15 Jun 2022
ベルリンからフィレンツェへ。 シシー&パトリックの〈シャネル〉トラベルSNAP!

2021-22年〈シャネル/CHANEL〉メティエダール コレクションのレプリカショーが2022年6月7日、フィレンツェで開催された。ベルリンから黄色いメルセデスのヴィンテージカーに乗って駆けつけたのが、シシー・ポール&パトリック・シェルツァーのカップル。2人の初めての〈シャネル〉ショー体験をSNAPとシシーへのインタビューでお届け。
鮮やか色のミックス&マッチスタイルが似合うシシー・ポール
刺繍の〈ルサージュ〉や羽根飾りの〈ルマリエ〉。“メティエダール(芸術的な手仕事)”と称される、傘下のアトリエの職人術を結集した〈シャネル〉のメティエダール コレクション。パリにて発表された今年のコレクションが、フィレンツェへと舞台を移し2022年6月7日に披露された。ベルリンで人気のヴィンテージ&インテリアストアサイト〈outofuseberlin〉を運営するシシーとパトリックの2人。現地からショーの様子とジャーニーについてレポートしてくれた。
Q:まずは今回の2人の旅について教えてください。
A:イタリアには友人もたくさんいて、食べ物も文化も愛しているお気に入りの国。だから、私たちの古いメルセデスでフィレンツェまでドライブしながら新しい場所を発見できたら最高だねと話して出発しました。旅ではいつも〈outofuseberlin〉のための宝物を見つけに出かけます。イタリアはファッションやインテリアデザインに独特の文化があるので、特別なピースを見つけるには最適な場所。この街でヴィンテージを探すのはとても楽しいし、旅の終わりにみんなに素敵なものを届けられたらうれしいです。
ワードローブはほぼ共有。クロスジェンダーな着こなしがおしゃれなパトリック・シェルツァー
Q:そもそも2人が〈outofuseberlin〉を始めたきっかけは?
A:2人とも昔からヴィンテージが大好きだったんです。普通のお店で大量に吊るされてる服を買うだけでは満足できなくて、特別なストーリーのあるものを探してました。そんな風に考えているのは私たちだけじゃないと知ってウェブストアを立ち上げたんです。ヨーロッパを旅して出合った美しい洋服を、その背景にある歴史や物語と一緒に届けることができるのは夢のようなこと。ヴィンテージをそうやって永遠に残していけたらって思ってます。ファッションへの情熱を日々注ぎながら〈outofuseberlin〉から数多くのクリエイティブなプロジェクトを発信できて本当にうれしいです。
Q:2人のファッション愛の源は?
A:美しいものへの情熱と興味は昔からありました。ただ、その熱い想いをどうすればいいのか最初はわからなかった。クオリティの高いもの、上質な素材に惹かれていたけれど、昔はビッグメゾンのコレクションを購入する余裕はなかったんですよね。それで違う方法を見つけたんです。特別なピースとの出合いはヴィンテージハンターにとって金の山を見つけるような冒険。宝物を発見すると2人とも幸福感に包まれて胸が躍るんです。
Q:2人の眼鏡に叶うのはどんなものですか?
A:カラフルな色を前にすると心臓がドキドキします。ハッピーで明るい色が好きで、ストライプには特に目がありません。家中ストライプだらけ(笑)。2人とも3、4点のストライプを一度にミックスして着こなしたりしてます。〈outofuseberlin〉で展開するのも、2人が着たいと思う服や自分たちの部屋に置きたいと思うインテリアだけ。クリーニングや修理をして、完璧なコンディションにして、モノにもう一度命を吹き込みたいと思ってます。
Q:今回のフィレンツェへの旅はどんなものになりましたか?
A:〈シャネル〉の招待のおかげでまったく新しい街の景色に出合うことができました。パット(パトリック)は仕事で何度か来たことがあったけど、私はこのロマンチックなイタリアの都市を訪れたのは初めて。滞在したのは中心地にあるリバーサイドのホテル。古い美しい建物に囲まれていて、街に溶け込むのを楽しみました。エキセントリックなレストランを訪れたり、昔ながらのジェラテリアに行ったり。ホテルの周辺にあるヴィンテージショップも巡りました。フィレンツェはファッションの歴史も長いので街自体がインスピレーションを与えてくれます。何も計画することなく、ただその土地で自分を解放してみる。そんな風に旅できたので、きっと普通なら見つけられなかったような小さな店やカフェ、素敵な街角を発見することができました。
Q:旅ファションのテーマは?
A:いつも大好きなヴィンテージの服をミックスして着こなしてます。今回のロードトリップでも決まりごとはなかったけど、黄色いメルセデスという“走るワードローブ”を引っ提げての旅は楽しかったです。最近のスタイルモットーを唯一あげるなら「パンクであり続けること!」ですね。
Q:2人と〈シャネル〉の関係は?
A:〈シャネル〉との出合いは数年前。いつもメゾンから多くの刺激を受け取っています。2人がそろって〈シャネル〉チームに迎えてもらうのは光栄だし、女性たちを彩る〈シャネル〉の宇宙にパットも仲間入りしていることは誇りでもあります。〈シャネル〉のショーを実際に見たのは今回が初、フィレンツェは特別な思い出になりました。パリの〈シャネル〉チームとも過去のコレクションやヴィンテージファッションの話で盛り上がって。コレクションやディナーの会話を通しても、〈シャネル〉のモードとクラフトマンシップへの愛をあらためて感じました。
Q:メティエダール コレクションの感想は?
A:それぞれのアトリエが生み出す職人技術の結晶でした。会場は白で統一されていて、壁には大きなカメリアの花。コレクションは伝統技とデザインを融合させていて、同時にロックなムードも漂っていました。気品あるモダンな女性像は、パンクでもありながら、ある瞬間には儚げにも見える。特に素材使いには魅了されました。〈シャネル〉ツイードは永遠ですよね。世代を越えてシックで、それでいてロック。クラシックなグレーや黒のニュアンスから、ローズやブラッドレッド、リッチなコバルトブルーといった生き生きとした色使い。驚くほど重厚で肌を美しく包む、そのクラフトマンシップとモダンさを未来にも残したいと思えるコレクションでした。
Q:アトリエをサポートする、その姿勢にも感銘を受けたそうですね。
A:職人の技術を永遠に、そして次の世代に向け守っていくことは本当に大切なことだと思います。丁寧な手仕事の1点1点を尊重していくことはサステナブルな視点でも重要。〈シャネル〉のピースは何世代にも受け継がれて、その価値が失われることは決してありません。クオリティの高い本物の服は一生着続けられる。それは私たちが〈outofuseberlin〉を通して伝えたいメッセージでもあります。
Q:最後に、2人のように自分らしくファッションを楽しむ秘訣は?
A:安心感や心地よさを生み出すもの、それがファッションの基本です。そしてその先には、あらゆることに挑戦して楽しめるという可能性が広がっています。アートや音楽も大きな役割を果たすムーブメント。昔のミュージシャンを真似たスタイルに着替えるだけで別の時代へとトリップすることだってできてしまう。だから考えすぎないで! みんなにロックに楽しんでほしいです。
Profile

シシー・ポール&パトリック・シェルツァー
ベルリンのカルチャーシーンでも注目を集める2人。ヨーロッパを巡り買いつけたヴィンテージの服やインテリアを扱うオンラインショップ〈outofuseberlin〉を運営する。ワードローブを共有する2人のスタイルをチェックできるインスタグラムも人気。
Photo, Creative Direction, Styling: Sissi Pohle, Patrick Scherzer Text&Edit:Aiko Ishii