイヘイ!」っていう感じで仕事をしていたところもあったんですけど。

前野 チャラい(笑)!

森岡 去年の夏に今まで築き上げてきたものをまっさらにされたし、性格も変わったと思う。現場に向き合うことで純粋になれたというか。

前野 森岡君がやっている役は、すごく難しいんですよね。なりきろうとするけど、なりきれない部分があったし、漫才を一緒にやっていて時間もかかるし、主演ということへの覚悟も必要だった。今までの覚悟とはまた違う覚悟で挑まないといけない作品だったと思うんです。それは僕も含めてお互いそうで。森岡君が悩んでたから、僕が支えなきゃって。じゃなきゃこの人死んじゃうかもって思うくらい、辛かったというか、大変だった。無事クランクインできてとりあえずよかったっていう(笑)。

森岡 「もうできないのかな、撮影」って思ったもんなぁ。

 

性格も変わったということでしたが、どう変わったんですか?

森岡 僕、けっこうドライな性格だったんです。この映画を撮った渡辺監督も僕と同じでそういうところがある方だと思うんですけど、この映画のテーマになっている人の死に対しても鈍感というか、「人は人」っていう部分があった。それが、俳優としての全てを叩き倒されるようなキツイ現場を経験することで、みんなで頑張ろうっていう仲間意識が生まれたというか。俳優を見る目も変わりました。「俳優とかやってます」じゃなくて、やっと自分で「俳優です」と名乗れるようになりました。演技が好きになったし、モチベーションはすごく高くなりました。

前野朋哉 森岡龍 対談

 

映画に救われたから、映画に貢献したいと思う

 

俳優という仕事は実人生と切っても切れない部分が大きいと思うのですが、重くないですか?

森岡 これしかやったことがないから、他の仕事と比較はできないけど、例えば9時出社で17時に上がるとかいう生活は送れないでしょ?

前野 いや、僕はできると思う。健康的だし、いいなって。いいななんて、ごめんなさい。憧れはある。

 

俳優という仕事に固執はしないんですか?

前野 そうですね。根本には映像に関わりたいっていうのはあるんですけど。もちろん俳優は楽しくてやっているので辞めるつもりはないんですけどね。

森岡 俺は無理ですね。やっぱり映画と人生を混合しながら生きてるから。映画の視点で毎日を捉えているし、映画のおかげで毎日を豊かに過ごすことができている。宗教みたいなものかもね。映画教の信者みたいな。

前野 映画に救われたから映画に貢献したいというか。それはありますよ。映画を観てくれる人が増えたらいいなと心から思ってるし、映画のなかでもとくに日本映画が発展してくれることが一番うれしいです。

 

映画に救われた部分を挙げるとすると?

前野 それは世の中の見方じゃないですか?世界の見方だと思います。作品って、監督の目線そのものだったりするので、「こういうふうに世界を見てる人がいるんだ」というのを映画を観ることで知れるというか。だから価値観が変わったりもするし、豊かになる。楽しい、悲しい、びっくりしたりっていう喜怒哀楽がある、そんなエンターテイメントってなかなかないと思うんです。

森岡 全く一緒ですね。映画って世界の窓みたいなところがある。観れば観るほどそこからキャッチできるものが増えていったりもするし。大きすぎる話になってしまうけれど、生きるということと繋がるよね。与えてくれたもの?全てです。全てを与えてくれました。

前野 映画があれば人生は楽しく過ごせる。映画をはじめカルチャーがなくなっちゃったら人間は終わりだと思います。映画祭で海外に行っても、映画を介すことで政治抜きで付き合えるところもありますね。認め合うことができるし、そこで友達になれたらこの仕事をしていてよかったなと思うし。

森岡 映画って、世界語なんです。誰とでも映画を介せば喋ることができる。

 

今思う、これから挑戦したいこと

 

背筋の伸びるような現場を経て、これからこんな役を演じたいといった目標はありますか?

