13 Jul 2020
YOONが明かす、AMBUSH®新作コレクション製作秘話

7月11日に発売されたアンブッシュ2020-21年秋冬コレクション。一足先に発表されたルックブックには荒野に車が半分埋もれていて、何やら意味深なムードが流れている。中には日本の着物や下駄を彷彿とさせるアイテムも。はたしてどのような思いが込められているのだろうか?クリエイティブディレクター、YOONに話を聞いた。
──今季「カントリーサイド」がキーワードだそうですね。
昨年地方の工房や工場を回ったのですが、時間が止まっている感じがしてすごく心地良くて。皆自分の生活圏内でゆっくりと過ごしていて、いいな、と思いました。これまで東京をベースにつねに新しさを求められる目まぐるしいファッションの世界で活動してきて、その頃は出張も多かった。毎日違う国にいる、というくらい(笑)。それはそれですごく楽しいんですけど、落ち着かないところもあったし、もうちょっとゆっくり考える時間も欲しかったから田舎の静けさに惹かれたのかもしれません。
──特定の場所の風景を思い浮かべた、というわけではないのですね。
どこかわからないような雰囲気にしたかったんです。ゆったりしていて、ちょっと暗さや哀しさも感じられ、シュールな部分もあるデヴィッド・リンチ作品のような。地方の工房や工場には若い人が少なくて、年配の職人さんたちがほとんどだったのですが、こんなに良い場所なのに後継者もなく、今後どうなってしまうんだろう、という思いを抱いたことも関係しているような気がします。
──ルックブックの車のセットが気になりますが、どんな意図があるのでしょうか?
走るべきものである車を半分埋めることで、スローペース感を表現したかったんです。パリで撮影したのですが、現地で車を購入して半分にカットしました!
──それはダイナミックですね!!ゆっくりしたい、という気持ちは服にはどのように表れているのでしょうか。
リラックスできる、ゆったりとした感じを出しています。もともとウェアラブルなものを作るのが楽しいタイプなので着心地も重視しているんです。
──日本のモチーフが多用されていますが、こちらはどう関連するのでしょうか?
ゆったりと羽織れるものを作りたかったんです。たとえば下駄はビブラムソールにしてアウトドア風にするとか、日本の要素をそのまま取り入れるのではなく、アンブッシュ®︎らしい感性とハイブリットさせています。
──GINZA読者におすすめのルックはありますか?
ジャカードで雲のような柄を描いたデニムのセットアップは楽しく着てもらえると思います。
トラックパンツ風のシルエットなので、足元はヒールでもスニーカーでも下駄でも何でも合いますよ!
ニットのセットアップもかわいいと思います。
マーケットで見つかるような、筋状に色が入ったバッグをイメージしました。ストレッチが効いていて楽なんです。
──ジュエリーはいかがでしょうか?
今回「自然」をイメージしていたこともあり、かわいいいちごときのこのモチーフを用いました。
ネックレスと片耳ピアスを展開しています。
──初めて天然石のジュエリーも発表されたとか。
ハードな感じの定番のパドロックのネックレスに自然の素材をうまくなじませてみたかったんです。
石は手作業で形を作っていかなければならないので大変な作業でした。
──お話を伺っていると、ディオール メンのジュエリーディレクターも務めていたり、数々のブランドとコラボレーションされていたりと、YOONさんの超多忙な生活の反動でこうしたコレクションが生まれたのかもしれない、とますます思わされます…新型コロナウィルス感染拡大は不測の事態でしたが、時間ができて、少しリラックスできたのではないでしょうか?!
日頃やりたいと思っていたことを実現できた、というのはありますね。たとえば「マスタークラス」というオンラインレッスンに登録して、たくさんの講義を視聴しました。ファッションはもちろん写真や経済など、各分野のトップの人たちが講師になり、いろいろなことを教えてくれるんです。すごく勉強になりました。
──そこで吸収されたことが、また次のコレクションにもつながるのでしょうか?
今回はテーマを掲げてそれに向かっていくというよりは、その時々に沸き起こるアイデアや気持ちを流れに沿って形にしていく、というコレクションで、とても楽しかったんです。直感で動いたところも多いし、新しい自分を見つけることもできました。次のコレクションも引き続きこうした方法にチャレンジしているのでそれもあり得ると思います。
──コロナ禍により、ファッションウィークがオンラインで開催されたりしていますが、今後の発表形式についてはどうお考えですか?
ファッションウィークではバイヤーさん向けにショールームのみで発表し、商品の発売間近にショーを開催するなど、新しい見せ方ができれば、と考えています。
──やはり実物を手にとって見てもらいたい、という思いがあるのでしょうか?
9月にファーフェッチグループと一緒に新しいウェブサイトをローンチする予定もあり、日本に来られない海外のお客さまのためにもECに力を入れる必要性はあると思っています。でも、写真で見るのと実際に見て羽織るのでは全く感じ方が違います。もう以前のようなシステムには戻れないとは思うのですが、早くフィジカルでコレクションを見せたいですね。
──では発売されたばかりの2020-21年秋冬コレクションも、可能ならばお客さまには実際に着て見て触ってほしいですね!
今季はウィメンズが充実しているんです。ぜひお店にいらっしゃってチェックしてください!
Profile

YOON ゆん
2008年、VERBALと共にアンブッシュ®︎を設立。17年LVMHプライズのファイナリストに。18年よりディオール メンのジュエリーディレクターも務めている。www.ambushdesign.com
Interview: Itoi Kuriyama