『ゴースト』
中島京子
朝日新聞出版 ¥1,400
30年前、GHQの接収住宅だった洋館でWが出会ったノリコ。謎の多い彼女との日々と、信じがたい真実を語る「原宿の家」。焼夷弾をあびながらも生き延びたミシンが数奇な運命を振り返る「ミシンの履歴」。飲み屋で居合わせた客から死んだ者の思いを語り聞く「ゴーストライター」など戦争を背景にした7つの短編集。〈ただ、横にいて、思い出してもらうのを待ってる。あんたのつい隣で、待ってるんだよ〉。現代を生きる人の前にゴーストが現れる瞬間を切り取る。
『ほしのこ』
山下澄人
文藝春秋 ¥1,800
海辺の小屋で暮らす少女・天。戸籍もなく、学校にも行っていない彼女は、父に何でも教わってきた。泳ぎも文字の読み方も、“この星のものじゃない”ということも。しかし大雨の日、父は突然姿を消してしまう。代わりに現れたルルという女の子は、自分も遠い星から来たと言い…。〈わたしは今ここにいる だけどわたしはほんとうにここにいるのだろうか〉。夢と現実のあわい、生と死、巡る命を描いた芥川賞受賞第1作。
『ルビンの壺が割れた』
宿野かほる
新潮社 ¥1,000
美帆子の元に突然届いたフェイスブックメッセージ。送り主は、元婚約者・一馬だった。戸惑いつつも、ぎこちないやりとりが始まる。大学時代に夢中だった演劇、結婚式当日に失踪した美帆子の真意、それぞれの秘めごと。やがて一馬の文面は不穏な気配を帯び始め…。〈もしよろしければ、今のご苗字を教えていただくことは叶わないでしょうか〉。彼が添える〈追伸〉に、そんな目論見があったとは! 読み終えた瞬間再読したくなる、新人覆面作家の問題作が誕生。