先日、保険の契約をしてきました。こどもの教育資金を貯めるための学資保険と、夫婦どちらも入っていなかった生命保険。お金の管理はてんで苦手な自分たちでも、子が生まれたからには、これまでのように行き当たりばったりのどんぶり勘定で暮らしてゆくわけにはいかないらしい(ガクガク)。
ってそんなことよりも気になったのが、契約の間じゅう、保険屋さんが「ご主人さまの~」「ご主人さまが~」とその場にいない夫Tについて呼ぶことなのだった。ご、ご主人さま?! おもわず「それはだれのことなんでしょうか」と聞きたくなるくらい、こちらにはその言葉がピンとこない上に、そう言われるたびにじりじりと自分のHP(元気メーター)が減っていくような気がする。相手はむしろ丁寧なつもりなのだと頭ではわかっているのにだ。
「ご主人さま」と耳にした時に思ったのは、Tがご主人さまなら、自分はいったいなんなのだろうということだった。最初に思い浮かんだのは、古い洋館に佇む、黒いスーツとフリルつきの白シャツを着た品のいい初老の執事だ。おおきなポットで、高い位置から熱々の紅茶をとぽぽぽ…と注いでくれる。もしくは、ワンピースにエプロンをつけたメイド。もしくは、犬…は家族だから犬に失礼か。
パートナーの呼びかた問題はいまにはじまった議論ではないけれど、目の前で「ご主人さま」と言及されるたびに、「に対して、とるに足らない付属物であるところのおまえ」といわれているような気が、まじでするのである。それは少しずつ確実にこちらを傷つけてくる。で、その状態から逃れたいためにか、だんだんと頭が思考停止してからっぽになってしまう。いっぽうでTも、こども関係のスペースやグッズに「ママ&キッズ」と書かれているのを見るたびに、「またウィザウト・パパや」と傷ついているのだそうだ。女性も家の内外で労働をしており、育児をする男性も増えた。家族ユニットのありかたが昔と比べて変わっていっているのだから、お役所やこういった民間の会社も、もっと変化を察知してどんどん表現をアップデートしていってほしいものだと思う。
かくなるうえは、「自分にご主人さまはいないのですが」と、あの人にはっきり言ってみるべきだっただろうか。夫婦がおんなじ名字で説明がややこしいのなら、○○さんと下の名前で呼べばいいと思うのだけど。どうせ個人情報ぜんぶ持ってるのだしさ。