エディターの川島です。GINZAでも何度かお仕事をしたことある私なのですが、今回マガジンハウスからムックを制作することになりました。テーマは、“スポーツ”。小、中、高とサッカー部だった私ですが、現在は毎日事務所と自宅を行き来する“必殺仕事人”のような生活を送るなど、ある意味“スポーツ”とは縁のない生活を送っています。しかし、“縁がない”と言いつつも、自宅と事務所を自転車で通勤したり、事務所にある蛍光イエローのナイキのサッカーボールを憂さ晴らしに蹴ってみたり、また週末は事務所から神宮球場が近いことから、ヤクルトスワローズを応援しに行ったりと、スポーツが自然と自分の生活に存在していることに気づいたのです。そんなアスリートでもなんでもない今の自分とスポーツを結びつけることから今回の企画を考えることになったのでした。
スポーツ=アスリートだけのものと考えず、スポーツ=体を動かすことをキーワードにし、いろいろな職業の人たちの“スポーツ”をピックアップしていく。そしてアーティスト、ショップスタッフ、ラッパー、バレエダンサーなど、本当に様々な人たちを取材することができました。彼らには、“スポーツ”をしている感覚はまったくないのですが、ある人から見るとそれがスポーツとも捉えることができる。そして、このムックの根っこの部分でもある「さまざまな人の生活の中にあるさまざまな形のスポーツ」というテーマが生まれました。
ここで少し内容の話を。表紙のビジュアルに起用されているアーティストの篠原有司男さんについて。篠原さんは、ボクシンググローブにスポンジをつけ、絵の具を染み込ませ、右から左へ壁を叩く“ボクシングペインティング“と呼ばれる手法を使う前衛芸術家ですが、アートを知らない人たちからすると、ただただボクシングをしているようにしか見えない。だけども、世界的に有名なアーティストの方です。また彼の話は、“篠原節”が効いていて、話の脱線の仕方がサイコーなんです。またラッパーのKOHHにも今回出演してもらいました。ステージに立つと、スイッチが入って全身全霊で歌い、パフォーマンスの後には駅伝選手がたすきを渡した後のようにぶっ倒れるという話を聞いた時も、KOHHからスポーツ選手的な側面を感じました。闘うフィールドはまったく異なりますが、篠原さんにもKOHHにも共通していることが、「考えたら負け」というスタンスで、アートとして、または歌として表現しているところです。この言葉は、私にとって今回の仕事のプレゼントって大事にしたいと思っています。私がサッカー部の時は、階段ダッシュや練習後の走り込みなどただただ辛かった記憶がトラウマになり、昨今のランニングブームにも決して乗っかることなく、走ることから距離を置いてきた自分ですが、“ランニング”や“走る”と考えなければ、きっと走ることは楽しいんだろうなと思うわけです。珍しい蝶々を街中で見て走って追いかけるとか、一刻も早く空港から出るために、入国(出国)審査までの道のりを競歩選手のように早歩きして、どんどん他の人たちを追い抜いていくとか……。なんかそんな感じでスポーツを考えるとものすごく楽しくないですか?
【IMPRINT】
サイズ: 270mm×210mm
出版社: マガジンハウス
発売日: 2017/10/17
定価 : 700円(税込)
コンテンツ:篠原有司男(アーティスト)、ガーダー・アイダ・アイナーソン(アーティスト)、萩野公介(水泳選手)、飯島望未(バレエダンサー)、原口元気(サッカー選手)、アル・バイク(ナイキ シニア・クリエイティブ・ディレクター)、泉田梨衣(ショップスタッフ)、小川航基(サッカー選手)、KOHH(ラッパー)、ロノ・ブラジル・サード(ランナー、DJ、モデル)
問い合わせ マガジンハウス カスタムプロデュース部 Tel:03-3545-7115
Photo: Takao Iwasawa