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前原光榮商店の洋傘、イシカワの洋服ブラシなど。デザイン界の名作と日本が誇る手仕事の「名品」たる理由

前原光榮商店の洋傘、イシカワの洋服ブラシなど。デザイン界の名作と日本が誇る手仕事の「名品」たる理由

正統を知る。誠実でいる。上質な品を持つ。今、かっこいいと思えるのは、そんな姿勢。オーセンティックな人々の証言や美しいモノの分析から、“本物”とは何かを探ります。熟練職人による手仕事や、知恵と工夫を凝らした誠実なものづくりにフォーカス。デザイン界の名作と日本が誇る手仕事の、「名品」たる理由を分析してみました。#オーセンティックJOURNAL


前原光榮商店の洋傘

傘という字の中に4つ並ぶ〝人〟の文字は、生地を織る人・骨を組む人・手元(持ち手)を作る人・生地を裁断し縫製する人という4分野の職人。そう考えるのは、昭和23年創業の「前原光榮商店」。明治に輸入された洋傘の製法を継ぎ、五感に心地よい傘を生み出す。

前原光榮商店の洋傘

①50年以上、皇室御用達の精巧さ
丁寧で緻密な職人仕事で、50年以上にわたり皇室御用達に選ばれ続けている。

②伝統の織機で織るなめらかな生地
触るたびにうっとりするなめらかな生地は、甲斐織物の産地でもあった富士山麓の、伝統的な織機で織られる。

③開いた時の張りは“骨”次第!
軽くて堅牢な骨は、金属の角材を細いステッキのような形状に削り、熱を加えながら手作業で加工。丈夫でしなやかな作りが、傘のパンッとした張りを支える。

④いい音、いいフォルムを作る仕上げ
傘の良しあしを決めるのは、生地を裁断・縫製して骨組に張る“加工”の技術。裁ち包丁で生地をスパッと手裁断し、慎重に骨組へ縫い付けることで、傘を広げた時のいい張り・いい音・美しいフォルムが生まれる。

⑤うっとりする握り心地と美しい艶
手元は、寒竹や楓などの材を曲げた後、天然染料を塗り重ねる。握り心地はもちろん、使うほどに深みを増す艶にもほれぼれ。

定番の8本骨〈婦人用トラッド〉¥11,000〜(前原光榮商店 Tel: 03-3863-4617)

 

ルイス ポールセンの照明・P​H​ 5

居心地のいい部屋をつくる照明といえばコレ。良質な光を追求したデンマークのデザイナー、ポール・ヘニングセン(PHという名前はここから)が1958年に発表した北欧モダンの名作だ。心地よさの秘密は「まぶしくないのに明るい光」をつくる緻密なデザイン。

ルイス ポールセンの照明・P​H​ 5

①内側の色が“黄昏時の灯り”を作る
色や素材のバリエーションも多いPH 5。中でもオリジナルに近い「PH 5クラシックホワイト」は、電球が入るシェードの内側が赤、反射板が青に塗られているため、黄昏時のような茜色の光を放つ。

②巻き貝のカーブと同じ秘密の曲線
印象的なシェードの形には、巻き貝など自然界に見られるカーブ“対数螺旋”を応用。黄金比によって生まれるこの曲線は、質のいい光を必要な場所へ効果的に届ける。

③まぶしくないのに明るい光
器具の中央にある電球の光を、いったんシェードの内側に反射させるデザイン。「グレア・フリー」と呼ばれるまぶしさのない灯りは、ダイニングテーブルの上や読書時の手元を明るく照らしつつ、ふんわり、柔らかな影を作り出す。

④照明を見上げても光源は見えません
シェードの下部にはフロストガラスのカバー。見上げても光源が目に入らず、ストレスを感じさせない。

PH 5 ¥104,000〜(ルイス ポールセン ジャパン Tel: 03-3586-5341)

 

うぶけやの紙切りばさみ

体験したことのない切れ味に「えっ?」とびっくり。1783年創業の「うぶけや」は、刃物専門の〝職商人〟。職人や鍛冶屋が作るはさみや包丁を、店で研いだり柄をつけたり…とよりよく調整した後に販売する。

