日本各地には風土や生活の中で受け継がれてきた美しい手仕事がある。東京都内のライフスタイルショップで全国の伝統的工芸品に出逢える、年に一度のイベント『JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2020』が2020年9月4日(金)から17日(木)まで開催される。街歩き感覚で日本のものづくりに触れてみたい。
いつものお店で伝統的工芸品を愛でる
職人が丁寧に仕上げた工芸品は、日々の暮らしを豊かにしてくれる。「創り手」「売り手」「使い手」を繋ぐをテーマに7回目を迎える同イベントだが、今年は都内5エリアに分かれ全30店舗が参加。各ショップが一押しする伝統的工芸品とコラボレーションし、その魅力を紹介する。

メイン会場となる〈伝統工芸 青山スクエア〉では全店舗の商品が一堂に会する。今年は特に中目黒エリアが充実。会期中には職人による実演や使い方などのワークショップもあり、普段はお目にかかれない各地の工芸品を直接手にとって、その技に触れながら購入できる貴重なチャンスだ。
気軽に旅へ出られない今。都内を散策しつつ、日本の工芸品の歴史や物語を知り、生活に取り入れることで、伝統を継承する各地の作り手を応援したい。
JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2020
浪華本染め/大阪
手作業で多彩な柄、小紋などの微妙なタッチや独特の色合いを出す注染が特徴の「浪華本染め」。通気性があって柔らかい仕上がり。(伝統工芸 青山スクエア)
伊賀焼/三重
始まりは奈良時代といわれる伊賀焼。伊賀の丸柱に工房を構えるやまほん陶房の土鍋は昔ながらの技法で作られたもので、ゆっくりと火が入り、素材のおいしさを引き出す。(プレインピープル 青山)
唐津焼/佐賀
唐津焼の魅力は土の味わいと素朴な作風。祖父は人間国宝の中里太郎右衛門、父と兄は唐津焼の陶芸家という陶芸一家に生まれ、現在は唐津とアメリカの二つの工房を拠点に活動する花子氏の作品。(VA-VA CLOTHING&VARIETY)
本場大島紬/鹿児島
日本の三大紬の一つとして、約1300年の歴史を持つ本場奄美大島紬。伝統技法泥染めや天然染色の持つ美しい色合いを楽しんで。(かまわぬ原宿店、かまわぬ 浅草店)
江戸切子/東京
天保5年、ビードロ屋を営んでいた加賀屋久兵衛が英国製カットグラスを真似てガラスに彫刻を施したのが始まりといわれる。卓越した技術を持つ江戸切子の職人は「伝統工芸士」の認定が与えられる。(リアルスタイル 青山店)
京うちわ/京都
伝統の京うちわと輸入したクラフトテキスタイルを融合したオリジナル。インドやパキスタンに今なお受け継がれる伝統の木版染めの更紗を使用している。(西洋民芸の店 グランピエ)
波佐見焼/長崎
庶民の日常的な陶磁器として愛される波佐見焼と〈Attractions〉とのコラボレーション。“ミッドセンチュリーモダン”と呼ばれる1950年代のアメリカの特徴的なデザインをブラック&ホワイトでクールにまとめている。(Attractions)
大館曲げわっぱ/秋田
手作業で丁寧に作られた秋田県大館曲げわっぱは、天然秋田杉が本来持っている調湿効果、ほのかな芳香、抗菌効果によって、ご飯が傷みにくく冷めても美味しく味を生かしてくれる。(sarasa design lab)
樺細工/秋田
秋田県角館に伝わる樺細工は、山桜の樹皮を貼って磨いて仕上げたもので模様と独特の渋い光沢が魅力。重量感のある茶筒など日常的に使える生活道具が並ぶ。(工藝 器と道具 SML)
京焼・清水焼/京都
アフリカの民族衣装から着想を得て赤・黒・銀で模様を描いた“iroe”と、白と黒+1色の3色で構成された “three-tone”、 草木の灰によって釉薬を発色させる “ash”の3ライン。(the Garden)
益子焼/栃木
益子で活動する陶芸家佐々木康弘氏の作品は、「掛け分け」という技法で作られたボーダー柄が人気。今回はグラフィカルなアートピースも展示する。(BIN)
別府竹細工/大分
室町時代からの歴史を持つ別府竹細工は、竹ひごを手作業で丁寧に編み上げている。長く使うほどに味わいのある飴色へと変化。軽くて丈夫なのも嬉しい。(プレインピープル 中目黒)
丸亀うちわ/香川
柄と骨とが1本の竹から作られる丸亀うちわ。山で竹を切り出し、47工程をひとりで仕上げる。色和紙に柿渋をかけ、乾燥させる工程を3度繰り返し、高い耐久性を実現。(dessin)
高岡銅器/富山
繊細な美しさとやわらかさを備え、控えめな銀色の光を放つ錫を使用。使うほど味が出る「能作」の錫は純度100%で抗菌作用がある。(Lamie)
天草陶磁器/熊本
九州本土と天草五橋と呼ばれる5つの橋で結ばれている熊本県天草。自然と伝統に育まれ、綺麗な海と大自然の中、3名の作家がつくった器を紹介する。(ROOTS to BRANCHES)
山中漆器/石川
ろくろの町、山中温泉に創業した我戸幹男商店の作品は豪快な木目が魅力。高い技術を活かした実用性と和の美意識に基づいた芸術性を追求している。 (iki 中目黒路面店)
京扇子/京都
先人の伝統を受け継ぎながら、「京風庵大むら」の手によって作られた京扇子は、竹や和紙など国産素材にこだわり、絵柄もすべて手描き。独創性の高い作品が注目を集める。(中目黒 蔦屋書店)
信楽焼/滋賀
滋賀県甲賀市信楽町で作られる信楽焼は日本六古窯のひとつ。1862年に開窯した文五郎窯によってモダンに表現された十草など、おうちごはんを引き立てる器が並ぶ。(プレインピープル 東急プラザ銀座)
丹波立杭焼/兵庫
松茸、栗、黒豆といった秋の味覚の宝庫、丹波篠山の地で誕生した丹波立杭焼は日本六古窯のひとつで800年以上の歴史を持つ。現在も60軒以上の窯元があり食卓を華やかに彩る。(プレインピープル 日本橋高島屋S.C.)
