21 Jun 2017
クチュリエ界の建築家、 クリストバル・バレンシアガ展。 エディター天野志穂のLONDON 12

こんにちは。エディターの天野です。好きなデザイナーを挙げるなら、トップ3に間違いなくランクインするのがクリストバル・バレンシアガ。そのバレンシアガの展覧会がV&Aミュージアムで開催中とあれば、行かないわけにはいかない。ということで、今回は“BALENCIAGA : Shaping Fashion”へ行ってきました。
1895年スペインのバスク地方、ゲタリアで生まれたクリストバル。裁縫師だった母親の影響もあり、マドリードのテイラーで修行を積み、1917年、22歳でサン・セバスチャン近郊に最初のアトリエを開設。その後、スペイン内戦の影響もありパリの拠点を移し、1937年パリで初となるオートクチュールコレクションを発表というのが、ざっくりとした歴史。
今年はアトリエオープ100周年、初のオートクチュールから80年という節目の年でもあり、このエキシビションが開催されました。
“A couturier must be an architect for design, a sculptor for shape, a painter for colour, a musician for harmony, and a philosopher for temperance”
(クチュリエはデザインにおいて建築家でなければならない。シェイプについては彫刻家であり、色に関しては画家であり、調和においては音楽家。そして節制については哲学者でなくては。)
上記はクリストバルの言葉。ココ・シャネルをもって「真のクチュリエ」と言わしめた彼は、デザインから裁断、組み立て、縫製までひとりでこなしたとか。完璧なデザインを求め、妥協を許さない緻密さが特にシェイプに現れているということで、今回の展覧会ではX線の技術を駆使してドレスの見えない細部にもフォーカスした展示も見もの。手描きのスケッチやパターンとともにディスプレイされていました。このユニークさはさすがV&Aミュージアム。
さらには、ドレスを裏返して展示するなんて荒技も!
こちらはスカートにもケープにもなる2WAYガーメント。そのレプリカがディスプレイのすぐ近くにあり、トライすることも可能。壁にはクリストバルの名言が。
彼のクチュリエとしての敏腕さをいろいろな手法でフォーカスすることで、コレクションの魅力がより一層引き出されている気がします。
クリストバルが活躍したのは、おもに50年代と60年代。決して古びることのない彼のデザインは、今でも多くのデザイナーに影響を与えています。ということで、上のフロアには彼の影響を受けた現代のデザイナーたちのコレクションピースや、クリストバルについて語った言葉が展示されていて、とても興味深い。
弟子であり親交も深かったユベール・ド・ジバンシィのドレスと言葉。
1983年のコム・デ・ギャルソン。
2015年のアーデム。
さらには、現在のバレンシアガのクリエイティブ・デザイナー、デムナ・ヴァザリアの言葉。
モリー・ゴダードやガレス・ピューなどのインタビュー映像も。
クリストバル・バレンシアガが生み出すクチュールの世界にうっとりしつつも、彼はどこまで完璧主義だったのかと考えずにはいられなかった展覧会。ま、常に完璧を追求したからこその美しさであり、クチュール界の建築家と呼ばれる所以なわけで。惚れ惚れするほどの職人気質に、あぁ、ますますファンになってしまった。素晴らしい!
Victoria & Albert Museum:BALENCIAGA Shaping Fashion
https://www.vam.ac.uk/exhibitions/balenciaga-shaping-fashion
来年2月18日まで開催中。
ロンドンで一番素敵だと信じているミュージアム、V&Aに来たら絶対に中庭とカフェもチェックしてみてくださいね。
おまけ。
生まれ故郷であるスペインのゲタリアにあるクリストバル・バレンシアガのミュージアム。所蔵するコレクションはまさに宝の山。サン・セバスチャンからバスで行けますよ。(写真は2014年に行ったときのもの。)

天野志穂
Shiho Amano
エディター&ライター。出版社の雑誌編集者だった2013年、ロンドンに住むチャンスに恵まれ、二つ返事で渡英。以降、フリーランスとして活動中。初夏のロンドンは本当に気持ちいいので、あちこちのエキシビションに出かけたい気分も満々に。V&Aミュージアムのもうひとつのエキシビション、ピンク・フロイド展もとっても気になっているところ。ひとっ飛びできる余裕(心とお金に)があるなら、NYのMETで開催中のコム・デ・ギャルソン展にも行きたい!