05 Oct 2019
その日の花。vol.6 ヘアサロン「Figue」プロデューサー・藤川智美さんへ

「かっこいいってどんな人なのか」を知りたくて、フローリストの河村敏栄さんが今日はあの人に会いに行く。その日の花を携えて。
藤川智美さん / 蕾のアーティチョーク
─── 自分の弱い部分を知っている人。 いろいろ通ってきて、自分の弱さや弱点を知り、 それにちゃんと立ち向かっている人、 戦っている人はかっこいいと思います。
その日彼女が着ていた70年代ヒッピー風の、パイル地が珍しいビンテージドレスが目に焼きついて離れない。私の店のお客様の多くがここに通っていると知った時から、そのセンスと、我が道を貫く店作りの姿勢に憧れていた。時代の流れに逆らっていても、自分を信じて発信し続けることの怖さは、やった人にしかわからない。「美容師としての自分の本質はファッションだと思っています」と言われた時、いつも謙虚な姿勢を崩さない彼女の芯の強さが見えた気がした。モデルのように長い手足と小さな顔は、美容の神様がくれたオマケにすぎない。好きなことへの探求心と集中力は、痛いほど純粋で、完璧を目指す姿は一流のアスリートに見えてくる。「美容しかできない自分」を信じて、仲間と一緒に歩いてきたでこぼこ道が、本当の強さを知る未来に続く、たった一つの道だったのかもしれない。
今月の花
Figue恵比寿店、彼女が一番長くいる鏡の前にアーティチョークの蕾を。運が良ければ、水に挿さずとも徐々に蕾が開き、美しい紫色の花を咲かせてくれます。海外だと主に食用の野菜扱いですが、これは観賞用。食べられないのであしからず。陶製の小鳥の羽根には、70年代感のあるバラのバンビーナ。ピンクはもはや彼女の専売特許でしょう。
花と文 河村敏栄 写真 松原博子
藤川智美 ふじかわ・ともみ
ヘアサロン「Figue」プロデューサー、ヘア&メイクアップアーティスト、スタイリスト。都内ヘアサロンに勤務後、経営面を支える仲間とともに2002年より恵比寿で「Figue」をスタート。髪を切ることは表面的なことだけではなく、美しくなることはもっと深いところに響くこと。そんな思いを持って仕事をしている。最近はファッション好きが高じ、洋服のスタイリングも行う。www.figue.jp
河村敏栄 かわむら・としえ
オーナーを務める東京・代々木上原の「MAG BY LOUISE」では、花のワークショップやレッスンをメインに、読書会などユニークなコンセプトの活動を行う。2018年にインディペンデント雑誌『FLOWER magazine』を創刊。現在第2号を鋭意製作中www.louise-flower.com
松原博子 まつばら・ひろこ
京都府生まれ。雑誌、カタログなどで活動。過日南仏のカップ・マルタンで見た憧れのアイリーン・グレイの建築が忘れられない。www.hirokomatsubara.com
Edit: Akane Watanuki
GINZA2019年9月号掲載