美濃焼/岐阜
約1300年前に始まった美濃焼は粘土の成分により焼き上がりの色が変化する釉薬が特徴。平安時代からの香りを受け継ぐ鳩居堂と音彩工房による「香」と「器」のコラボレーションは必見。(東京鳩居堂 銀座本店)
伊賀くみひも/三重
起源は奈良時代といわれ、「和装の要」として三重県伊賀で大切に守り伝えられている伊賀くみひもと1663年創業の老舗・鳩居堂がタッグを組み、美しい伝統文化の世界を繰り広げる。(東京鳩居堂 銀座本店)
出石焼/兵庫
柿谷陶石を用いて造られる出石焼は優しく上品で透き通るような白磁や青白磁と、その美しさを引き立てる彫刻や彩泥など、見る角度によって様々な表情を魅せる。(玉川堂 銀座店)
樺細工/秋田
秋田角館の伝統工芸である樺細工と、洋食器メーカーであるノリタケがコラボレーション。厳しい自然の中で育った山桜の樹皮が、熟練の名工たちによって、その特有の光沢を活かした洋の美に生まれ変わる。(ノリタケ・大倉陶園 銀座店)
久留米絣/福岡
約200年前から継承される久留米絣は創意工夫の努力を惜しまず、時代に合うものを研究し発展し続けている。久留米絣を使ったマスクやエコバッグにも挑戦し、今を生きる私たちの生活に溶け込む。(REN 蔵前店)
小石原焼/福岡
約350年の歴史がある小石原焼は福岡を代表する陶器。飛び鉋などの伝統技法を用いながら、現代の暮らしに馴染むデザイン性の高い器を紹介。手仕事ならではのぬくもりと土の素朴さを感じたい。(Maito Design Works 蔵前本店)
砥部焼/愛媛
肥前や筑前から陶工を招き、砥石クズを原料に作られたのが起源。重厚で抜けるような白い土と力強く明瞭な線が趣深い砥部焼がモダンに進化。(MARKUS)
奥会津編み組細工/福島
奥会津地方の山間部で採れる山ブドウやマタタビなどの植物を素材とする編み組細工は、縄文時代から積雪期の手仕事として伝承されてきた。丈夫でしなやかな天然素材を使っているので使い込むほどに艶が出て愛着が増す。(MARKUS)
久留米絣/福岡
30の工程を経て織り上げられる久留米絣は、作業過程に起こる微妙なズレによる独特の模様と熟練の技術によって美しく仕上がる。(HANSEL&GRETEL 成城店)
二風谷アットゥシ/北海道
沙流川流域に古くから伝わる、オヒョウ等の樹皮から作られた糸を機織りした希少な反物。天然素材の手触りの良さと手仕事が織り成す優しい風合いが人気。(ECKEPUNKT Kuhonbutsu)
越前打刃物/福井
越前打刃物の歴史は700年以上。室町時代初期、刀剣製作にふさわしい地を求めてやって来た京都の職人が農民のために鎌を作ったことから始まる。包丁を中心に暮らしに寄り添う打刃物をセレクト。(nienteとtokyobike)
【ワークショップ&プレゼントキャンペーン】
会期中、参加店舗では産地のものづくり体験や工芸品の使い方を解説するワークショップが開催される。参加店舗を巡り、5つのスタンプを集めて、くじに挑戦するスタンプラリーや、対象の工芸品購入で日本各地の選りすぐりの工芸品が当たるキャンペーンが実施される。さらに参加者全員にエコバッグをプレゼント。お見逃しなく!
※ワークショップの詳細は公式サイトをチェック!
※くじ引きは〈伝統工芸 青山スクエア〉(メイン会場)で行う。 ※プレゼントの交換は会期中(9月4日~9月17日11:00 ~18:00)のみ。※プレゼントはなくなり次第終了。
Text&Edit: Hiroko Chihara