伝説の雑誌『babybabybaby』で一躍ガーリーフォトの旗手となったヴァレリー・フィリップスが、新たな作品集をリリース。彼女が写し出す女の子たちの魅力はどこにある? ヴァレリー本人にインタビュー!
Q.1今回の作品集の全体像と見どころを教えてください。
『Another Girl Another Planet』は、私の大好きな写真を集めたもので、これまでで一番楽しみながら作ることができました。自分が感じたとおりに、しっくりくる順番で並べていて、その流れは、物語でもないし、すごく感覚的でシークレットとも言えます。
Another Girl Another Planet
見どころをひとつに絞るのはとっても難しい。でも、なかでは、LAのモーテルでの、PJハーヴェイとのシューティングはすごく印象的でした。彼女はコニーアイランドのTシャツに、小さな星模様のパンツをはいていて、真っ赤なリップをしていて……。その姿は魔法みたいな1日だった。彼女を撮影したことはそれまでに何度もあったけれど、そのときの写真が一番のお気に入りです。
そして、アラヴィダとサラとの作品は、どれも私にとって一番特別なものです。私たちは一緒にたくさんの信じられないような冒険をしてきたし、彼女たちと出会わなかったときの世界を想像することなんてできません。
私の最初の写真集『I Want To Be An Astronaut』に出てくれて、いまも一緒に仕事をしているモニカも、私の人生を変えた一人です。自分のプライベートな作品だけに集中しているから、他のことはほとんど気にしていません。本やジンやスケッチブックを作ることに夢中になってからは、ほぼそれしかやっていないくらい。モニカがおもちゃのヘルメットをかぶっている写真が、私がやってきたことを一番象徴するイメージかもしれませんね。
Q.2
ジンや雑誌で写真を発表することと、写真集にまとめること、ご自身のなかで違いはありますか?
そこまで大きな違いはありません。私はどんなかたちであれ、いつも同じやり方で作ります。それはすごく感覚的で、プランは一切ないんです。どのプロジェクトでも、自分が見たい写真を撮ることに集中しているし、それがあるアイデアとつながって、作品になっていきます。
Q.3
アルヴィダやサラといった、被写体となる女の子たちはどのように見つけてきたのでしょうか? また、彼女たちのどのようなところに惹かれたのでしょうか。
モデルになってくれる女の子たちを見つける場所は、コーヒーショップ、飛行機の中、散歩しているとき、スーパーマーケット、電車の中、ジムで運動しているとき、ハロウィンパレード、車をスクラップするところ、スタジオでのキャスティングなど、いろいろです。素晴らしい女の子はたくさんいて、私は会った瞬間に撮りたい子を見定めることができるんです。
化学反応を起こすみたいにカチッとはまると、私たちは一緒に遊ぶようになって、それがいつしか長い時間をかけて作る壮大なプロジェクトへと発展していきます。女の子たちのどこが魅力的かを説明することはできない。なぜって、それは完全に本能的な感覚だから。女の子たちの魅力を測るチェックリストもアジェンダもありません。たぶん、彼女たちはどの子も私のある側面を映し出しているとは思います。
Q.4
「女の子」を撮り続ける理由は?
女の子を撮るのは、私にとって自然なことです。そして、自伝的でもある。女の子たちが何を考え、何をして、何を着て、何を話し、何を聞くのか。私は、そういうことに魅せられています。彼女たちの世界がどんなもので、どんなふうに生きているのかを知りたいのです。
Q.5
今月号のテーマは、「読むファッション」です。ファッションにまつわる本で影響を受けたもの、あるいは「読むファッション」と聞いた時に思い浮かぶ本を教えてください。
私はまったくと言っていいほど、ファッションの本は読みません。好きな本は、作家の自伝、歴史書や、近代建築や装飾にまつわる本です。
でも、もしひとつ選ぶとしたら、『American Denim – A New Folk Art』(1975年)かな。この本にはデニムを自分流にするヒントやインスピレーションがたくさんつまっています。普段から自分の着るものにパッチやバッジをつけたり、刺繍をしたりしてカスタマイズするのが好きなので、参考になります。
それから、ファッションで影響を受けたとしたら、それはパンクです。いつもアディダスやステューシーといったスポーツウェアか、デニム、あとは古着とバンドTシャツを着ています。
Q.6
ヴァレリーさんは「ガーリー」と形容されることが多いかと思いますが、ご自身のその世界観に影響を与えたと思う本・写真集、あるいは「これはガーリーだ」と思う本はありますか。
私は誰か別の人の写真から影響を受けたことはありません。むしろ、絵画やコラージュ、イラスト、音楽、スケートカルチャー、そして小さな頃から作りためているステッカーブックやスクラップブックの影響を受けています。
私は完全にトムボーイで、そのスタイルは私の写真にも貫かれていると思います。でも、モデルになってくれる女の子のヴァイブスやスタイルをミックスしていくことも好きです。私が撮る女の子たちは、すごくティーンエイジャーっぽい格好が多くて、だいたいが寝癖のついたヘアだし、ちらかった雰囲気をもっています。その感じが、彼女たちが実際の年齢より若く見える理由かもしれません。ハイファッションによくある、ティーンのモデルに、まるでコネチカットから来たみたいな退屈なお金持ちの中年女性の格好をさせたようなイメージは好きではありません。
Q.7
GINZA の読者におすすめの本や写真集を教えてください。
写真集で好きなもの
1. Sally Mann – Immediate Family
2. Corinne Day – Diary
3. Jason Nocito – I Heart Transylvania
4. Richard Kern – Looker
5. Harmony Korine – The Bad Son
6. Wolfgang Tillmans – Concord
7. Ed Templeton – The Cemetery Of Reason
8. Deanna Templeton – The Swimming Pool
9. Dafy Hagai – Israeli Girls 1
0. Peter Marlow – Point Of Interest
11. Hiromix – Paris
12. Juergen Teller – Juergen Teller
13. William Eggleston – Horses and Dogs
他の本で好きなもの
1. The Ice Storm – Rick Moody
2. Breakfast At Tiffany’s – Truman Capote
3. Dante Gabriel Rossetti Painter and Poet – Jan Marsh
4. Badland – Richard Ford 5. The Lover – Marguerite Duras
6. The Malady Of Death – Marguerite Duras
7. Utopia Parkway: The Life and Work of Joseph Cornell – Deborah Solomon
8. Lost Moon – Jim Lovell/Jeffrey Kluger
9. Henry Darger, Throwaway Boy; the tragic life of an outsider artist – Jim Allege
10. Perfect Example – John Porcellino
11. Jasper Johns Flags 1955-1994
12. Cecil and Jordan in New York Stories – Gabrielle Bell
13. Petal Pusher: A Rock and Roll Cinderella Story – Laurie Lindeen