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建築家/起業家・谷尻誠の心惹かれる「オーセンティック」。白はもっとも正統を感じさせる色だけれど、危険な色でもある

建築家/起業家・谷尻誠の心惹かれる「オーセンティック」。白はもっとも正統を感じさせる色だけれど、危険な色でもある

正統を知る。誠実でいる。上質な品を持つ。今、かっこいいと思えるのは、そんな姿勢。オーセンティックな人々の証言や美しいモノの分析から、“本物”とは何かを探ります。「白はもっとも正統を感じさせる色だけれど、 危険な色でもある」と語る谷尻さんに聞きました。建築とシャツにおける白のカッコよさや美しさとは。そして、そもそも正統って何?#オーセンティックJOURNAL


「オーセンティック、いわば〝正統〟って、正しいとされてきた考え方やしきたりをそのまま受け継ぐだけじゃなく、いったん自分の頭できちんと考えることだと思うんです」
そう話すのは人気建築家の谷尻誠さん。設計事務所「サポーズデザインオフィス」を吉田愛さんと共同で主宰し、話題のショップや住宅の設計からアプリの開発にキャンプ場のプロジェクトまで、八面六臂の活躍ぶりである。

「一方で、正統な色といえばやっぱり白。思い浮かぶのは清楚、無垢、清潔…イジワルを言えば無難というワードもあるけれど、真っ白な服を着れば信頼に足るきちんとした人に見えるし、自分の気持ちも引き締まる。なんなら、ちょっといい人間になれたと錯覚さえする。内側からも外側からも〝いい人〟度をあげる色だと思います。建築も同じで、白壁・白天井の明るい住宅は心地よいし、シンプルなホワイトキューブの空間はみんなに愛される」

でも、だからこそ白は危険なんですと谷尻さんは言う。
「よく考えなくなってしまうから。白を着さえすればちゃんと見える、白い空間なら愛される。それこそ〝正統〟から大きくはずれる、ダメな行為」
実は谷尻さんの事務所には「白・禁止」の掟がある。

「正確に言うと、〝安易に白を選ぶのは禁止〟令です。白ってとても複雑で多彩で豊かな色であり、プロジェクトごとにふさわしい白の色味や質感があるはずで。なのにシンプルだから、スタイリッシュに見えるから、と選んだ白は、無難な白よりも始末が悪い。洋服も、自分はどういう白を着たいのかを考えないで着るのはカッコ悪いでしょう。コットンか麻か、オフホワイトか真っ白か。白シャツなら革靴を合わせるのかビーサンか。革靴なら黒なのか茶色なのか。しつこく考えることが、よりオーセンティックで、よりかっこいい姿をつくる。白はそのしつこい追求に耐えうる色だと思います」

ところで、谷尻さん自身はどんな白が好きなのだろう。
「服で言えば、パリッとした白より、シワシワのシャツが好きです。シワシワでも白という色が整えてくれるから。僕は相反する要素が同居するものにぐっとくるタチなので、洗練とラフが同居している……そう、洗いざらしがかっこいい白シャツが理想ですね」

そして建築ならば有機的な白が好き、ときっぱり。有機的な白の空間とは?
「壁ならつるんと冷たい白じゃなく、荒々しいコンクリートを白で塗りつぶして、にじみ出る素材感や陰影を生かしたような壁。あるいは、塗りムラを残した白い漆喰壁。空間は人を包み込むものであってほしいから、影や手触りを感じさせる白がいい。ちなみに、白が正統である理由のひとつに、汚れが如実にわかるという側面もあると思います。たとえばシャツやスニーカーの場合、白をキープしていることは、すなわち常に手入れしてますよという証。でも、建築の場合はそこがちょっと違うんです。最初からコンクリートのゴツゴツや木目を残した白にしておくことで、時間が経ってくすんだり汚れたり傷がついたりして白をキープできなくなっても、それを空間になじんだ味わいとして肯定することができる」

つまり白にはいろいろな面があり、「白は正統」とひとくくりにすること自体乱暴だったのかも、と谷尻さん。
「オーセンティックなものを着るだけで、その人がそれに見合うようになるわけでもない。であっても、自分にとって何がオーセンティックなのかをよくよく考えることは、よい人間に近づく一歩だと思うんです。それが今の時代に必要なかっこよさですね」

谷尻 誠 たにじり・まこと

建築家、起業家。1974年広島県生まれ。建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」を吉田愛と共同主宰。尾道「ONOMICHI U2」や「猿田彦珈琲」下北沢店などを手がける。suppose.jp

Text&Edit: Masae Wako

GINZA2020年10月号掲載

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