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『きょうの猫村さん』で、猫村ねこを演じる松重豊が語る「人間以外」を演じることとは?

『きょうの猫村さん』で、猫村ねこを演じる松重豊が語る「人間以外」を演じることとは?

みんなで紡いだ、
家政婦・猫村さんの日常

「爽やかな笑顔を!」という、スタッフのリクエストに「僕はそのスキルを持ってないからなぁ〜」と、はにかみながらも極上のスマイルで応えてくれた松重豊さん。TVドラマ化で、世間を沸かせた『きょうの猫村さん』で、まさかの猫村ねこ(4歳)を演じている。その胸中とは。

「57歳を迎えても初めて尽くしの現場を体験できるのは面白いですね。しゃべって働く猫を実写で描く、大胆な試みに巻き込んでいただけたのも、うれしい。ただ、自分が猫になることに対しては、なんの驚きもなかった。キャスティングという視点では、僕にとっては王様も動物も同じ。猫に扮する事実よりも、ほしよりこさんが鉛筆一本で綴った風景を再現していく点をもっとも大切にしました。

周りの人が〝えー!?猫が家政婦なの!?〟という反応ではなく、〝お前んちの家政婦って、猫なんだよね〟っていうのが、当たり前の世界観。ほんわかとした空気感を表現していかねば、と考えていましたね。ありがたいことに、他の演者さんたちも同じスタンスだった。流れはみんなで作るものですから。いまは新しいドラマがお届けしづらくなっていますが、幸いにも『きょうの猫村さん』は、ラストまで収録ができている。殺伐としてしまったこの時期にこの作品が、なごむ役割も果たせているようでよかった」

たった2分半で完結する短い尺は、いつもと勝手が違ったそう。

「あっという間に終わるので、動きとセリフ、間の取り方が少しでもずれると、物語に及ぼす影響が大きい。長編作であればカットをして調整できますけれど、ショートストーリーの場合はそうはいかない。1シーンで展開する回もありましたし。そのせめぎ合いは2分半ならではでした。僕は感情を練り上げて本番に臨むのではなく、現場の空気と呼吸を感じて折り合いをつけていく。猫村さんの場合はあのコスチュームをまとうと、それなりの気配は生まれる。そのため猫を憑依させるというよりも、事象に集中していました。今日は猫村さんが仕える犬神家の娘・尾仁子と対峙して、料理もするシーンだな、といったような。撮影は8日間で完了したため、猫になった感慨に浸る間はそれほどなかったです(笑)」

人間以外の生物も惑わずに、淡々と演じる。次に挑戦したい役柄は?

「キャスティングは何でもいい。むしろそれに応えられるような、面白い器でいなければいけない。俳優は皆様の興味からオファーをいただいて、職業として成立するのでね。強いて言うならば、過去に自分が演じたキャラと近しいものだと躊躇するかな。いつか、もし『頑張れ!猫田さん』というドラマの出演依頼をいただいて、今回と似たような被り物を披露されたら、さすがに辞退するかも。でも、それが『くたばれ犬彦』という名で、犬になりきることを求められたら引き受ける。役に対する要望はそのくらいですかね」

松重 豊 まつしげ・ゆたか

1963年生まれ。蜷川幸雄主催の劇団「ニナガワ・スタジオ」を経て、ドラマ、舞台、映画と活躍中。公開待機作として『糸』『罪の声』『老後の資金がありません!』などがある。 ガーゼシャツ ¥27,000、ニットカーディガン*参考商品 イージーパンツ ¥28,000(以上スズキ タカユキ | スズキ タカユキ)

『きょうの猫村さん』

犬神家で働く日々を記録。毎週水曜・深夜0時52分からテレビ東京ほかで放送中。番組オリジナルLINEスタンプが好評発売中。

Photo: Hiromi Kurokawa Styling: Yoshie Masui Hair&Make-up: Yuka Saeki Text&Edit: Mako Matsuoka

GINZA2020年9月号掲載

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