世界的な観光地であり、女子の永遠の憧れ、京都。この街にお引越ししたライターYが、ストリートから神社仏閣まで、初心者目線で見つけた気になるモノやスポット、イケてる人たちなどなど、フリースタイルでご紹介します。今回のテーマは、かつて京都が最先端の地であった着物の柄について。前回は〈花手水〉。
ライターYの京都通信 チャリで回って見つけた素敵なモノ Vol.9 100年後も新しい〈着物の柄の世界〉
秋の初めの京都の街は、たたみかけるような夏の蒸し暑さとはうってかわって、清涼感でいっぱい。清々しい空気を満喫しながら、最近ご近所になった岡崎・平安神宮あたりを日々開拓しています。ある日、知人から久々のお誘いを受けて、大鳥居からほど近い古書店『山﨑書店』にお邪魔したのですが、そこで見せてもらった明治時代の着物の“図案”が、衝撃的なおしゃれさ。聞けば、店主の山﨑純夫さんが数十年前からコレクションしていた古い書籍を取りまとめて、展覧会を開催中なのだとか。
京都で着物といえば、旅行者がレンタルして観光するのがここ数年人気だけれど、実は着物の柄やデザインの成り立ちにおいて、この街の歴史は切っても切り離せない存在なのだといいます。というのも、この地には古くから仏教書や浮世絵の出版に携わった彫師や摺師と呼ばれる職人たちが数多く存在したから。明治期になって新政府が東京へと移り、廃仏毀釈のあおりを受けて職を失ったそれらのクラフツマンが、出版業界とタッグ。その結果生まれたのが、着物の柄の図案本だったというわけ。特に明治20年代から大正時代にかけては、“ベルエポック京都”とも呼べるような出版物が多数生まれたのだと山﨑さん。『山﨑書店』では、それらの図案本をはじめ、日本の模様にまつわる資料1,500点を収録したカタログを刊行。その記念として『きものノ国「日本」展』の開催に至りました。もともとは図案本に収録されていた木版画の一部も、1枚ごとに販売。小さいサイズのものもあり、300円ほどからと手が届きやすい価格帯なのが嬉しい。
展示・販売されている作品は基本的には一点物で、ポチ袋大からA4ほどまで、サイズ感もさまざま。アートのように、額に入れて壁に飾るのもきっと素敵なはず。ただし木版画は強い光にさらされると劣化するので、UVカットガラスやアクリルがベター。ディスプレイは直射日光が当たらない場所をチョイスし、たまには“休憩”のために模様替えをすると、良い状態を長く保つことができます。
『山﨑書店』は1979年創業。大正時代に建てられた2階建の町家を改装し、2003年から現在の地で営業しています。“うなぎの寝床”な細長い造りで、地下にはなんと戦時中防空壕として掘られたスペースも。築100年の建物がそのままショップになっているあたりが、京都らしい。
『きものノ国「日本」展』は10月31日まで開催中。着物好きはもちろん、テキスタイルやデザインに興味がある人にもおすすめです。平安神宮や『京都市京セラ美術館』、お庭が素敵な青蓮院門跡もすぐ近くなので、あわせてぜひ。
山﨑書店
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Hiroko Yabuki
エディター・ライター。『POPEYE』『BRUTUS』などで編集・ライティングを手がける。通訳案内士のラインセンスを持ち、海外アーティストのインタビューや撮影コーディネーションも行う。
Instagram: @tokyoai_hiroko