うぶけやの紙切りばさみ

①紙切り名人特注品の改良モデル
特に名高いのが「紙切りばさみ(初代正楽型)」。日本の伝統芸・紙切りの名人、初代・林家正楽のために作った特注品を、没後50年を機に復刻。一般向けに少し重みを加えて改良したモデル。全長19​㎝、軽くて扱いやすく錆びにくい。

②鋭い切っ先。お直しも任せて
紙切りに適した鋭い切っ先(刃先)。具合が悪くなったら店で研ぎ直しや修理もしてもらえるのがうれしい。

③刀と刀を合わせたような切れ味!
「刀と刀を合わせたような切れ味」になるように仕上げてある。2枚の刃の合わせ具合が重要。

④空気を切るように軽い手ごたえ
刃は薄く、手ごたえは軽い。はさみがシャーッと勝手に空気を切っていくかのような気持ちよさ。

紙切りばさみ〈初代正楽型〉¥18,500(うぶけや Tel: 03-3661-4851)

 

ジオ・ポンティの椅子・スーパーレジェーラ

座る、引く、運ぶ。動かすことが多いから、「軽い」は椅子にとって正義のひとつ。イタリアモダンの巨匠ジオ・ポンティの“超軽量”椅子は、なんと1.7㎏。1957年の発売時、建物3階から投げ落として耐久性を実証するデモンストレーションも話題となった。

ジオ・ポンティの椅子・スーパーレジェーラ

①指1本で持てるほど“超軽量”!
カッシーナ社を代表するロングセラーのひとつ。発表された当初は、女性が指1本で持ち上げられることをアピールする広告で大きな注目を集めた。

②簡素な椅子に表情を与えるライン
背もたれと脚の絶妙な曲がり加減が、シンプルかつ表情のある姿を実現。

③脚は断面積の小さい三角形
脚は断面積の小さい三角形(脚先は1辺1.8㎝)。脚/横の貫/後ろの貫の三方向をホゾ組み(突起状のホゾとホゾ穴による継ぎ)で接合。釘も金具も使わずに、しっかりと継いでいる。

④3階から落としても壊れない?
軽いけれど硬くて粘りのあるトネリコの木を使用。野球のバットにも用いられる堅牢な素材だ。

⑤職人が手編みする籐の座面
座面は籐の手編み。工場で組んだ椅子を職人の工房へ運び、フレームに直接編み込むことで軽量化。長く使ううちに色も風合いもいい味わいに育つ。

スーパーレジェーラ〈籐張り〉¥308,000〜(カッシーナ・イクスシー青山本店 Tel: 03-5474-9001)

 

イシカワの洋服ブラシ

ものを正しく手入れして長く使う。それはオーセンティックな暮らしのキホンだろう。石川和男さんが作る洋服ブラシは、カシミアも傷つけない柔らかさと、生地の奥の埃までしっかり払えるコシの強さが身上。

イシカワの洋服ブラシ

①力を入れてかけられる、“握る”形
服が長持ちしドライクリーニングも不要になると評判。柄がなく握る形なのは、力を入れてかけられるから。木製ボディの裏蓋を留める木釘も、握った時に違和感がないよう、手で削って作る。

②コシのある馬の尾脇毛を使用
希少な馬の尾脇毛を使用。馬の尻尾の根元に生えている毛のことで、高級素材。

③毛にはアイロンをかけて整えます
柔らかくコシのある毛の性質を最大限に生かすべく、1本1本を手でより分け、アイロンをかけて水分を抜き、ナイフで整える。十分に下準備を施した毛先は、服の汚れを取り、生地の表面にツヤや光沢を生む。

④丁寧に手植えするから長持ち
上質な毛をひと束ずつ手植え。長く使っても毛が広がらない。

洋服ブラシ〈ウール&カシミア用〉¥100,000(イシカワ Tel: 045-902-3824)

Illustration: Yachiyo Katsuyama  Text&Edit: Masae Wako

GINZA2020年10月号掲載

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