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Junoのセムラ、極寒のサウナetc. ひたすらグレーなコペンハーゲンの冬も、離れてみるとちょっと恋しくなる。mayanoueのCPH 通信 04

Junoのセムラ、極寒のサウナetc. ひたすらグレーなコペンハーゲンの冬も、離れてみるとちょっと恋しくなる。mayanoueのCPH 通信 04

デンマークの首都コペンハーゲン(CPH)を拠点に活動するフォトグラファー 松浦摩耶さん(@mayanoue)による連載。第4回は、離れてみると恋しくなる、コペンハーゲンの冬について。前回の記事はこちら


コペンハーゲン通信といいながら、結構長い間日本におりました。
暗い北欧の冬から逃げるように、日本の冬の太陽(関東平野はほんとによく晴れるよね?)をたっぷり浴びて、美味しいご飯を食べて、温泉に入って、しっかりエネルギーを蓄えて帰宅。

「暗いってどのくらい暗いの?」とよく聞かれるけれど、「太陽一カ月見てないよね?」と、太陽の存在を忘れるほど暗いです。夜まで明るい夏の裏返しなので、10時過ぎに明るくなり始めたと思ったら、15時には暗くなっていて、そこからずっと夜。

日本にいたときは、太陽があるのが当たり前で気がつかなかったけど、日光不足はなかなか深刻で、体内で生成されるビタミンDが減り、季節性のうつ(ウィンターブルー)の原因に…。それを補うため、友人の多くはビタミンDのサプリを毎日飲んだり、ジムに行って体をとにかく動かして気分転換。またはサウナから極寒の湖に飛び込んで自律神経を整える!など、それぞれにウィンターブルー予防をしています。

「暗いっていっても、雪が降ったら綺麗でしょ?」と言われるけど、スウェーデンやノルウェーで雪が降っても、デンマークはひたすら曇り。雪がぱらつくことはあっても積もりません。大西洋から流れ込む暖流や、標高の高い山がないことも大きな理由のひとつ。ちなみにデンマーク最高峰の山(丘?)の高さはたったの170メートル。かわいい。

あとは、とにかく風が強い。冷たい向かい風&小雨と戦いながら自転車を走らせていると、デンマークの冬を全身で感じられます。バラクラバはファッションというより、ここでは本気で必要なもの。

と、ここまでデンマークの冬の愚痴をこぼしてしまいましたが、離れてみるとそんな冬もちょっと恋しくなる…今日は、そんなグレーな冬のコペンハーゲンの愛おしいものを集めました。

春の訪れを告げるJunoのセムラ

コペンハーゲンを離れて真っ先に恋しくなったのが、近所のパン屋さんのペイストリー。カルダモンロール、クロワッサン、ティビアキス(デンマーク発祥のケシの実が振りかけられたデニッシュ)。普段は米派な私も、コペンハーゲンのパンは例外。パンを買うために早起きだってできます。

以前、パリの友人でフードジャーナリストの川村明子さんがコペンハーゲンを訪れた際、「パンを楽しみに訪れるべきは、パリではなくてコペンハーゲンかも」という名言を残していったけど、本当に美味しいパン屋さんがここ5年くらいでポコポコ誕生しています。

そんなペイストリーの中でも、個人的に一番愛しているのが、セムラ(Semla)!2月限定のスウェーデンの伝統菓子で、カルダモンの入ったパンにマンデルマッサと呼ばれるアーモンドペーストとホイップクリームをサンドしたもの。「セムラを食べれば春はすぐそこ」と言われ、新しい季節の訪れを告げる愛おしいペイストリーです。

スウェーデン出身のベイカーが始めたJuno Bakeryのセムラが個人的にはコペンハーゲン1位。ただ、自転車で持って帰るのは至難の業で、家について箱を開けると、大抵はこんな感じ。セムラのために向かい風に耐えながら安全運転する姿も愛おしいね?

昼の朝焼け

冬の朝の太陽は、無条件で美しい。日の出ものんびりなので、10時過ぎに起きても、めっちゃ早起きした〜!みたいな朝焼けが迎えてくれるからうれしい。

雲ひとつない青い空をカモメたちが気持ちよさそうに飛んでいるのをみて、私の頭の中では「ルージュの伝言」が自動再生。貴重な太陽は逃せない!と、ほぼパジャマにコートを羽織って、近所を散歩します。この季節のながーく伸びる自分の影が好き。

温かい太陽の光が街を包み、心なしか街ゆく人も微笑んでいる気がする朝。よく行くパン屋さんに行くと「あ〜なんて美しい朝なんだ〜」とおじさんが歌い、焼きたてのパンの香りのなか踊っていました。湖はキラキラと輝き、街角にはただ目を閉じて太陽を浴びる人々。ベンチでおしゃべりしているおばちゃんたちの顔はオレンジ色に染まっていました。

久々に太陽に照らされた街は、目に映るもの全てが愛おしい。世界はこんなに美しかったのかと、涙がぽろりと流れます。そんな大袈裟な〜と、ちょっと笑えるけど、まぁなかなか冗談でもないのです。

近所の友人とディナーパーティー

やっぱり何よりも恋しいのは、愉快な仲間たちとのホームパーティー。暗い日々も友人たちとのご飯会で何度救われたことか。

私の暮らすNørrebro(ノアブロ)エリアには、同世代の友人がたくさん住んでいて、よくご飯会をしています。先日は、同じ通りに住むイタリア人の友人から美味しいパンチェッタを手に入れたとメッセージが。「カルボナーラ作ろっか?卵ないから持ってきてもらえるとうれしい〜」と。そんなこんなで、我が家から卵を3つ握りしめて家を出ました。

ある日は、カレーを作って鍋ごと持っていったり、一緒にパスタを作ったり。こういう小さなディナーパーティーで心がまたあたたかくなる。

初めて冬にコペンハーゲンを訪れた時、街にひとっこ一人いなくて泣きそうになったけど、家のなかを覗くと温かいキャンドルの灯りと、コージーな食卓が。これをデンマーク人はヒュッゲと呼ぶのですね。

美味しいパンも、美しいデザインも、ヒュッゲも、きっと暗く厳しいグレーな冬があってこそ。

改めて、デンマークの冬を愛おしく思うのでした。

そしてこの文章を書いている今も、雲の隙間から太陽が顔を出して、春はすぐそこ〜

すみません、ちょっと太陽浴びてきます!

>>連載『CPH通信』記事一覧

松浦摩耶 まつうら・まや

1993年生まれ。千葉県出身。編集者として出版社に勤務後、2019年にデンマーク・コペンハーゲンに移住。写真、映像制作を中心に活動。

Instagram: @mayanoue

Photo & Text: Maya Matsuura

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