前野 まずアレでしょ?宮﨑あおいさんと共演できるように精神力をつける(笑)。宮﨑さんにもひるまない精神力を!

森岡 不思議とけっこうMになったかもね、『エミアビ』を経て。

前野 改造された?ふふふ。

森岡 「もう2度とごめんだ!」って思ってたんだけど、1年経って振り返るとめちゃめちゃ苦しかったのが今に活きてるっていうか。もうしばらくはいいけど、たまにキツイ現場をやりたいなって。そういう経験をするとメンタルが深まるというのかな。自分でこれくらいと思っていたものが、実はこんな世界があるのねっていうことを教えてくれる。

前野 さくらんぼくらいと思ってたのが、実は林檎くらいだったとかね(笑)。

森岡 自分のメンタルが掘り下げられるという意味での厳しさのある役や現場に出会えたらいいなって思います。

 

出会いに行く感覚なんですか?

森岡 そうじゃないよね。どっちかといえば待つ仕事だよね?

前野 あとは人間関係で。たまたま飲みに行った席に監督がいて、その3日後に呼ばれたりということもあったので、飲むのも大事だなと思ったりしますけどね。今回、ベテランのスタッフさんが揃っていたのも大きくて。最近は同世代と仕事をする機会が増えてきていて「同世代でやってやろうぜ!」という面白さは知ってはいたけど、巨匠と呼ばれている方とやってみたい気持ちはあります。80代の監督とか。

森岡 山田洋次監督?

前野 
とか。

森岡 マーティン・スコセッシ?

前野 とか、コッポラとか。あとは引き出しにものを詰めたいですよね。大学で自主映画を撮っていたときって、アドリブがすごかったんです。セリフがあってないような感覚で、その日に読んだ本のことを思い浮かべて「あそこからネタもってこよう」というふうにやっていたんですけど、最近、引き出しがスカスカで。記憶力もないし、日々の刺激も昔よりは少なくなってる。暗い話になってしまった(笑)。映画を観たり、本を読んだり、人と会ったりすることなんだろうな、きっとそういうことが大事なんだと思います。何をピックアップしていくか、どの感覚でチョイスしていくか。それってすごく難しいし、でも、できるように心がけてやりたいですね。具体的には何したいかな?でもほんとね、宮﨑あおいさんと共演したいよね。気負いなく堂々とね(笑)。

前野朋哉 森岡龍 対談

前野朋哉
まえの ともや

1986年生まれ。岡山県出身。『剥き出しにっぽん』(05)で映画デビュー。主な出演作に『桐島、部活やめるってよ』(12)、『ぶどうのなみだ』(14)、『日々ロック』(14)、『娚の一生』(15)、『イニシエーション・ラブ』(15など。テレビでは「マッサン」(14)、「恋仲」(15)、「おかしの家」(15)、「重版出来!」(16)などに出演。監督・主演作『脚の生えたおたまじゃくし』(2009)にて、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2010の審査員特別賞&シネガー賞をW受賞。auのCMでは一寸法師役に抜擢され注目を集めている。

 

森岡龍 もりおか りゅう

1988年生まれ。東京都出身。『茶の味』(04)で映画デビュー。主な出演作に『色即ぜねれいしょん』(09)、『あぜ道のダンディ』(11)、『舟を編む』(13)など。テレビでは、「あまちゃん」(13)、「天皇の料理番」(15)、「64」(15)、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(16)などに出演。映画、TVに出演する傍ら、映画監督としても大学在学中から活躍しており、12年に劇場初公開した映画『ニュータウンの青春』は、PFFアワード2011エンタテインメント賞(ホリプロ賞)を受賞、第16回釡山国際映画祭A Window on AsianCinema 部門招待作品となり、話題を呼んだ。

Photo: Kanekoyama
Text: Hiromi Kajiyama
Edit: Karin Ohira

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