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その日の花。vol.11 シンガーソングライター/作家・イ・ランさんへ

その日の花。vol.11 シンガーソングライター/作家・イ・ランさんへ

「かっこいいってどんな人なのか」を知りたくて、フローリストの河村敏栄さんが今日はあの人に会いに行く。その日の花を携えて。


イ・ランさん / 考えるベルベットリーフ

─── 私はいろんなことを考えてすぐもやもやするんだけど、
その感情をなくすために趣味に没頭したり、
忘れようとしたりするんじゃなくて、
そのことについてもっと考えて、深いもやもやを持つのが必要、
と翻訳家の先生たちが話しているのを聞いて、
それ、かっこいいなと思ったんです。

「人生はつらい。怖い。仕事したくない、でもお金がない」。あまりに可愛くユーモアたっぷりに話すので私はずっと笑っていたけど、心の奥で何度も頷いていた。彼女はおばさんになっても考えて、考えて、考えて、私たちが行けない深いところにたどり着いちゃう人だろう。その本気さを見て、周りの人たちがどんどん元気になっていくだろう。つらいことばかり書いているからと、昔の日記を捨ててしまった彼女のお母さんだって、きっとまた書くだろう。誰もが自分のつらい人生に価値を感じられる美しい世界がくる。そう思わせる力が彼女にはあった。数年前、実家の母を誘って金沢まで彼女の歌を聴きに行ったことがある。「家族を探して」から始まった静かなライヴでずっと泣いていた私と、予想通り何も言わなかった母。あの日の私が母に伝えたかったこと。全部思い出してまた泣きそうになる。

今月の花

彼女が日本で活動を始めるきっかけのひとつになった新宿のインフォショップ、IRA(イレギュラー・リズム・アサイラム)にて撮影。外国からきたベルベットリーフのドライの美しい色とまさにベルベットのような質感は天然だった彼女の素晴らしき才能に、ピンクに染めたスティファ、チョコレートコスモス、カレックスで作った王冠を捧げます。

花と文 河村敏栄 写真 松原博子

イ・ラン い・らん

シンガーソングライター、映像作家、コミック作家、エッセイスト。1986年ソウル生まれ。高校を中退し独立。16歳でイラストレーター、漫画家として活動開始。韓国芸術総合学校で映画演出を専攻。2012年、ファーストアルバム『ヨンヨンスン』をリリース。ほかアルバムに『神様ごっこ』、エッセイ集に『悲しくてかっこいい人』(リトルモア)、コミックに『私が30代になった』(タバブックス)などがある。

河村敏栄 かわむら・としえ

オーナーを務める東京・代々木上原の「MAG BY LOUISE」では、花のワークショップやレッスンをメインに、読書会などユニークなコンセプトの活動を行う。2018年にインディペンデント雑誌『FLOWER magazine』を創刊。www.louise-flower.com

松原博子 まつばら・ひろこ

京都府生まれ。雑誌、カタログなどで活動。イ・ランさんの話を聞いていると、どこかから歌声が聴こえてくるようで気持ちいい。www.hirokomatsubara.com

Edit: Akane Watanuki

GINZA2020年2月号掲載

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