山田由梨(以下山田) ちょうど、私が一軒家を借りて作品を作る「家プロジェクト(uchi-project)」を始めた頃、ままごとが小豆島で滞在制作をしていて、興味があり、活動を見させてもらったんです。
柴幸男(以下柴) 小豆島で会ったあとに、『わたしの星』も観に来てくれて。
山田 スタッフも役者も高校生で、いい時間を過ごしているという充実感もそうだし、作品を観ても瞬間を生きている高校生の一生懸命さが伝わってきてハっとしました。舞台の外で感じた夏と舞台上にあった夏がシンクロしていたのを鮮明に覚えています。
柴 僕も贅沢貧乏の『ヘイセイ・アパートメント』を観に行ったんですが、一軒家という特殊なチャレンジの中で、その枠に縛られずに自由に演劇作品を作るということに集中していて、場所もお話も俳優さんも一致してる感じがあった。劇場外でやると企画が勝ったり作品が勝ったりバランスが乱れがちなんですけど、ちゃんとまとまっていて、ひとつの発明感がありました。
山田 発明というかアイデアが先行して作品を作ることが多いですね。場所から着想を得て、物語が生まれるという順番です。
柴 僕もそっち派です。劇場で演劇をただ作るとなると何を作ったらいいのかわからなくなります。だから、何かひとつやったことがないこと、周りもやってなさそうなことを考えて、そこから作る。外でやるときは自分で設定しなくてもさまざまな制限があるので逆に演劇に集中できる。だから最近は劇場でやるときには企画を第一に考える、という逆転の方法でやっています。
山田 完全に共感します。外にはいっぱいヒントがあるから。私は学生のときは劇場で公演をしていたんですけど、卒業後は3年間くらい一軒家やビルやアパートで稽古と上演をしていて、去年久しぶりに劇場に戻ったんです。劇場で全部自由に作れと言われても、そこに何を置けばいいのか自由すぎて戸惑うというか、わざわざ虚構を作りあげてそこに置くことに違和感があって。でも、その違和感とかうんざり感が逆におもしろいとも思えてきて、それを作品に取り込んで作ろうと思っているのが、新作『フィクション・シティー』なんです。
柴 ちょっと前は僕もそんな感じでした。
山田 劇場の外で作る作品って環境ありきで成立するので再演が難しい。でも、柴さんが劇場で作るものは、ひとつの発明品のように何度も再現できるので、両タイプ作れるのはいいなと。柴さんは、最近劇場で作ることに距離を置かれてましたよね?
柴 去年は劇場での演劇をいっこも作ってないですしね。でも今年は劇場に戻ってこようかと。これまでは作家として何を作るかに意識が向いていたけれど、屋外など自分の思い通りになることなんてありえない状況でやってみて、新しい作品への関わり方をつかんだんです。それを東京の劇場で観ている人たちに届けるためにもう一度、劇場に帰りたい。3年間、旅してきた結果や変化をふまえて劇場で何が作れるのかに自分も興味があります。そう思ってたら下半期にかけ立て続けに公演が決まってかなり困ってるというのもあるんですけど(笑)。
贅沢貧乏 『フィクション・シティー』
「物語が人々に与える希望と絶望。東京という大都市が見せているもの、それが隠しているもの」。平成生まれの劇作家・山田由梨が描く新境地。9/28(木)〜10/1(日)まで、東京芸術劇場・シアターイーストにて上演。
劇団『贅沢貧乏』公式サイト
『フィクション・シティー』公式サイト
ままごと『わたしの星』
伝説的人気となった舞台『わが星』のスピンオフとして高校生10人とともに創作された『わたしの星』が、新たにオーディションで選ばれた高校生らとともに生まれ変わって、8/17(木)〜27(日)まで三鷹市芸術文化センター 星のホールにて再演。
劇団『ままごと』公式サイト
『わたしの星』公式サイト